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待望の新シリーズ〈全4冊〉。西洋中世史最大の事件、十字軍。その最良にして、もっとも美しい入門書!

絵で見る十字軍物語

塩野七生/著

2,376円(税込)

本の仕様

発売日:2010/07/23

読み仮名 エデミルジュウジグンモノガタリ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 A5判変型
頁数 206ページ
ISBN 978-4-10-309632-0
C-CODE 0322
ジャンル 世界史
定価 2,376円
電子書籍 価格 1,901円
電子書籍 配信開始日 2011/08/05

現代にもつながるキリスト教vs.イスラム教、その対立の原点。聖地イェルサレム奪還のための遠征はどう始まり、どう戦われ、どう破綻したのか――。複雑に絡み合う歴史背景をわかりやすく解きほぐし、美しい挿絵とともに壮大な物語へと誘い出す。「ローマ人の物語」に続く待望の新シリーズ「十字軍物語」の第一弾が登場!

著者プロフィール

塩野七生 シオノ・ナナミ

1937年7月7日、東京に生れる。学習院大学文学部哲学科卒業後、1963年から1968年にかけて、イタリアに遊びつつ学んだ。1968年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。1982年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。1983年、菊池寛賞。1992年より、ローマ帝国興亡の歴史を描く「ローマ人の物語」にとりくみ、一年に一作のペースで執筆。1993年、『ローマ人の物語I』により新潮学芸賞。1999年、司馬遼太郎賞。2001年、『塩野七生ルネサンス著作集』全7巻を刊行。2002年、イタリア政府より国家功労勲章を授与される。2006年、「ローマ人の物語」第XV巻を刊行し、同シリーズ完結。2007年、文化功労者に選ばれる。2008-2009年に『ローマ亡き後の地中海世界』(上・下)を刊行。2011年、「十字軍物語」シリーズ全4冊が完結。2013年、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(上・下)を刊行。2017年、「ギリシア人の物語」シリーズ全3巻を完結させた。

インタビュー/対談/エッセイ

波 2010年8月号より [塩野七生「十字軍物語」シリーズ刊行記念インタビュー] 「千年の眠り」から男たちを呼び覚ます

塩野七生

大ベストセラーとなった「ローマ人の物語」に続く塩野七生さんの新シリーズ、「十字軍物語」(全四冊)の刊行がいよいよ始まります。その先頭をきって登場する『絵で見る十字軍物語』。執筆の背景や、新シリーズ全体の構想について聞きました。

  オペラでいえば“序曲”

――この『絵で見る十字軍物語』、文章だけではなく、百枚近い美しい版画と地図という構成に、大変驚きました。
この挿絵を描いたフランスのギュスターヴ・ドレという人は、十九世紀最高のヴィジュアル・アーティストで、聖書やダンテの「神曲」などの挿絵を描いた大変なベストセラー画家なんです。現代の漫画家ではとてもかなわないクオリティでしょう。
さらに地図も添えて見せるというのが、私のアイディアでした。歴史と地理は表裏一体であるというのが私の考え方ですから、ヨーロッパからメソポタミア地方、つまり現代のイラクまでという、「距離感」を読者に体感して欲しかった。そのために地図はどうしても必要でした。テクノロジーに関してはファックスどまりで、コンピュータなど触ったこともない私ですが、iPadやKindleなどが注目されている今、書籍というアナログな媒体でも、こんなことができるということをお見せできたと思います。
ヨーロッパの古本屋には、今回使ったような美しい版画を集めた本がたくさんあるんです。この挿絵が載っていた本も、もう何十年も前にヴェネツィアの古本屋で、綺麗だなと思って眺めていたら、「これはきっとすぐに売れてしまうよ」と店主が囁くんです。こういった本をバラして、絵の部分だけ額装するのが当時流行っていたためです。それでつい慌てて買ってしまった。そうして買った本がこんな形で甦るとは、思ってもみなかったのですが。
このドレの絵を使った『絵で見る十字軍物語』が、私の新たな挑戦の先陣となります。オペラでいえば“序曲”、映画でいえば“予告編”という感じですね。 

