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マエストロと小説家の魂が響きあう至高のロング・インタビュー! 村上春樹の〈特別エッセイ〉『厚木からの長い道のり』を収録。

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾/著、村上春樹/著

767円(税込)

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発売日:2014/07/01

読み仮名 オザワセイジサントオンガクニツイテハナシヲスル
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-100166-1
C-CODE 0195
整理番号 む-5-34
ジャンル 音楽理論・音楽論、音楽
定価 767円

「良き音楽」は愛と同じように、いくらたくさんあっても、多すぎるということはない――。グレン・グールド、バーンスタイン、カラヤンなど小澤征爾が巨匠たちと過ごした歳月、ベートーヴェン、ブラームス、マーラーの音楽……。マエストロと小説家はともにレコードを聴き、深い共感の中で、対話を続けた。心の響きと創造の魂に触れる、一年間にわたったロング・インタビュー。

著者プロフィール

小澤征爾 オザワ・セイジ

1935(昭和10)年、奉天(中国・現瀋陽)生れ。成城学園中学・高校を経て、桐朋学園で斎藤秀雄に指揮を学ぶ。1959年、仏・ブザンソンで行われたオーケストラ指揮者国際コンクールで第1位を獲得。ヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタインに師事し、1961年ニューヨーク・フィルの副指揮者となる。その後、トロント交響楽団、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督などを経て、1973年からボストン交響楽団の音楽監督を29年にわたり務めた。2002年、日本人として初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを指揮し、同年秋にはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任(~2010)。2008年、文化勲章受章。現在、サイトウ・キネン・フェスティバル松本総監督、小澤征爾音楽塾塾長、小澤国際室内楽アカデミー奥志賀主宰、新日本フィルハーモニー交響楽団桂冠名誉指揮者、水戸室内管弦楽団顧問として活躍中。

村上春樹 ムラカミ・ハルキ

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1979年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』などの短編小説集、エッセイ集、紀行文、翻訳書など著書多数。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞、 2016年アンデルセン文学賞を受賞。

書評

「らあ、らあ、らあ」――小澤征爾の言葉、村上春樹の音楽

青柳いづみこ

 あらためて言うまでもないが、音楽は言葉を越えた芸術である。オーケストラの指揮者のプローベ、室内楽の練習、教師のレッスン、その他あらゆるシーンで言葉を使ってコミュニケーションがとられてはいるが、最終目標は音楽のレヴェルで語りあうことである。音楽家にとって言葉はあくまでも副次的なもので、しばしばブツ切れで、飛躍と省略が多く、身振り手振りに代弁させるので、書き取ると形にならないことが多い。
 ジャズと同じようにクラシックにも精通する村上春樹が小澤征爾と音楽について語りあうようになったのは、2009年12月、小澤が食道ガンを告知されてかららしい。さかんに指揮活動をしているころの小澤は音楽以外の話をすることが多かったが、療養生活にはいると、音楽を語るだけでも「なんとなく生き生きした顔つきになった」という。
 あるとき自宅に小澤を招いた村上は、グレン・グールドがバーンスタインとブラームス「ピアノ協奏曲第一番」を共演した折りの思い出話をきき、それがあまりにおもしろいので、是非とも文章として残したい、それができるのは自分しかいないと感じた。
 本書は、6回にわたるトークセッションでの、「心の自然な響き」の記録である。とりわけ、一緒にレコードをききながらの会話がおもしろい。グールドの弾くベートーヴェン「ピアノ協奏曲第三番」でカラヤンとバーンスタインの比較。音楽の方向性について解説する小澤は「ほら、「らあ、らあ、らあ」っていうやつ。そういうのを作っていける人もいるし、作れない人もいる」と語る。カラヤンが前者でバーンスタインが後者らしい。
 単行本のあとがきで小澤は「あなたのおかげですごい量の想い出がぶりかえした。おまけになんだかわからないけど、すごく正直にコトバが出て来た」と村上に感謝している。
 音楽の言語化について、スタンスの違いが明確に出るときもある。ベルリオーズ「幻想交響曲」の三種類の演奏について村上は、トロント交響楽団のときは「音楽がたなごころの上で跳ねて踊っている」、ボストンは「手のひらに音楽を包んで大事に熟成させている」、サイトウ・キネンでは「手のひらを少しずつ開いて、音楽に風を通し、自由にさせている」と表現する。
 これに対して小澤は「そう言われてみればそうかもしれない」とさらりと受け流す。
 村上は音楽家ではないが、音楽家のように創作する。第2回のトークセッション後に置かれたインターリュード「文章と音楽との関係」で村上は、自分は音楽から文章の書き方を学んだと告白している。一番大事なのがリズムで、「文章にリズムがないと、そんなもの誰も読まないんです。前に前にと読み手を送っていく内在的な律動感というか……。(中略)僕はジャズが好きだから、そうやってしっかりとリズムを作っておいて、そこにコードを載っけて、そこからインプロヴィゼーションを始めるんです」
 巻末には、2013年のサイトウ・キネン・フェスティバルで、村上がかねてから称賛しているジャズ・ピアニストの大西順子が小澤とガーシュイン「ラプソディー・イン・ブルー」を共演したときの「実況中継」がおさめられている。
 ここでもポイントはリズムだ。村上は、自分が愛でる大西の特殊なリズム感を次のように表現する。
「表層的なリズムの内側に、もう一つのリズム感覚が入れ子のように埋め込まれ」、その複合性が聴くものの身体に「ずぶずぶと食い込んでくる」
 小説は書けば作品になるが、音楽は作曲しただけでは十分ではなく、演奏されてはじめて作品になる。村上が引き出してくれた小澤の言葉から、読者は音楽が生まれる瞬間を、刻々と変貌していくさまを体験する。そしてまた村上が音楽について語る言葉を通して、ゆらめきとらえがたい神秘の律動を体内に取り込むことができるかもしれない。

