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会いたい人に会いに行くツアー 第二回 作家・恒川光太郎さん

 ブエノスディアスセニョールセニョリータ! カルロス・チョビート・モラシータです。うそ。冬が大好きなラテン系、心はいつもどインディー、ひで山です。
 そういえば皆さま、大晦日の格闘技特番、ご覧になっていましたか? 大変盛り上がり、見所も多いそのイベントの中で、とりわけアツくなった試合が三つあります。総合格闘技の選手がK-1の選手にK-1ルールで挑むという一見無謀な試合。立ち技陣の圧勝かと思いきや、総合の選手が全勝という衝撃的な結末となりました。私は総合格闘技の小説を書いたりして総合大好きなんですが、極真空手の道場に通っていることもあって、どちらかというとこの時はK-1側を応援していました。なのに結果は全敗……。
 理由はいろいろあるでしょうけれど、私がふと思ったのは、「隣」をどれだけ真剣に見ているかの差なのかな、ということでした。総合格闘技はまだ歴史も浅く、打撃のメソッドはあるものの、今でも大きく変化を続けている最中です。変化するために、総合の選手は「隣」の格闘技を見ることにとにかく貪欲な印象があります。他の武術の資料を漁って、時には本人に会いに行ったり教えを乞うのも珍しいことではありません。

 私にとって恒川光太郎さんというのは、「隣」の世界に建つ城塞に住む、謎の長者であります。その城中に何があるのか、いやそもそもその城はどんな造作をしているのか、鬱蒼とした森に阻まれてはっきりとは見えない。あんなお城をいつか建てたいな、中を見てみたいな、参考にしたいな、と思うけど異形の門番を見て退散する感じ。
 恒川さんは皆さまご存知の通り、日本ホラー小説大賞を獲得した「夜市」で衝撃的なデビューを果たし、最新刊『草祭』でその作品世界をより確固たるものにされています。旦那や女房を質に入れても『草祭』は読むべき! 面白いから!
 その作品群が放つ魅力については、特に私があれこれ言及する必要もないでしょう。日本の小説家で彼ほど読者を容易に、そして美しく切ない形で異界に放り込む書き手を私は知りません。
 そんな力の出所をどーーーしても知りたい。我慢できなくなった私は目をつぶってあばら家(キン肉ハウス型)から駆け出し、お忙しいところにうかがう迷惑もかえりみず、南の島へと飛びました。

 いやー、泡盛と沖縄料理、めっさおいしかったです。
 これだけ前フリしておいてその結論はなんじゃ、と言われそうですけど、実際そうだったんですよ。小説家を小説家として理解するために、その当人を知る必要はない。作品を熟読すればそれで事足りるのであります。だって本人を知ってしまうとファンになり過ぎてもう冷静に読めなくなってしまうやん、というくらいのナイスガイでした。深夜の変態合戦、本当に楽しかった。『草祭』は新潮社より絶賛発売中です!


恒川光太郎さん公式ブログ

「夜市」にて?


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2009年2月 2日