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京都発見(九)―比叡山と本願寺―

梅原猛/著 、井上隆雄/写真

2,750円(税込)

発売日:2007/04/25

  • 書籍

「私はこの旅によって多くのことを学んだ」――。梅原猛のライフワーク、堂々完結!

京都を「日本仏教の本山」とした、最澄による比叡山延暦寺の建立。その比叡山より出でた後、革命的宗派・浄土真宗を興した親鸞と教団の流転・分裂……。京都の二大寺院「比叡山と本願寺」の激動の歴史こそが、千年にもわたり京都が辿った道である。十年に及んだ、「日本史の冷凍庫」京都の古層をめぐる旅、いよいよ終幕――。

目次
一 比叡山延暦寺と最澄
二 最澄と延暦寺戒壇院
三 延暦寺法華総持院と円仁
四 延暦寺常行堂・法華堂と円仁
五 赤山禅院と円仁
六 延暦寺と回峰行と籠山行
七 長等山園城寺と円珍
八 三井寺の黄不動と円珍
九 三井寺の新羅明神と源氏
十 聖護院と修験道
十一 横川と元三大師良源
十二 横川と恵心僧都源信
十三 西教寺と真盛上人
十四 比叡山延暦寺と南光坊天海
十五 親鸞聖人と日野誕生院
十六 親鸞聖人と元大谷崇泰院
十七 蓮如と堅田の本福寺
十八 蓮如と山科本願寺跡
十九 変転の歩みの仏光寺
二十 仏光寺と「絵系図」の布教
二十一 興正寺と本願寺の脇門跡
二十二 明治維新と興正寺の独立
二十三 錦織寺と親鸞聖人の足跡
二十四 西本願寺と京都移転
二十五 西本願寺の白書院と渡辺了慶
二十六 西本願寺の門主と美意識
二十七 東本願寺と東西の分立
二十八 東本願寺と渉成園の美学
二十九 東本願寺と近代真宗学
索引
本書収録主要寺社等所在一覧

書誌情報

読み仮名 キョウトハッケン09ヒエイザントホンガンジ
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-303022-5
C-CODE 0095
ジャンル 日本史
定価 2,750円

梅原猛「京都発見」十四年の足跡 ――シリーズ全九巻完結記念

京都発見(一) 地霊鎮魂

「人生の殆どを京都に住み、京都の恩恵を十二分に受けていながら、私は京都に関して本らしい本を書いていない。(中略)日本文化の研究者といわれ、京都に長く住む私が京都について何も書いていないのは、京都に対して、甚だ忘恩的なことであると言わねばならない。五十年間、四季の風景を思う存分楽しませていただいた上に、学問すら生み出させていただいたこの京都の地に何らかの感謝の記念を残すべきであろう」
 一九九三年、それまで遠く日本古代への思索の旅を続けてきた著者が、古稀を迎える目前に、新たな旅の目的地として選んだのが、自ら住まう京都の地だった。目的は、京都の古社寺を巡礼し、「旅僧のようにこの京の地に住み着いている霊を訪れ、その語る声を聞く」ことである。
「京都遊行」の旅は、東山の自宅近くにある若王子神社からはじまり、藤原家や平家といった権力者たち、法然や一遍といった仏教者、天皇や神々といった京都の地霊たちの声に誘われ、辿り着いたのが宇治の平等院にある見事な建築と仏像群である。

京都発見(二) 路地遊行

「昔は、京の都の中に寺院を造ることは許されなかった。この禁が解けたのは、鎌倉時代になってからと言われるが、実は平安時代、既に都の真ん中にあり、庶民の崇拝を集めている小堂があった」
 そのひとつが聖徳太子による建立と伝えられ、後に親鸞が籠もった六角堂である。路地の奥深くにひっそりと佇むお堂は、千年以上にもわたり、その町を、そこに住む人々を見護ってきた。また、庶民に愛され続けた仏様の代表が、お地蔵様と阿弥陀様である。これらを祀る壬生寺と誓願寺ほか、清水寺、広隆寺、南禅寺、建仁寺、八坂神社、三十三間堂など、今も京都を華やかに彩る寺社の縁起と精神を、一歩、また一歩と明らかにしていく。

京都発見(三) 洛北の夢

 京都市の北、比叡山の麓にある山間の村・八瀬は、天皇家との縁深く、その関係の源は後醍醐天皇の時代にまで遡る。
 その八瀬のさらに北、大原の地は「惟喬親王以来、希望を失った都の高官の隠遁の地であった。しかし、大原に隠遁したのは都の高官のみではない。天台宗の本山、比叡山延暦寺における政治的争いを嫌ってこの地に逃れた僧も多くいた」。都を追われた悲運の皇子・惟喬親王、比叡山を降りた良忍上人など、大原に隠棲した古人の系譜を辿り、小野、鞍馬、貴船など、洛北の地に静かに眠る怨霊たちとの対話を収める。

