2月16日発売
週刊新潮別冊
「創刊号」完全復刻版


定価300円
品切れ

詳細はこちら
   
2月16日発売
週刊新潮別冊黒い報告書

定価380円
品切れ

詳細はこちら
   
2月17日発売
「週刊新潮」が報じたスキャンダル戦後史

新潮社 編
定価1260円

詳細はこちら
   
2月20日発売
昭和の墓碑銘


週刊新潮 編
定価756円

詳細はこちら
   
発売中
谷内六郎
昭和の想い出

谷内六郎
谷内達子
橋本治
芸術新潮編集部
定価1365円

詳細はこちら
   
「週刊新潮」表紙絵 ギャラリー
谷内六郎 ―少女―
限定発売中!
   
 



オー・マイ・パパに背くもの
―― 父と子のモラル戦後版 ――
1 父権はゆらぐ・父と子の対立
 高橋義孝氏(九大教授、評論家)は、阿部真之助、大宅壮一氏など当代の“毒舌家”について、その精神面で一種のエディプス・コンプレックスがあるのではないか、といっている。事実、大宅氏の“自叙伝”には、父が非常な酒飲みで、家の中にはいつもコモかぶりが置かれ、昼間から近隣の誰彼に取り巻かれて鏡を抜いている。そのため、母はいつも眼を泣きはらしていた、と暗然たる調子で語られている一節がある。
 父権の座が確立されている時代、あるいは家庭、ならば、こうした光景は程度の差こそあれ、珍らしくはない。また子供がそうした権力の存在に反抗して、社会に対して戦闘的な性格をもつようになる心理は、洋の東西を問うところではない。
 ニューヨークのモロスコ劇場で記録的な大当りをとった「セールスマンの死」でも、子供が父親の情事を眼のあたり見て、急に信頼の念を失い“不良化”してゆくところが大きなポイントとなっている。
 父親は情婦に新しいくつ下を買ってやるのに母親は夜ナベでくつ下を繕っている――この不満が、青年をして社会に白眼をむかせたのだった。
 戦後の日本で、この関係が最も端的に表われたものに、板垣征四郎大将のむすこの場合がある。彼は陸軍少尉として満州で終戦を迎えたが、ソ連に抑留されて帰還すると、すぐ共産党にはいった。彼の意識下に「将官の家庭」を貫き流れていた父権への恐怖がたくわえられていたからである。しかも彼は入党して一年もしない中に、党をぬけて茨城県下に引きこもり、瓦焼きに身を入れるようになった。共産党の戦略戦術の当否は別として一つの政治組織が要求する“権威への服従”を心に感じ取ったからである。
「しばらくは静かに自分というものを見つめてみたい……新しい人生をはじめるに当って一番大切なことを考えたいのです」
 彼は当時、こう語っている。
 このほか、戦前では理研を作った大河内財閥から大河内正敏氏、公卿(くげ)の高倉家から高倉テル氏、といった共産党員も出ている。戦後価値体系のくずれた時代になって権威への反抗が父と子の間でひき起こされた例は枚挙にいとまない。しかもその反抗は、特権的身分や財産のあるなしに関係なく、行われたのである。
 家庭裁判所に持ち込まれた、家庭争議の中から、その例を紹介しよう。
(続きは本誌にて)