ホーム > 書籍詳細:人生に関する72章

人生に関する72章

藤原正彦/著

440円(税込)

発売日:2009/01/28

  • 文庫

生きるとは悩むこと! 10代〈9歳上の先生に恋しちゃった〉、30代〈新婚なのに会話もセックスもない〉、60代〈独身で貯金もなし。進むべき道は?〉。イジメ、ニート、セックスレス……人生の難問に藤原教授がズバリ答える。

「いじめられている同級生を見過ごせないのですが、どうすればいいですか」「中学生ですが、九歳上の先生を好きになってしまいました」「新婚なのにセックスレスです」「孫がテレビ漬け。息子夫婦にどう言えばいいですか」……。人生は難問だらけ。何をなすべきか、鋭くズバリ言い切る。迷いを断ち切る新しい人生のバイブル。藤原夫人の緊急質問を増補。『藤原正彦の人生案内』改題。

目次
まえがき
1 十代の悩み
「性格暗い」と学校で嫌われ/学校ではおとなしく、家では明るい/十一歳、自分も同じ目に遭ったから/勉強手につかない高二女子/看護学校、今年も不合格かも/おとなしい性格、友達も少なく/勉強に集中できず、成績下がる/通信制高校二年の女子/頑張って大学合格、また反感/告白すべきか迷う中三女子/意識しすぎて無口な十六歳女子高生/心にもない事言ってしまう女子高生/十九歳、介護士目指し入学したが……/講義まじめに出ても成績悪い
2 二十代の悩み
勉強内容に興味持てない二十一歳/万引き? 親の財布から?/謝ったが許してもらえない/「仏の教え」には程遠い性格の家族/大学中退、仕事も続かず/心温まる話題ほしい二十四歳/孫の顔見に月一回ほどだが/時に酒気帯び 義父母も黙認/二十三歳OL、周囲がどう思うか/二十歳代半ば、何を心の支えに/子供ができた後も加われるか不安/このままでは太る一方、どうすれば……/料理の包丁が映っただけでもダメ/二人きりの職場、最近は沈黙がち/社会に出た後が心配/「早く子供を作れ」と責められる主婦/仕事も、趣味も、人間関係も……甘ったれ?/用事頼むと「こき使うな」/高卒の二十五歳会社員 今からでは遅いか/二十代学生、どう付き合えばいい?/同居予定の義母も……不安な二十七歳主婦/幼子抱え、外出も控え気味に/動植物保護の仕事に就きたいが
3 三十代の悩み
むげに断れず気まずい関係に/勉強中に教科書破り捨てる/自分は思いやりがモットーなのに/注意しづらくストレスに/「お前は冷たい」と義母や夫/墓参りにもほとんど行かず/対人関係教える自信ない/ジョークだと言うけど……/毎日が苦痛な新婚の三十歳代主婦/頻繁な電話と手紙に困惑/三十代主婦、割り切るしかない?/資格取得目指し、頑張っているのに……/出産後、私の実家に電話もくれず/おしゃべりなら平気なのに……
4 四十代の悩み
退学して大工目指すと言うが/見守るべきか、注意すべきか/「給料安い」とイヤミ連発/教授が横暴? 卒業研究でつまずき/四十代になって演劇学校入学考える/笑われているようで気になる四十代男性
5 五十代の悩み
相手と年齢差、秋に挙式というが/返済したが今後が心配/既婚の同級生もいるのに……/五十歳代女性、子供は大賛成/一年近くたつのに涙、涙の五十歳/親の金で遊び、借金……家つぶれそう/学業専念せず、注意にも耳傾けず/すべて事後報告、将来を不安視する母/仕事も性格も問題ないはず……
6 六十代以上の悩み
息子も甘やかし……孫たちは自己中心的に/進むべき道分からない六十五歳独身男性/きちんと食事与えぬ息子夫婦/還暦過ぎても意地悪で他人に厳しい/部屋埋める四千冊に腹立てる七十代主婦/孤独で退屈な毎日になるのでは
解説 藤原先生に折り入っての質問 藤原美子

書誌情報

読み仮名 ジンセイニカンスルナナジュウニショウ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
頁数 176ページ
ISBN 978-4-10-124809-7
C-CODE 0195
整理番号 ふ-12-9
ジャンル 倫理学・道徳、教育・自己啓発、趣味・実用
定価 440円

インタビュー/対談/エッセイ

藤原先生に折り入って御相談

質問者 藤原美子
回答者 藤原正彦

 いつも大変楽しく藤原正彦先生の人生相談を拝読しています。先生のように理解と包容力に満ち溢れた方ばかりでしたら、この世はどんなにか平和で悩み少なきものになるのかと思わずにいられません。そんな私の理想とする先生にぜひ私のつまらない悩みを聞いていただきたく思います。