(あおやぎ・いづみこ ピアニスト・文筆家)
波 2014年7月号より

目次

始めに――小澤征爾さんと過ごした午後のひととき  村上春樹
第一回 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第三番をめぐって
最初にブラームスのピアノ協奏曲第一番/カラヤンとグールド、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第三番/グールドとバーンスタイン、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第三番/ゼルキンとバーンスタイン、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第三番/なんといってもドイツ音楽がやりたかった/五十年前、マーラーに夢中になった/新しいベートーヴェン演奏のスタイルとは?/インマゼールのピアノ、古楽器演奏のベートーヴェン/再びグールドについて語る/ゼルキンと小澤征爾、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第三番/内田光子とザンデルリンク、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第三番

〈インターリュード1〉 レコード・マニアについて
第二回 カーネギー・ホールのブラームス
カーネギー・ホールでの感動的なコンサート/サイトウ・キネンとブラームスを演奏すること/後日の短い追加インタビュー ホルンの息継ぎの真相

〈インターリュード2〉 文章と音楽との関係
第三回 一九六〇年代に起こったこと
バーンスタインのアシスタント指揮者をしていた頃/スコアをどこまでも読み込む/テレマンからバルトークまで/春の祭典・裏話みたいなもの/小澤征爾指揮・三種類の『幻想交響曲』/一人の無名の青年になぜそんなすごいことができたのだろう?/後日の短い追加インタビュー モーリス・ペレスとハロルド・ゴンバーグ

〈インターリュード3〉 ユージン・オーマンディのタクト
第四回 グスタフ・マーラーの音楽をめぐって
先駆けとしてのサイトウ・キネン/バーンスタインがマーラーに取り組んでいた頃/そういう音楽が存在したことすら知らなかった/マーラー演奏の歴史的な変遷(へんせん)/ウィーンで狂うということ/三番と七番はなんだか「あやしい」/小澤征爾+サイトウ・キネンの演奏する『巨人』/楽譜の指示がなにしろ細かい/マーラー音楽の世界市民性とは?/小澤征爾+ボストン交響楽団の演奏する『巨人』/マーラー音楽の結果的な前衛性/今でも変化し続ける小澤征爾

〈インターリュード4〉 シカゴ・ブルーズから森進一まで
第五回 オペラは楽しい
もともと僕くらいオペラから縁遠い男はいなかった/フレーニのミミ/カルロス・クライバーのこと/オペラと演出家/ミラノで浴びたブーイング/苦労よりは楽しみの方がずっと大きい

スイスの小さな町で
第六回 「決まった教え方があるわけじゃありません。その場その場で考えながらやっているんです」
あとがきです  小澤征爾
[松本Gig 2013]
厚木からの長い道のり
――小澤征爾が大西順子と共演した『ラプソディー・イン・ブルー』

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