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拉致と決断

蓮池薫/著

605円(税込)

発売日:2015/03/30

  • 文庫
  • 電子書籍あり

北朝鮮での24年間を綴った迫真の手記。拉致当日を克明に記した原稿を新たに収録。

恋人と語らう柏崎の浜辺で、声をかけてきた見知らぬ男。「煙草の火を貸してくれませんか」。この言葉が、〈拉致〉のはじまりだった――。言動・思想の自由を奪われた生活、脱出への希望と挫折、子どもについた大きな嘘……。夢と絆を断たれながらも必死で生き抜いた、北朝鮮での24年間とは。帰国から10年を経て初めて綴られた、衝撃の手記。拉致の当日を記した原稿を新たに収録。

目次
はじめに

拉致、その日――一九七八年七月三十一日
絶望そして光――このまま死ぬわけにはいかない
人質――日本に引き留めようとする家族とも「戦わ」なければならなかった
自由の海に溺れない――日本の自由は、私たちに興奮と戸惑いをもたらした
自動小銃音の恐怖――この地の戦争に巻き込まれ、犬死するのが口惜しかった
生きて、落ち合おう――これは父さんとおまえだけの秘密だよ
煎った大豆を――配給が途絶えたという話が耳に入るようになった
飢えの知恵――その男は小魚をわしづかみにして、洋服のポケットにねじ込んでいた
配給だけでは食えない!――私はトウモロコシが一粒落ちていても、拾うようになった
望郷――丘の景色のむこうには、海があるような気がしてならなかった
誘惑――川幅わずか三メートル。一、二、三歩で逃れられる!
革命のコンテンツ――おばあさんたちは、興に飢えた人のごとく踊りに没頭していた
北の狩り――当地でゴルフをやったのは、私が初めてではないか?
洗脳教育――自分がこんなにも反日的な国に拉致されたという事実に戦慄した
本音と建前――心を開かせようとする人には、ことさら警戒心が必要だった
バッジを外すとき――物資を背に、まるで泥棒のように部屋に逃げ込んだ
自由な市場――おばさんたちが一斉に怒声を上げた。「殴れ、殴ってやれ!」
二十四年ぶりの外食――老兵を敬えと軍隊で教えられていないのか!
いた! 親父だ!――運動の高まり、憂慮と憤り。私たちは山奥の招待所に移された
様々な打算――キムおばあさんは、欲のない女性だった
蟻の一穴?――韓国女子大生の逮捕に、北朝鮮の女性たちはみんなが泣いた
理性と本能――日本を応援すれば家族の偽装経歴が疑われる
将軍様の娘――もっぱらの関心事は、北の宣伝などではなく、恋人や結婚のこと
涙の演技――ふたたび戦争へ?
タブーと政治――そのとき相手は嘲りの混じったまなざしで私を見た
危険水域――さらに胸倉をつかんだ腕を激しく前後に揺さぶりながら……
後ろめたさ――私はその子のあとをつけて行った
終わりと始まり――子どもたちも何度も振り返りながら玄関を離れて行った

あとがき
さらに三年――もう待てない(文庫版あとがきにかえて)
解説 石高健次

書誌情報

読み仮名 ラチトケツダン
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 320ページ
ISBN 978-4-10-136222-9
C-CODE 0195
整理番号 は-51-2
ジャンル ノンフィクション
定価 605円
電子書籍 価格 605円
電子書籍 配信開始日 2015/09/18

著者プロフィール

蓮池薫

ハスイケ・カオル

1957年新潟県柏崎市生れ。新潟産業大学准教授。1978年中央大学法学部三年在学中に拉致され、24年間、北朝鮮での生活を余儀なくされる。帰国後、同大学に復学し卒業。訳書に『孤将』『私たちの幸せな時間』『トガニ―幼き瞳の告発―』など多数。著書に『半島へ、ふたたび』『蓮池流韓国語入門』『夢うばわれても』『拉致と決断』などがある。

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