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ワインズバーグ、オハイオ

シャーウッド・アンダーソン/著 、上岡伸雄/訳

649円(税込)

発売日:2018/06/28

  • 文庫
  • 電子書籍あり

トウェインとヘミングウェイをつなぐ、アメリカ文学の画期的名作を40年ぶりに新訳!

オハイオ州の架空の町ワインズバーグ。そこは発展から取り残された寂しき人々が暮らすうらぶれた町。地元紙の若き記者ジョージ・ウィラードのもとには、住人の奇妙な噂話が次々と寄せられる。僕はこのままこの町にいていいのだろうか……。両大戦に翻弄された「失われた世代」の登場を先取りし、トウェイン的土着文学から脱却、ヘミングウェイらモダニズム文学への道を拓いた先駆的傑作。

目次
いびつな者たちの書

紙の玉

哲学者
誰も知らない
狂信者――四部の物語

II
III 身をゆだねる
IV 恐怖
アイデアにあふれた人
冒険
品位リスペクタビリティ
考え込む人
タンディ
神の力
教師
孤独
目覚め
「変人」
語られなかったうそ
飲酒

見識
旅立ち
訳者あとがき
解説 川本三郎

書誌情報

読み仮名 ワインズバーグオハイオ
シリーズ名 Star Classics 名作新訳コレクション
装幀 Edward Hopper「New York,New Haven and Hartford」/カバー、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 352ページ
ISBN 978-4-10-220151-0
C-CODE 0197
整理番号 ア-27-1
ジャンル 文芸作品
定価 649円
電子書籍 価格 649円
電子書籍 配信開始日 2018/12/28

担当編集者のひとこと

昨年『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(J・D・ヴァンス著、関根光宏・山田文訳)という本が話題になりました。2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプを支持した「ラスト・ベルト」(錆びついた工業地帯)と呼ばれる地域の人々を描いたノンフィクションですが、その舞台は筆者の出身地でもあるオハイオ州で、ホワイト・トラッシュと呼ばれる貧しい労働者の実態に迫った一冊でした。

本作はそのルーツともいえる作品です。トランプが選出された大統領選からさかのぼること約百年、1919年に発表されたこの作品もまた、発展から取り残された人々の悲哀を描いています。1908年にT型フォードの製造が始まり、アメリカは農業国から一気に工業化へと舵を切りました。ちょうどいま、IT産業が次々とビリオネアと呼ばれる億万長者を生み出す一方で、物作りや重工業に従事していた人々が置き去りになっている現在のアメリカとよく似た時代です。大きな変化についていけない人々に寄り添って書かれたのが、この『ワインズバーグ、オハイオ』なのです。

2018/07/04

どういう本?

タイトロジー(タイトルを読む)

「ワインズバーグ」は実際には存在しない、作者が創造した架空の町です。ひとつの町を舞台とし、そこに住む人々を主役にした連作短篇という形式は、山本周五郎の名作『青べか物語』や宮本輝さんの『夢見通りの人々』、佐藤泰志『海炭市叙景』、川上弘美さん『どこから行っても遠い町』などに脈々と引き継がれています。

装幀

カバーに使ったのはアメリカの画家エドワード・ホッパーの作品。ホッパーといえば華やかな都市の人々を思い起こしますが、描かれる人々はどこかさみしげです。この絵にも、アメリカの不安な時代を象徴する力があります。

川本三郎さん「解説」より

 一見、平穏に見えるスモールタウン、ワインズバーグだが、「革命」「すさまじい変化」にさらされようとしている。変革期は人の心を揺さぶる。これまでの生活が壊されてゆく。時代の変化に付いてゆけなくなる。ワインズバーグの「いびつな者たち」の孤独、不安、疎外感の背景には、この十九世紀末にアメリカを襲った大きな変化がある。アンダーソンは、その変化を小さな町に暮す人々の心を通して、描くことに成功している。(本書349ぺージ)

上岡伸雄さん「訳者あとがき」より

翻訳のために改めて読み直し、モダニズムの先駆けという面だけでなく、レイモンド・カーヴァーのような短編作家の先駆者という面も強く感じた。貧しく生きる労働者階級の人々が抱える心の闇――それを生々しく露わにしたという点で、アンダーソンの伝統は現代アメリカ文学のなかにも脈々と息づいているように思われる。(本書340ぺージ)

著者プロフィール

(1876-1941)アメリカ・オハイオ州生れ。貧しい家庭に生れたが、米西戦争に従軍したことをきっかけにシカゴに出て、広告代理店に職を得た。そののち故郷で事業を興すも、突然妻子を棄てて著述に専念し、自伝的な『おおぼら吹きのマクファーソンの息子』やペンシルヴァニアの炭鉱地帯を主題とした『行進する人たち』、代表作『ワインズバーグ、オハイオ』を著す。アメリカ文学では19世紀の土着的作風とヘミングウェイやフォークナーなどのモダニズムの橋渡しをなした重要作家と見做される。

上岡伸雄

カミオカ・ノブオ

1958年、東京生れ。学習院大学文学部教授、アメリカ文学専攻。著書に『ヴァーチャル・フィクション』など。訳書にグレアム・グリーン『情事の終り』、ベン・ファウンテン『ビリー・リンの永遠の一日』、シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』、タナハシ・コーツ『ウォーターダンサー』など多数。

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