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女性にとって、仕事とは何か? 充実した人生とは何か? 城山文学の異色作。没後一年。

本当に生きた日

城山三郎/著

853円(税込)

本の仕様

発売日:2008/04/01

読み仮名 ホントウニイキタヒ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-113332-4
C-CODE 0193
整理番号 し-7-32
ジャンル 文芸作品、文学賞受賞作家
定価 853円
電子書籍 価格 864円
電子書籍 配信開始日 2012/10/01

二児の母で、三十八歳になる素子は、平凡な専業主婦だった。だが、大学講師でメディアにも進出しているやり手の友人・ルミに強引に誘われ、彼女の事務所を手伝うことになった。様々な出来事に翻弄されながらも、次第に仕事への意欲を覚える素子。しかし、一方で平穏な家庭に影響が出始め……。本格化した女性の社会進出を背景に、女性にとって仕事とは何か、人生の充実とは何かを描く。

著者プロフィール

城山三郎 シロヤマ・サブロウ

(1927-2007)名古屋生れ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。一橋大学を卒業後、愛知学芸大に奉職し、景気論等を担当。1957(昭和32)年、『輸出』で文学界新人賞を、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受賞し、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞を受賞した『落日燃ゆ』の他、『男子の本懐』『官僚たちの夏』『秀吉と武吉』『もう、きみには頼まない』『指揮官たちの特攻』等、多彩な作品群は幅広い読者を持つ。2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞。

書評

波 2008年4月号より もう一度読み返す城山文学――一周忌に寄せて

高山文彦

城山三郎さんが亡くなって、一年が過ぎた。はやいものだ。もう一年か。
いや、こう書いてみて、実感としてそうでないことに気づいて、はっとなる。城山さんはもう随分まえに亡くなっているような気がする。まだ一年しかたっていないのか。
なんだか不思議な気持ちである。
そうか、もう君はいないのか』という奥さんとの出会いから別れまでを綴った文章を雑誌で読んだとき、私はこころから感動をおぼえながら、その一方で複雑な気持ちを抑えることができなかった。ほんとうに書きたかったことを城山さんは書いているのだろうが、文章に歯止めがきかなくなっていて、読むほうが恥かしくなるようなところがいくらもある。ご本人はゲラを見ることもできず第一稿のまま世に出されたわけだから、本意ではなかっただろう。
それはこのたび文庫化された『本当に生きた日』についても言える。城山さんが亡くなってまもなくこの小説が出版されたとき、私はいやな感じがした。生前出版されなかったのは、ご本人の意志によるものであろう。死んで急遽出版されたということは、これもゲラがご本人の目を通っていないということではないのか。
でも城山さんほどの作家ならば、しようがないのかもしれぬ。多くの読者が死を悼み、なにか書き遺したものがないか待ち望んでいるのだろうから。かく言う自分だって、城山さんとの対談集を、彼の死後になって出しているのだ(むろん城山さんはゲラを見ることができなかった)。
ながい時間をかけて話をさせていただいたとき、とりわけ強く印象に残っているのは、「正しい人」という言葉である。人まかせにしないで自分の足で真実を求めて歩きつづけてゆけば、かならず真実を知る「正しい人」に出会えるという意味のことを城山さんは言った。きれいで清潔な言い方をなさる人だな、と私は思った。
自分は出会えているだろうか。出会えていなければ、自分の書いたものは偽物になってしまう。
それからもうひとつ、「無所属の時間」という言葉。なににも、どこにも属さない、真空の時間。たったひとりの時。いままさに城山さんは全き「無所属の時間」におられるのだろうが、私には羨ましいように思われる。
このたび『本当に生きた日』とともに『無所属の時間で生きる』というエッセイ集が文庫化されたが、なにか私は、はるか遠くから城山さんに耳元でささやかれているような気がする。「ゴルフ、やる? やるなら仲間に加えてあげるよ」と誘っていただいたのだった。
城山さんにとって「無所属の時間」とは、たとえばゴルフをしているときであったらしい。無心に打ち、無心に歩く、その時間のことだったらしい。
いつまでたってもゴルフをはじめようとしない私が、城山さんの言葉に背中を押されるようにしてゴルフ道具一式を買ったのは、今年の正月だった。ところが、それから一度も練習場に行っていない。振ってもいない。そしていまこそ自分にも「無所属の時間」が必要になっていることを痛感させられている。
ゴルフ道具を買って二週間あまりたったころ、まったく突然、故郷のつぶれかけた会社の社長を引き受けることになったのだ。無給、交通費は自腹。各方面に挨拶まわりをし、支援者との対話集会を連日連夜つづけていった。テレビや新聞にもとりあげられて、道を歩けば声をかけられる。休みがない。
故郷にも練習場はある。おんぼろの道具を借りて、山に向かって打たなければならない。しかし行く時間がない。
何者でもない私になりたいという願望から物書きをしてきた自分としては、考えられぬ事態におちいってしまった。
もう一度、城山さん、読み返してみます。ビジネスなんて自分にはとんと縁のない世界だと思いこんでおりましたので。

(たかやま・ふみひこ 作家)

目次

朝の一服
妻たちの王国
ふしぎな会合
大臣の名刺
親友の行方
男の修羅場
赴任先にて
引き取り手
しゃれた関係
雨の原宿
袋物の味
金曜の夜
警察署にて
一本の電話
男の休憩室
弱い獲物
事件I
ゆれる家々
花々の中で
夏の終わり
波紋
事件II
日曜日の客
解説 梯久美子

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