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映画史上もっとも美しく気高い二人の関係を見事に描いた、決定版評伝。

殉愛―原節子と小津安二郎―

西村雄一郎/著

2,052円(税込)

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発売日:2012/08/24

読み仮名 ジュンアイハラセツコトオヅヤスジロウ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 319ページ
ISBN 978-4-10-303934-1
C-CODE 0095
ジャンル 演劇・舞台、映画
定価 2,052円
電子書籍 価格 1,642円
電子書籍 配信開始日 2013/02/15

「もう一度、小津先生とごいっしょに、精一杯の仕事ができたらと、それだけが、ほんとうの心残りです」映画に殉じ、六〇歳で世を去った名監督。その彼に殉じ、四二歳で銀幕を去った「永遠の処女」。『晩春』『麦秋』『東京物語』……名作と所縁の地を丹念に訪ね歩いて紡がれる、世紀のプラトニック・ラブと、その全貌――。

著者プロフィール

西村雄一郎 ニシムラ・ユウイチロウ

ノンフィクション作家、映画・音楽評論家。1951年、佐賀市生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科を卒業後、「キネマ旬報」パリ駐在員。帰国後、映像ディレクターとしてビデオCM、ビデオクリップを演出。1985年から古湯映画祭(佐賀市富士町)の総合ディレクターを務め、その功績により1990年に「佐賀新聞文化奨励賞」受賞。2001年公開映画『いのちの海』(原作・帚木蓬生)で脚本を初執筆(石堂淑朗と共作)。2003年にオープンした「映像ミュージアム」(埼玉県川口市)の総合監修を担当。佐賀新聞のコラム「西村雄一郎のシネマ・トーク」は連載36年を超え、新聞単独執筆連載の長期記録を更新中。現在、佐賀大学で教鞭をとる。著書『映画に学ぶビデオ術』(ソニー・マガジンズ)はフジテレビによって映画技術講座番組「アメリカの夜」としてテレビ化され好評を博した。『黒澤明 音と映像』(立風書房)は一部が翻訳され、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の教科書になっている。2010年、モスクワ映画祭の「黒澤明シンポジウム」に日本代表として招待され、講演を行なった。

書評

波 2012年9月号より 原節子――「伝説」から「真実」へ

田中壽一

私は昭和三二年に東宝に入社し、助監督や演技事務、プロデュースなどを担当しました。
当時、砧の撮影所に、中尾さかゐさんという、結髪の大ベテランの方がおられて、入社したての私を、ずいぶん可愛がってくださいました。そのおかげで、私は結髪部屋に入り浸って多くの女優さんを目の当たりにしてきました。高峰秀子さん、新珠三千代さん、若手では司葉子さん、団令子さん、星由里子さん……。中尾さんは、彼女たちの相談相手のような存在でもありました。
その中で、ひときわ輝いていたのが、原節子さんです。原さんがおられる結髪部屋には、気軽に入りにくいような雰囲気さえありました。しかし実際には、とても気さくで、さっぱりした性格の方です。「ふんどし医者」(昭和三五年)で、森繁久弥さんの遅刻が続いたら、ある時、原さんが大声で「みなさ~ん、大スターさんがやっといらっしゃいましたよ~!」とやったら、さすがの森繁さんも体裁が悪くなって、以後、遅刻しなくなりました。そんな茶目っ気のある方でした。
原さんといえば、やはり「晩春」(昭和二四年)や「東京物語」(昭和二八年)など、松竹の小津安二郎監督作品です。ロケ先の宿屋で何度か小津組と一緒になったことがありますが、実に紳士で、「白雪」の樽酒を、楽しそうにみんなで呑んでました。原さんも日本酒がお好きで、お吸い物のお椀のフタでグイグイ呑んでました。
原さんはあれだけの美女ですから、恋の噂も一つや二つではありませんでした。小津監督との仲を憶測する記事も出ましたが、実際は、信頼と尊敬で結ばれた「純愛」関係だったと思います。それがいかに美しい関係だったかは、私も取材に協力させていただいた本書で、ていねいに描かれています。
東宝では、古澤憲吾監督が原さんにご執心でした。クレージー・キャッツ映画や若大将シリーズで知られる大ヒット・メーカーで、なかなかの美男子でした。これは撮影所では有名な話で、私も麻雀の席でその思いを聞かされたことがあります。しかし結局、藤本真澄プロデューサーに「監督を取るか、女優を取るか」と諭され、諦めたんです。
その藤本さん自身も、原さんにある思いを抱いていたようです。松竹から小津監督と原さんを招いて「小早川家の秋」(昭和三六年)を撮らせたほどですから。しかし、これもまた小津さん同様「純愛」でした。女優は、ある年齢になると、役柄が限られてきます。山田五十鈴さんや山本富士子さんのように舞台女優に転向できればいいのですが、実際にはそう簡単にはいかない。戦前派の原さんが草創期のテレビに移行できるとも思えない。そうなると、後半生の暮らしに困ります。そこで藤本さんは、東宝の株や土地の購入を薦めていたようです。中年以降の原さんの、惨めな姿を見たくなかったのかもしれません。
本書で西村さんが指摘しているとおり、原さんが銀幕を去った最大の理由は、やはり小津さんの死だと思います。それほど原さんは、小津さんを敬愛していました。そして、以後、一切の仕事をせずに隠遁生活を送ることができたのは、藤本さんのおかげでしょう。期せずして、この二人の男性は、生涯独身のまま亡くなっています。まるで原さんに生涯を捧げたかのようです。いや、原さんも、小津さんや藤本さんに操を立てたというべきかもしれません。
ところで、もう一人、原節子を語る上で欠かせない男性がいます。義兄の映画監督・熊谷久虎氏です。その意味は、本書をお読みいただければ、わかります。原節子の評伝で、彼をここまでクローズアップしたものはあまりなかったように思います。おそらく本書をきっかけに、二人の「関係」が、さらに語られるようになるでしょう。その時、原節子さんの、「永遠の処女伝説」は、「真実」になるような気がします。本書は、その突破口となる一冊です。

(たなか・じゅいち 映画プロデューサー)

目次

プロローグ――パリの原節子
第一章 節子の誕生
第二章 紀子の季節
『晩春』(一九四九年)
第三章 忍ぶ恋
『麥秋』(一九五一年)
第四章 永遠の契り
『東京物語』(一九五三年)
第五章 孝子の季節
『東京暮色』(一九五七年)
第六章 秋子の季節
『秋日和』(一九六〇年)
第七章 喪服を着けて
『小早川家の秋』(一九六一年)
エピローグ――円覚寺の小津安二郎

あとがき
原節子・小津安二郎 全作品年表
主要参考文献
著者略歴

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