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劇的に勝ちたい、と王者は言った。
著者だけが知る、選ばれし者たちの素顔。

挑戦者たち 男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて

田村明子/著

1,512円(税込)

本の仕様

発売日:2018/03/30

読み仮名 チョウセンシャタチダンシフィギュアスケートピョンチャンゴリンヲコエテ
装幀 エンリコ/カバー写真、アフロスポーツ/カバー写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 222ページ
ISBN 978-4-10-304034-7
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,512円
電子書籍 配信開始日 2018/04/13

羽生結弦、宇野昌磨、ハビエル・フェルナンデス、ネイサン・チェン、パトリック・チャン。フィギュアスケートの進化を託された者たちは、何を求めて肉体と精神の限界に挑み続けるのか。フィギュアを25年に亘り取材し、会見通訳も務めるジャーナリストが綴る、選ばれし者たちの素顔。彼らの言葉がディック・バトン、プルシェンコ、都築章一郎ら先駆者たちの想いと響きあうとき、66年の時を経てたぐり寄せられた奇跡は伝説に変わる。

著者プロフィール

田村明子 タムラ・アキコ

ノンフィクションライター、翻訳家。盛岡市生まれ。中学卒業後に単身で米国留学し、高校・美大卒業後、出版社勤務などを経て執筆活動を始め、2018年3月現在までニューヨーク在住。フィギュアスケートの取材は1993年から始め、長野五輪では運営委員として海外メディアを担当。以降、日米バイリンガルの技術を生かしてソルトレイクシティ、トリノ、バンクーバー、ソチ、平昌とすべての冬季五輪を現地取材。「Sports Graphic Number」「Ice Jewels」「Number Web」「WEB RONZA」に寄稿を重ね、国際大会での会見通訳も務める。著書に『氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート』『パーフェクトプログラム 日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』『銀盤の軌跡 フィギュアスケート日本ソチ五輪への道』(いずれも新潮社刊)、『氷上の美しき戦士たち』(新書館)など。また、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新聞出版)など英会話の著書の他、訳書も多数。

書評

これほど過酷で、人間的な

梯久美子

「ぼくはこれまでアメリカンフットボールも、NBAも撮影してきた。だけれど、フィギュアスケーターほど、強靭なアスリートはほかに知りません」。金メダルを獲得した羽生結弦の涙にもらい泣きしながら、私はABCのTVカメラマン、ジョン・ボイドの言葉を思い出していた。「まさにその通り!」と思いながら。
 ただしこの言葉、私が直接聞いたわけではない。2007年に刊行された田村明子さんの著書『氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート』で読んだのだ。田村さんは冬季オリンピックごとに新潮社からフィギュアスケートに関する本を刊行していて、『氷上の光と影 知られざるフィギュアスケート』はその最初の本。このたび刊行された『挑戦者たち 男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』は4冊目になる。
 札幌オリンピックでジャネット・リンの可憐さに魅せられて以来のフィギュアファン(当時、真駒内のスケート会場のすぐ隣にある小学校に通っていた)である私は、冬季五輪の年が明けると、田村さんのこれまでの著書を取り出して読み返すことにしている。そこに描かれている知られざるドラマ、そして栄光だけではないスケーターたちの人生をおさらいしてから観戦することで、感動が何倍にも増すのである。思えば技の見方から採点の仕組み、コーチと選手との関係、振付師の役割、国際大会の裏側なども、彼女の本から学んできた。
 羽生の連覇、そして宇野昌磨との金銀独占の興奮も冷めやらぬ中で刊行された『挑戦者たち 男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』は、テーマを男子フィギュアに絞り、田村さんならではの取材力で、テレビや新聞・雑誌ではわからないスケーターたちの素顔を垣間見せてくれる。読みながら、「画面に映らない現場は、あのときこうなっていたのか!」「え? あの選手がこんなことを言ったの」と、何度驚き、胸が熱くなったかわからない。
 よくある宣伝文句で言えば「秘話満載」ということになるのだが、そこには長年フィギュアの取材に携わり、選手や監督・コーチたちと信頼関係を築いてきた著者ならではの競技への深い理解と選手たちへの愛情があり、決して興味本位に陥ることのない、第一級のスポーツノンフィクションになっている。
 彼女は25年におよぶフィギュアスケートの取材キャリアを持ち、ソルトレイクシティ、トリノ、バンクーバー、ソチ、そして平昌と、すべての冬季五輪を現地取材してきた。フィギュアスケートのファンなら知らない人はいない、筋金入りの国際スポーツジャーナリストなのである。ニューヨーク在住のバイリンガルであり、海外の大会における日本人選手の会見通訳も数多く担当している(何とすべてボランティアだという)。
 本書では、「新4回転時代」を闘い抜いた羽生、宇野、ハビエル・フェルナンデス、ネイサン・チェン、パトリック・チャンたちの進化の過程を、単独インタビューや彼女が通訳を務めた国際大会の記者会見を織り交ぜて伝えている。また、現役の選手だけではなく、66年前にオリンピック連覇を成し遂げたディック・バトン、エフゲニー・プルシェンコ、かつて羽生を指導した都築章一郎氏にもインタビューしていて、男子フィギュアの歴史をたどることのできる内容になっている(個人的には、アイスショー会場の警備員室で、古びた蛍光灯の下、立ったままプルシェンコにインタビューする場面が忘れがたい)。
 オリンピック本番を控えて韓国入りした羽生が、昨年11月の故障以来、初めて人前でリンクに上った公式練習後の記者会見で、通訳を務めたのも彼女である。本書に記されたそのときのエピソードのひとつひとつに、ああ、これが羽生という人なのかと、それまでにない新鮮な印象を持った。
 読了して思ったのは、フィギュアスケートほど過酷な、それでいて人間的なスポーツはないということだ。選手はみな孤独だが、こうしてひと続きの流れの中で見れば、ひとりひとりの選手が、より美しく強いスケートを生むための礎となってきたことがわかる。シーズンごとにリンクに刻まれる歴史の上を、彼らは生きているのだ。

(かけはし・くみこ 作家)
波 2018年4月号より
単行本刊行時掲載

目次

プロローグ――2018年2月12日
第1章 ディック・バトン
「楽しんだ選手が勝つ」
第2章 パトリック・チャン
「自分がいたいのはこの場をおいて他にない」
第3章 エフゲニー・プルシェンコ
「ぼくにはスケートが必要」
第4章 都築章一郎
「彼の中ではイメージができている」
第5章 ハビエル・フェルナンデス
「ハッピーな気持ちで終えるために」
第6章 羽生結弦
「劇的に勝ちたい」
第7章 ネイサン・チェン
「プレッシャーは感じるけれど」
第8章 宇野昌磨
「成長していく自分を見てもらいたい」
第9章 平昌オリンピック
決戦の時
エピローグ――2018年2月18日
あとがき

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