プロローグ――江夏豊の大胆さと繊細さ
才能の発見[昭和二十三―四十一年]
ハングリー精神を育てた時代/死んだはずの父との再会/「男は強くなくてはいけない」/左利きを強いた兄/才能を見出してくれた杉山先生/「大阪名物の白虎隊」は嫌だ/熱血漢、塩釜監督/甲子園出場の夢かなわず/運命のドラフト会議/大学進学か、プロ入りか/唐草の風呂敷で運んだ契約金/目の前にある栄光
二十歳の奪三振王[昭和四十二―四十三年 阪神時代]
落日の阪神、日の出の巨人/反骨精神と内紛の伝統/藤本監督に可愛がられる/個性的な諸先輩/愛憎半ばする村山実の胸中/「おまえのライバルは王や」/初めて味わうプロの水/黒星の先発デビュー戦/投げても報われない試合/二十四時間、野球のことを考える/真っ向勝負の巨人キラー/鈴木啓示との奪三振王争い/王さんまで一巡の離れワザ/マウンドで目の前が真っ暗になった
大記録の代償[昭和四十四―四十六年 阪神時代]
村山から譲られたエースの座/下手だった田淵のキャッチング/肩痛の前兆は「箸が持てない」/ズルくなければ生き残れない/「早くシーズンが終わらないかな」/青年監督村山の「選手心得」/ピッチング・ノートをつけ始める/千奪三振は王選手からとりたい/「黒い霧」事件の余波/手放せなかったニトログリセリン/「ストライクをストライクと言ってくれ」/なぜ酒をやめたのか/真夏の夜の夢、九連続奪三振/「何でカーブを放らんのか」
確執のなかで[昭和四十七―五十年 阪神時代]
二頭体制、始まる/村山、涙の引退式/永平寺の修行をサボッた金田正泰/一度めの監督殴打事件/連盟表彰をフイにした権藤正利/史上初、延長戦でのノーヒット・ノーラン/「あしたの中日戦には勝ってくれるな」/午後四時三分の明暗/意欲満々の吉田新監督/腕が浮腫んでキャッチボールができない/「力投型」からのモデルチェンジ
リリーフ・エースへの道[昭和五十一―五十二年 南海時代]
「人事はフロントで決める」/阪神に「絶対」はない/平気でウソをついた吉田監督/追い討ちをかけた愛児の死/野村監督の絶妙な口説き/背番号28との訣別/パ・リーグは「ひらめきの野球」/阪急の黄金時代だった/野球の師、野村監督の人間性/最後の先発/「革命」の一言で目覚める/人の汚したマウンド/「野村教」に殉ずる
最も幸福なとき[昭和五十三―五十五年 広島時代]
二年半ぶりの巨人戦/弁慶の心境だった/甲子園球場の土の匂い/選手を大事にした松田オーナー/フロリダの教育キャンプに参加する/「プロ魂」とは何か/「鉄人」、先発をはずされる/全試合ベンチ入りのきっかけ/広島、二度目の優勝/やっと「勝ち犬」になった/九回裏、「江夏の21球」/古葉監督に喧嘩を売る/冴える配球術と間合いの妙/日本シリーズ、ふたたび近鉄と/日本ハムへのトレード
戦いすんで[昭和五十六―五十九年 日本ハム、西武時代]
人情に厚いべらんめえ監督/ユニフォームは二着だけ/「キャッチャーをつくってくれ」/「読み」が通用しないバッター/「優勝請負人」と呼ばれる/両リーグで最優秀選手となる/記録に出ない数字/立ちはだかる西武/パ・リーグ最多セーブ記録を更新/西武の江夏攻略法/「俺と一緒に退団してくれ」/「管理野球」の世界へ/江夏がいなくてもいい球団/言行不一致の広岡監督/初めての二軍落ち、そして引退/市営球場で「たった一人の引退式」
エピローグ――「最後まであきらめない」のがエースの誇り
●あとがき/波多野 勝
●主要参考文献
●私が選ぶ最高の九人/江夏 豊
●年度別成績表
編集協力/片桐克博