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200万人が「家族」を思って涙した。本屋大賞受賞作!

  • 受賞第3回 本屋大賞

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン―

リリー・フランキー/著

810円(税込)

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発売日:2010/07/01

読み仮名 トウキョウタワーオカントボクトトキドキオトン
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-127571-0
C-CODE 0193
整理番号 り-4-1
ジャンル 文芸作品
定価 810円

オカン。ボクの一番大切な人。ボクのために自分の人生を生きた人──。四歳のときにオトンと別居、筑豊の小さな炭鉱町で、ボクとオカンは一緒に暮らした。やがてボクは上京し、東京でボロボロの日々。還暦を過ぎたオカンは、ひとりガンと闘っていた。「東京でまた一緒に住もうか?」。ボクが一番恐れていたことが、ぐるぐる近づいて来る──。大切な人との記憶、喪失の悲しみを綴った傑作。

著者プロフィール

リリー・フランキー リリー・フランキー

1963(昭和38)年福岡県生れ。武蔵野美術大学卒業。イラストレーター、文筆家、絵本作家、フォトグラファー、俳優、作詞・件曲家など、ジャンルを問わず幅広く活動。『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン―』は著者初めての長篇で、2006(平成18)年本屋大賞を受賞。その他の作品に『女子の生きざま』『美女と野球』『日本のみなさんさようなら』『マムシのan・an』『増量・誰も知らない名言集』『リリー・フランキーの人生相談』などがある。

ロックンロールニュース (外部リンク)

インタビュー/対談/エッセイ

波 2010年7月号より リリー・フランキー『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン―』 文庫化記念対談 「ムラ社会」をぶっ飛ばせ!

茂木健一郎リリー・フランキー

『東京タワー』は日本を変えたのか/「ムラ社会」の邪悪さと幼稚さ/
もっと生身のコミュニケーションを!

『東京タワー』は日本を変えたのか

リリー ご無沙汰してます。茂木さんと最初にお会いしたのも、『東京タワー』が出て少しあとの、雑誌の対談でしたね。
茂木 そうでした。あのころすでに『東京タワー』は一種、社会現象のようなことになってましたね。結果的に単行本で二百万部以上のベストセラーになった。僕はこれって、奇跡のようにすばらしいことだと思ってるんですよ。
リリー ありがとうございます。
茂木 極端なことを言うと、『東京タワー』の良さをわかる人が二百万人以上いるのなら、日本は救われるんじゃないかと思っていた。ところが、救われなかったんだよなあ、どうしてだろう。
リリー やっぱり科学者ならではですよね。原因と結果について考えてしまうところが(笑)。
茂木 僕の母もリリーさんのお母さんと同じ小倉出身なので、小さい頃はよく夏に小倉に遊びにいったりしていたんですよ。福岡とくらべると町の規模も小さくて、ちょっと残念な感じもあるんですけれども、人が個性的で、独特のあたたかさがあるんですよね。ああいう、リリーさんのオカンみたいな小倉の人のまっすぐな思いやりが、『東京タワー』を読んだ人の間に波及していけば、日本はよくなるんじゃないかと思っていたんです。
リリー 確かに地元の人って、みんなざっくりとしてはいますが、筋は通ってるんですよね。いま小倉の三十歳ぐらいの人も、昔ぼくが子供のときに見てた大人の人と同じ雰囲気を持ってますよ。
茂木 リリーさん自身はこの本を書いて何か変わったことはありますか?
リリー 雑誌の取材なんかでも、同じこと聞かれることが本当に多かったんですが、自分は全く何も変わってないと思うんです。ただ、母親を亡くしたという喪失感が残り続けているだけで。
茂木 そうなんですか。でも、変わらないというのは、すごいと思いますよ。普通はこんなベストセラーを出したら、多少は天狗になったりしますよ。何も変わってない、と言い切れるのは、ロックンロールだなあ。
リリー 僕がもし、最初から小説家を自称したり、ベストセラーを目指してた人間だったなら、天狗にもなってたかもしれません。でもこれは、おふくろの供養のために書いた本ですし。ここまで売れたことも、自分のことながら他人事のようにも思えるんです。
茂木 いまの話を聞いて、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんと先日対談したときのことを思い出しました。
リリー あの、ノーベル賞の授賞式に行くために、はじめてパスポートを取ったという方ですよね(笑)。
茂木 これはすさまじい話なんですよ。科学の業界では、あのクラスの人で、国際学会から招待が来ないことなんてないんですよ。受賞スピーチでもかたくなに英語をしゃべらなかったし。それって、本当にあり得ないことなんですよね。あの人は、ノーベル賞をもらったからといって全くぶれてないんですよ。権威が大嫌いで、アカデミズムでいばってる奴らを心からバカにしていて、相手にしない。そこがかっこいい。
リリー すごい、まさにロックンロールですね(笑)。
茂木 リリーさんもまったく同じですよ。
リリー いえいえ、まだまだです(笑)。