質問 私は結婚して約三十年になりますが、三人の子に恵まれ平凡ながらも幸せな生活を送ってまいりました。家族を大切にしてくれる夫でありますが、ここ数年夫がしばしば口にする言葉があります。「僕の夢は、愛人情婦妾を引き連れての豪華エーゲ海クルーズ。僕が『この指とまれ』と言ったら、参加したい女性達が殺到すること間違いなし。どうだ、参ったか」と言うのです。そんな夫に私は言うのです。「夢を持つことは素晴らしいわ。どうぞあなた愛人情婦妾を両手両足に頑張ってください」すると夫は言うのです。「なぜ嫉妬しない。泣いて嫉妬しなさい」いったい私がどのような態度をとったら夫は満足なのでしょうか。

回答 理解と包容力に満ち溢れた方とは、お世辞ともイヤミともとれない、心のこもった私にぴったりのお言葉をありがとうございます。
 ご主人はおそらく正直な方です。愛人との海外旅行は私を含むほとんどの既婚男性の秘かな夢だからです。多くの女性にもてていることも事実と思います。ただ、妻を含むどんな女性からも、愛されているという手応えを感じていないのではないでしょうか。嫉妬こそが愛の証しと思いこんでいるふしもあります。
 演技でもよいから一度、「私の前で愛人などともう二度と言わないで」と胸にすがって泣いてやれば、単純なご主人は愛されていると心の底から思い、つまらぬことを言わなくなると思います。
 万が一それでもなお愛人などと言うようでしたら、救いようがないので三下り半をつきつけるしかありません。あとは私が責任を持ってあなたの面倒をみてあげましょう。

質問 夫には変な癖があります。手が落ち着かないのです。そう申すとなんだか妙な人の部類に入れられそうですが、社会的な問題を起こすというのではありません。先日、雰囲気のよい高級レストランに二人で招かれたときも、人と談笑しながらセットしてあるナイフをくるくる裏返したりテーブルクロスを行ったり来たりなで続けていたので、ハラハラさせられました。家では書き物をしながら鼻毛を抜いては丁寧に上下揃えて並べたりしています。もう抜くべき鼻毛も尽きたと言います。手が何かに触れていないと落ち着かないということは小さい子がお母さんのスカートの裾を握っているのと同じで、心の拠り所を求めているということなのでしょうか。いい大人なのに心配です。

回答 私に似ているご主人なのでびっくりしました。私も大学で授業中、右手のチョークだけでは落ち着かないので左手にも黒板消しを持っていたりします。研究室では、消しゴムをひっくり返し続けていたり、気がつくとズボンのジッパーを上げ下げしていたりします。若い頃、アメリカの大学で教えていた時、ストリーキングをしましたが、手を入れるポケットも手でつかむものもなく不安でした。
 そう言えば私が小学校に上がる前の頃、母の書いた『流れる星は生きている』の映画ロケーションを見に行って女優久我美子さんのスカートをひっぱって離さなかったそうです。証拠写真もあります。終戦直後、一年余りをかけて母は幼い三人の子供を連れて満州から命からがら引き揚げてきました。三十八度線を強行突破するとき、六歳の兄は歩き一歳の妹は背負われ三歳の私は母に引きずられるようにして幾つもの山河を越えました。そのときの、母の手を離したらそれまで、というトラウマが残っているのかも知れません。
 あなたのご主人にもいろいろ深い理由が隠れているのでしょう。ナイフをふりかざしたり、並べた鼻毛を食べ始めたり、他の女性のスカートをつかむまでは我慢することです。

(本書解説より)
波 2009年2月号より

著者プロフィール

藤原正彦

フジワラ・マサヒコ

1943(昭和18)年、旧満州新京生れ。東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。1978年、数学者の視点から眺めた清新な留学記『若き数学者のアメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、ユーモアと知性に根ざした独自の随筆スタイルを確立する。著書に『遥かなるケンブリッジ』『父の威厳 数学者の意地』『心は孤独な数学者』『国家の品格』『この国のけじめ』『名著講義』(文藝春秋読者賞受賞)『ヒコベエ』『日本人の誇り』『孤愁 サウダーデ』(新田次郎との共著、ロドリゲス通事賞受賞)『日本人の矜持』『藤原正彦、美子のぶらり歴史散歩』『国家と教養』等。新田次郎と藤原ていの次男。

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

藤原正彦
登録
倫理学・道徳
登録

書籍の分類