京都発見(四) 丹後の鬼・カモの神

 京都をめぐる遊行はしばし京都市内をはなれ、府北部の丹後へ。この地には民間に伝わる多くの伝承がある。
「『日本書紀』に記せられず、地方の伝承にのみ語られている話はあまり信用出来ないという歴史家があるが、私はむしろそういう地元に残る話にこそ中央の歴史が語れなかった歴史の真実が隠されているのではないかと思う」
 山椒大夫、浦嶋太郎、大江山の鬼、天橋立などの伝承とゆかりある丹後の寺社を回った後、再び京都市内へと戻り、京都随一の由緒を誇る下鴨神社・上賀茂神社に祀られる「カモの神」の素性を探る。
 そして、「私は祭は歴史的事件を冷凍し、永久保存したものであると思っている」と、「葵祭」や「やすらい祭」など、京都の奇祭の来歴を辿る。

京都発見(五) 法然と障壁画

 ここにきて「京都発見」の旅は大きな転換期を迎える。
「前の旅では、私は地縁によって探求の旅を行ったが、今度は旅の仕方を変えて、宗教の縁――仏縁・神縁によって旅を行おうと思う」
 新しい旅の始まりに選んだのは、日本仏教のメルクマールとなった鎌倉新仏教の旗手、浄土宗の祖・法然。
「法然は一生、薄暗く日の当たらない谷あいに好んで住んだように思われる。(中略)彼は心の底に深い悲しみをもった聖者であり、このような孤独な死を心のどこかで望んでいたのではないかと思う」
 法然誕生の寺、修行の地・比叡山、最期を迎えた知恩院、荼毘に付された光明寺、遺骨が納められた二尊院など、法然ゆかりの寺を、そしてまた、知恩院や二条城に遺された、狩野派による華麗な障壁画の名品を訪ね歩く。

京都発見(六) 「ものがたり」の面影

「日本には古くから数多くの物語がある。(中略)物語の舞台も主に京都である。それ故、京都にはさまざまな物語の跡がある」
『伊勢物語』と水無瀬、『土佐日記』と山崎、『蜻蛉日記』と宇治、『枕草子』と東山の曙、紫式部が『源氏物語』を執筆した石山寺など、様々な「ものがたり」を生み出した芸術都市・京都に漂う古人の情念に思いを馳せ、その面影を辿る。

京都発見(七) 空海と真言密教

「新幹線の南窓の西に東寺の五重塔が見えると、京都に帰ってきたという安心感がわく。東寺の五重塔は現代でも京都へ入る目印になっているが、昔もそうであったろう」
「日本仏教界のスーパースター」弘法大師・空海と都の交わりを抜きにして、京都の仏教を語ることはできまい。その空海が、唐より持ち帰った真言密教を都に布教するため、根拠地としたのが、嵯峨天皇より賜った東寺である。学問・芸術・布教に類稀なる才能を発揮した空海は、寺院・仏像・思想などあまたの足跡を京都に残した。雨乞い伝説の残る神泉苑、神護寺や高山寺、大覚寺、仁和寺、醍醐寺など、空海と真言密教ゆかりの名刹を辿る。

京都発見(八) 禅と室町文化

「真言宗とともに京都に最も多くの本山のある臨済禅の寺々を訪ねたいと思う。(中略)天龍寺、相国寺、大徳寺、妙心寺という四つの本山があるが、それらは鎌倉末期から室町時代に開かれたものである。(中略)禅寺を訪ねて、いかなるものを発見するか心ときめく」
 室町時代の京都でその魅力を大きく開花させた臨済禅。「室町時代は禅芸術を中心に中国から優れた文化が移入され、それが奈良・平安時代に作られた伝統的文化と融合し、新しい日本文化が作られた時代である。室町文化を知らなければ、日本文化は分からない」
 天龍寺や苔寺の庭、足利氏と相国寺、政治と文化の中心地であった金閣・銀閣寺など、禅文化の魅力が詰った一冊。

京都発見(九) 比叡山と本願寺

 最後の旅の目的地として、著者が選んだのは、比叡山延暦寺と天台宗の寺、そして本願寺を中心とした浄土真宗の寺。
「最澄と都との出合いは、奇しき縁である(中略)。結局、比叡山延暦寺を最も重要な日本仏教の本山とし、そして以後の日本の祖師たち、法然、親鸞、一遍、栄西、道元、日蓮など、すべてこの比叡山から出現せしめた原因ともなる」
 京都を「日本仏教の本山」とした、最澄による比叡山延暦寺の建立。そして鎌倉末期、比叡山より出でた後、革命的宗派・浄土真宗を興した親鸞とその教団の流転と分裂の歴史。最終巻では、京都の二大寺院の激動の歴史を追う。
「いままで私は多少日本の宗教のことを知っていると思っていたが、いざ回ってみると、知らないことが多く、新しく教えられることばかりで、大いに勉強になった」
 こうして著者のライフワークである「京都発見」シリーズが完結した。新聞連載開始から十三年。古稀目前から傘寿を過ぎるまで。訪れた寺社は二百五十近くに及ぶ。

波 2007年5月号より

著者プロフィール

梅原猛

ウメハラ・タケシ

(1925-2019)1925年宮城県生まれ、哲学者。国際日本文化研究センター顧問。京都大学文学部哲学科卒業。立命館大学教授、京都市立芸術大学学長、国際日本文化研究センター所長などを歴任。縄文時代から近代までを視野におさめ、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する幾多の論考は〈梅原日本学〉と呼ばれる。著書に『隠された十字架一法隆寺論』、『葬られた王朝一古代出雲の謎を解く』、『親鸞「四つの謎」を解く』(以上すべて新潮社)など多数。

井上隆雄

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