「ムラ社会」の邪悪さと幼稚さ

リリー 『東京タワー』がたくさんの人に読まれたことはうれしいとは思ったけど、達成感はなかったんです。ただ、僕みたいに中途半端な立場の人間が書いたものを認めてもらえたことで、今までのシステムを少し風通しよくできたかもしれません。
茂木 文壇みたいな、ある種の「ムラ」からじゃなくても、作品を発信できるんだ、ってことを知らしめたわけですよね。
リリー 現に、僕の周りのプータローがみんな小説を書き始めたし(笑)、風俗嬢に将来の夢を聞くと、昔は「弁護士」とか「ファッションデザイナー」だったのに、最近は「小説家」って答える子が増えたようです(笑)。
茂木 やっぱり権威に対する「してやったり感」というのはありましたか? 以前対談したときに、ネガティヴなエネルギーを、文章を書く時のモチベーションにしてる、って言ってたけど。
リリー どうでしょうかね。僕は小説を書いたりイラストを描いたり、写真を撮ってみたり楽器を触ったり、と色んなことを興味のあるままにしているので、「ムラ社会」的なものには所属できないし、したいと思ったこともないんです。だからこそ、様々なムラのなかだけでごちゃごちゃ言ってる人たちを見ると、特に最近は、憤りを通り越して、「幼稚だな」とあきれたりするんですよね。
茂木 言いたいことはよくわかります。僕がアカデミズムに感じる憤りもまったく同じです。
リリー 僕は母親から、「人に恥をかかせてはいけない」と言われて育ったんですが、狭いムラ社会にしがみつく人たちって、すぐ人を攻撃したり貶めたりする。
僕が出演した映画『ぐるりのこと』の橋口亮輔監督が言ってました。以前、イラクで人質になった人たちがバッシングを受けたでしょ。彼らが帰国してくるときに、「自己責任」というプラカードを掲げてた人がいるのをニュースで見て、「いったい日本人はどうなってしまったんだろう」って思ったって。わざわざそんなことをするために成田に来ている人。日本自体がムラ社会化しておかしくなっているのかもしれません。
茂木 人間の脳って、何が正しくて、何が悪いかという倫理的な判断を、無意識的にできると思うんですよ。つまり善悪を、それをして気持ちいいか、気持ちよくないかで決められる。でも、そういう感覚的なものが、ムラ社会に属してると麻痺してきちゃうのかな。
リリー でも、むしろ今はムラにしがみついてる人の言葉は届きにくくなっていると思います。世の中の人もバカじゃないから。やっぱり、自分たちの利益のために吐き出された言葉や作品は遠くには届かない。
茂木 ムラが提供する肩書きだって、意味がなくて邪魔なだけ。僕は最近「脳科学者」と呼ばれることが二重の意味でいやなんですよ。まず、僕は自分のことを「脳科学者」だと思ってなくて、便利だからその肩書きを使ってるだけなんです。なのに最近はさらに「脳科学者らしくない」って批判されるんですよ(笑)。「何者でもない者」になれればどんなにいいか。
リリー らしさは、いかがわしさですよ。
茂木 村上春樹さんは、日本の文壇のムラ社会的なものを嫌って、いち早くアメリカに飛び出していったよね。日本に戻ってきても、めったにメディアに登場しないし。あの人も、東京では相当嫌な思いをしたんじゃないですかね。
リリー 僕も何年か前から、東京以外の場所に住みたいと思い続けてるんですよね。いったん自分が属する場所を丸ごとリセットしなきゃいけないって。楽しさはあるけど息苦しくて、自分自身、鈍感になってるのがわかるんです。
茂木 リリーさんは絶対ニューヨークとかパリとかに行くべきだよ。もしかしたら東京の良さを再発見できるかもしれないし。

