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藤圭子と沢木耕太郎、二つの若い才能が煌めくように邂逅した奇跡のダイアローグ。

流星ひとつ

沢木耕太郎/著

724円(税込)

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発売日:2016/08/01

読み仮名 リュウセイヒトツ
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-123522-6
C-CODE 0195
整理番号 さ-7-22
ジャンル ノンフィクション、音楽
定価 724円

何もなかった、あたしの頂上には何もなかった――。1979年、28歳で芸能界を去る決意をした歌姫・藤圭子に、沢木耕太郎がインタヴューを試みた。なぜ歌を捨てるのか。歌をやめて、どこへ向かおうというのか。近づいては離れ、離れては近づく二つの肉声。火の酒のように澄み、烈しく美しい魂は何を語ったのか。聞き手と語り手の「会話」だけで紡がれた、異形のノンフィクション。

著者プロフィール

沢木耕太郎 サワキ・コウタロウ

1947年、東京生れ。横浜国大卒業。ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集める。『若き実力者たち』『敗れざる者たち』等を発表した後、1979年、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年に『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、1985年に『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞を受賞。1986年から刊行が始まった『深夜特急』三部作では、1993年、JTB紀行文学賞を受賞した。ノンフィクションの新たな可能性を追求し続け、1995年、檀一雄未亡人の一人称話法に徹した『檀』を発表、2000年には初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行している。2006年に『凍』で講談社ノンフィクション賞を、2014年に『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞。近年は長編小説『波の音が消えるまで』『春に散る』を刊行。ノンフィクション分野の仕事の集大成として「沢木耕太郎ノンフィクション」が刊行されている。

目次

一杯目の火酒
二杯目の火酒
三杯目の火酒
四杯目の火酒
五杯目の火酒
六杯目の火酒
七杯目の火酒
最後の火酒
後記
解説 梯久美子

判型違い(書籍)

コラム 新潮文庫で歩く日本の町

宮崎香蓮

 いまは舞台「熱血!ブラバン少女。」(博多座/三月四日~二十六日)の稽古中ですが(私はトランペットを吹く女子高生役! 楽器の猛特訓中でもあります)、演出家の方がある役について、「この女の子は鈍感力があって云々」と指摘されたのが、「ふーむ」と心に残りました。
 芸能界で仕事をしている身として、鈍感力って、あった方がいいんじゃないのかな、そうでもないかな、と気にかかったのです。そこで芸能界について書かれている本が読みたくなって、手に取ったのがこの本。
 引退直前の時期の歌手・藤圭子さんが沢木さんのロング・インタビューに答えたもので、全篇がある一夜の会話という形になっています。冒頭近くで沢木さんは「すぐれたインタヴュアーは、相手さえ知らなかったことをしゃべってもらうんですよ」と言いますが、確かに読んでいくうち、藤さんが忘れていたこと、言葉にできていなかったことを初めて口にしている臨場感がどんどん伝わってきます。
 貧しかった子どもの頃の話、上京の経緯いきさつ、デビューするレコード会社の変更と大ヒット曲、マスコミとの軋轢、早かった結婚と離婚、その後の男運、家族との関係……。
 とりわけ会話が白熱するのは、喉の手術で「藤圭子は死んでしまったの」という二十八歳の歌手に、三十一歳のノンフィクション作家が「どんなボロボロになっても、歌いつづけようとは思わないの?」と切り込んでいくところです。藤さんは「それはひどいよ、厳しすぎるよ」と答えます。もう自分の頂を見て、「出しつくしたんだよ」。
 そこで出てくる会話が、いかにも大人の男女の会話っぽい色気があります。
「『いま、あたしにどうして歌を続けないのかって、責めたよね』/『責めなんかしないけど』/『そっちが責めなくとも、こっちが責められたもん』」
 こんな藤さんの女っぽさも素敵ですし、自分の頂を見たと言える誇りと辛さと冷静さも伝わってきます。沢木さんが「欠陥商品ですねえ、あなたの記憶装置は」と嘆くように、鈍感力も少しあるみたいです。しかし何より、沢木さんとの会話で徐々に浮び上がってくるのは、潔癖で頑固で、生きづらそうな女性の姿です。
 もちろん、そんな印象は後記にあるように、このインタビューの三十四年後に藤さんが自殺したことを私が知っているからかもしれません。そのせいか、私は藤さんが本当に分かってくれる人を求めているようにも読めたのです。
 私は藤さんのことを宇多田ヒカルさんのお母様としてしか知らなかったのですが(私の母は子守唄によく「夢は夜ひらく」を歌ってくれました)、インターネットで写真を検索すると、意志が強そうで、いろんなものを見てきたんだなと思わせる美人が出てきました。最初の夫で、藤さんが尊敬し続けた歌手である前川さんが「おまえは芸能界には向かない」「ぼくと別れてからあまりいいことなかったろ」「何でもまずぼくに相談しに来いよ」と言ってくれたというのが、ひょっとしたら救いだったのかもしれません。

(みやざき・かれん 女優)
波 2017年3月号より

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