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兄妹が奏でる禁じられた二重奏。オーガズムの闇に迫るミシマの異色作。

音楽

三島由紀夫/著

562円(税込)

本の仕様

発売日:1970/02/20

読み仮名 オンガク
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-105017-1
C-CODE 0193
整理番号 み-3-17
ジャンル 文芸作品
定価 562円

少女期の兄との近親相姦により、美しい“愛”のオルガスムスを味わった麗子は、兄の肉体への憧憬を心に育み、許婚者をも、恋人をも愛することができない。麗子の強烈な自我は、彼女の不感症を癒すべく、懇切な治療を続ける精神分析医の汐見医師をさえ気まぐれに翻弄し、治療は困難をきわめる――。女性の性の複雑な深淵に迫り、人間心理を鋭く衝いた、悪魔的魅力をたたえた異色作。

どういう本?

タイトロジー
(タイトルを読む)
 するうちに、麗子は突然、わけのわからぬことを言い出した。
「先生、どうしてなんでしょう。私、音楽がきこえないんです」

 それはどういうことかと私がきくと、たとえばラジオ・ドラマをきいていても、セリフのところは明瞭にきこえるのに、伴奏音楽だけが、丁度日が急にかげるように、耳もとから消えてしまうので、索漠としてしまう、ということらしい。では、はじめから音楽だけの番組はどうかというのに、
『あ、音楽がはじまる』
 と思った瞬間に、いくらヴォリュームを高めても何もきこえなくなり、しばらくたって次の曲についての解説がはじまると、その解説は明瞭にきこえる。つまり彼女が、一旦、「音楽」という観念を頭に浮べると、その瞬間から音楽が消えてしまう。音楽という観念が音楽自体を消すのである。(本書18〜19ページ)

著者プロフィール

三島由紀夫 ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

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