もっと生身のコミュニケーションを!

茂木 僕、若い人によく「今後自分はどうやって生きていけばいいか」って聞かれるんですけど、「指差すならなるべく遠くの星を指せ」って言ってるんですよ。僕自身、世界で勝負するのが最終的な目標です。ムラ社会で地位を保ってるぐらいだったら、世界に出て負けたほうがいいと思います。
リリー 見つめる星をつねに遠くに持ち続けるのは大事ですよね。
茂木 いまの東京には、この本に出てくる東京タワーみたいな、憧れの対象がなくなってしまったような気がする。
リリー いまは地方でも何でも食べられるし、どんなライブも見られるし。東京でなきゃ、ってものがないんですよね。
茂木 地方から出てきた人を案内するのに、青山とか赤坂に連れて行ってもまったく喜ばないんだよね。地方にも同じような場所があるから。
リリー そうなんですよね。で、彼らが一番行きたがるとこってどこかっていうと、お台場なんですよ。
茂木 フジテレビですね。
リリー 唯一、田舎にないのは中央メディアの局くらいなのかなって。
茂木 それは、電波塔である東京タワーが持っていたかつての吸引力に似ていなくもないですね。
でも、テレビに代表されるメディアだって、ツイッターとかユーストリームの出現で、憧れの対象としての力を失っていくんじゃないかな。誰かの編集を経ず、受け手にダイレクトにつながるコミュニケーションは、やっぱり魅力的ですよ。
リリー 誰かとガチンコで接していかないと、「気づき」もないし、何よりも楽しくないですしね。
茂木 いまの日本で、個は没してしまいがちなんですよ。もっと人と人との生身のふれあいを重視しなきゃ。政治家が考えるべきは、そういうことですよ。
リリー 僕の後輩で、下関で学校を経営している奴がいるんです。一度そいつから、夜に電話がかかってきて。「いま飲み会で一緒にいる人が、リリーさんと話したいって言うから代わってもいい?」って言われて出たら、「はじめまして。私、安倍晋三という者の妻でございます」って(笑)。俺の友だちなんかとも飲んでくれるのか、ってその地道な地元活動に驚きました(笑)。
茂木 政治家の奥さんも大変だね。でもそういう立場の人が、『東京タワー』みたいな本をきちんと読んで、オカンみたいな人間らしさ、あたたかさを見習ってくれたら、日本も変わるかもって思いたいよね。
リリー 読んでくださったみたいで感想を話していただきました。うちのおふくろや茂木さんのお母さんのような九州のオカンこそ、人と人のコミュニケーションの達人なんですよね。小倉のオカンって、誰にでも話しかけるから、日本でも海外でも、すぐに知らない人と打ち解ける。
茂木 この本が文庫になって、小倉のオカンの素晴らしさがさらに浸透するといいですね。何だかリリーさんとだと、どうしても日本を憂える大きな話になってしまいますね。これを機会に、日本をよくするために一緒に闘っていきましょうよ!
リリー そうですね。若い人が堅苦しくなく表現できる土壌は作りたいですよね。
その前に茂木さんの超多忙スケジュールをなんとかしなきゃ。美人秘書をつけますから、まずうちの事務所に入ってください(笑)。

(もぎ・けんいちろう 脳科学者/りりー・ふらんきー 作家・イラストレーター)

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