幼い体に重ねる、命の哀しみ。「最後の一線」で研ぎ澄まされる、圧倒的な性。川端的エロティシズムの金字塔。

眠れる美女
読み仮名 | ネムレルビジョ |
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シリーズ名 | 新潮文庫 |
発行形態 | 文庫、電子書籍 |
判型 | 新潮文庫 |
ISBN | 978-4-10-100120-3 |
C-CODE | 0193 |
整理番号 | か-1-15 |
ジャンル | 文芸作品 |
定価 | 529円 |
電子書籍 価格 | 475円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/12/01 |
波の音高い海辺の宿は、すでに男ではなくなった老人たちのための逸楽の館であった。真紅のビロードのカーテンをめぐらせた一室に、前後不覚に眠らされた裸形の若い女――その傍らで一夜を過す老人の眼は、みずみずしい娘の肉体を透して、訪れつつある死の相を凝視している。熟れすぎた果実の腐臭に似た芳香を放つデカダンス文学の名作「眠れる美女」のほか「片腕」「散りぬるを」。
どういう本?
タイトロジー (タイトルの意味) |
「女の子を起こそうとなさらないで下さいませよ。どんなに起こそうとなさっても、決して目をさましませんから……。女の子は深あく眠っていて、なんにも知らないんですわ。」と女はくりかえした。「眠り通しで、始めから終りまでわからないんでございますからね。どなたとおやすみいたしましたかも……。それはお気がねがありません。」 江口老人はいろんな疑いがきざすのを、口には出さなかった。 「きれいな娘でございますよ。こちらも安心の出来るお客さまばかりにいらしていただいてますし……。」 江口は顔をそむけるかわりに腕時計に目を落した。(本書10ページ) |
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著者プロフィール
川端康成 カワバタ・ヤスナリ
(1899-1972)1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ケ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋で自死。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。
目次
眠れる美女
片腕
散りぬるを
片腕
散りぬるを
解説 三島由紀夫