  健全なる野次馬根性

――十字軍を次のテーマに選ばれたと聞いて、一歩引いたところから政治的な面を中心にお書きになるのかと想像していたのですが、「ローマ人の物語」と同じように、あくまで人間に即した作品になっていますね。
まず前提として、中世というのは肖像画が描かれなくなった時代だということを押さえなくてはならない。顔のない社会と言ってもいい。
イスラム教は今もそうですが、初期においてはキリスト教も偶像崇拝を禁止していました。しかし中近東で生まれたキリスト教は、ギリシア・ローマの素晴らしい彫刻やモザイク画の伝統があるヨーロッパに普及していった。その過程で、「偶像崇拝は禁じられているので、あなたが信じている人の顔を描くことはできません」というのでは、とても通用しなかったはずです。自分が信じている人の顔を見たいというのは、人間の素朴な欲求ですからね。それで少しずつ肖像が増えていきます。それでも十字軍時代に描かれる人の顔といえば、せいぜいキリストか聖者の顔くらいのもの。これから私が「十字軍物語」で物語る将たちや王の顔は、ほとんど描かれなかった。前作『ローマ亡き後の地中海世界』でもそれを痛烈に感じました。これは海賊や将たちが主人公の物語ですが、やはり彼らの肖像は遺っていません。
ある人の顔が、その人物の特色を持って描かれはじめるのは、ルネサンスの幕開けとして語られる画家ジョットーの登場以後のことです。ヨーロッパではそういった、顔を見ることによって人間世界の現実を見つめるという精神が発達して、それがのちにルネサンスにつながっていくのですね。
そうした状況の中でも、やはり私は読者に顔を見てもらいたかった。そして人間を見てもらいたい。そこで活用したのが、学問的なマナーからは外れるのかも知れないけれども、十字軍時代からずっと後に描かれたドレの作品でした。
――そのおかげか、続いて刊行される『十字軍物語1』でも、登場人物がみな生き生きとして、非常に身近な存在として感じられました。
「あなた、本当にしょうがない人ね」なんて苦笑しながら史料を読んでいると、それぞれのキャラクターがなんとなくわかってくるんです。私は自分自身を「健全なる野次馬根性」、「素朴なミーハー精神」の持ち主だと思っていますが、おっちょこちょいの人物がいたり、ただの“チンピラ”でしかなかった人物が力強く成長していったり、かと思えば奥さんにお尻を叩かれて十字軍に出かける人物もいたりと、これではまるで何人かで一組の男たちが登場する西部劇のようなものではないか、そんな気分になりました。 
俳優で映画監督でもあるクリント・イーストウッドが『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』という二つの作品を撮っています。当初の企画では、硫黄島での攻防をアメリカ側から描いた『父親たちの星条旗』だけだったらしいのですが、イーストウッドが優れているのはそこから先で、「あちら側(日本側)はどうだったのだろう?」という、ある種野次馬的な、そして素朴な疑問から発してあれだけの作品を撮った。歴史叙述も同じことだと思います。
ただし歴史上の人物というのは、古代ローマ人にかぎらず中世の人物も、相当な猛獣です。私が猛獣使いになったつもりで馴らそうとした途端、その猛獣たちはサーカスの動物になってしまいます。しかし私は彼らを、猛獣のままに読者に見せたい。馴らすとか、自分に引きつけて書くとか、そういうのはひどくつまらない態度のように思います。私の方法は、馴らすというよりは寄り添うという感じに近いですね。

  歴史叙述に「客観性」はありえるか

――キリスト教とイスラム教それぞれに対して、どちらにも公平な視点から書くということで苦労なさったのではないかと思うのですが……。
いえ、歴史を書くということにおいて、完全に客観的な立場というのはありえません。私はキリスト教徒でもイスラム教徒でもないですし、健全なる野次馬根性でもって、「キリスト教徒もイスラム側も、どっちもどっちよね」なんて、ミーハー的に見ているものだから、多少は中立的になれるのかも知れない。しかし完全に客観的というのはあり得ません。
中世というのは、メディアの時代、有権者の時代である現代とは、決定的に違います。たとえば、菅直人さんが首相になって、市民運動をやっていたお尻の青い頃の理念とは相容れないことも、せざるを得ない局面になったとする。かつての考えと、首相になって実行することとが違ってもいいと私は思いますが、しかしなぜ自分は以前の考えとは異なることをするのか、それをメディアや国民に対して明確に説明しなければならない。説明責任というものがあるのが現代です。 
しかし私の扱う時代の男たちはそうではなかった。メディアもなければ有権者も支持者もいない。ですから、十字軍を記録した年代記はたくさんあっても、なぜこんな風に行動したのかという説明がない。私にとって歴史を書くということは、当時の人間にかわってそれを説明するということなんです。何を考えたのか、なぜその選択肢を選んだのか。そういった説明責任を、当時の人間にかわって果たそうと思いながら書いています。
単に「情報」という面から言えば、インターネットの発達のおかげで、私よりも読者の方がより多くの情報を入手しやすいかも知れない。しかし、客観的な情報だけを並べれば真実に迫れるわけではない。いま歴史の共同研究というのが盛んですが、しばしば両論併記というところに落ち着くことがあります。一見客観的なようですが、私には無責任な態度に思えます。こうだと思ったことを、責任を持って明確に書くのが作家です。
――『十字軍物語1』では、十一世紀末に始まる第一次十字軍が語られるわけですが、さまざまな思惑が複雑に絡んで、決して聖なる戦いとは言いきれないのが面白いですね。
第一次十字軍というのは、十字軍の歴史のなかで、唯一勝った戦争なんです。ですから重要度も飛躍的に高く、西洋側の文献では圧倒的にこの第一次十字軍についての言及が多い。そしてその始まりにおいては、領土が欲しいという現世的な野心が根底にはあったかも知れません。しかし同時に、聖なる動機もたしかにあった。ですから、単なる侵略戦争だったと片づけるのも違う。そういう複雑な面白さがあります。
これから第一次十字軍を皮切りに、いかにして戦いが展開され、どうやって最終的に破綻するのか、そしてその後、世界はどうなったのか、そういう話を書いていくことになります。
総体として見れば、十字軍というのは西洋側にとって、負けた戦争なんですね。しかし負けた戦いから学ぶという態度がヨーロッパにはあった。これはヨーロッパ側の確固たる美点です。この頃から「大学」というものが都市を中心に誕生し始めるのですが、そこでは「イスラム学」とでもいうような講座もできてくる。ところが勝った側のイスラムはどうでしょう。「アラーのおかげ」という以上の探究心を持たなかったように思うのです。人間というのは一度勝ってしまうと、そういうものなのかも知れません。 
ある古代ローマ史の先生がローマにいらした折に、「千年の眠り」という焼酎をお土産にいただいたことがありました。われわれは二千年前の古代ローマを研究しているのだから、この焼酎をダブルでいただきましょうって、笑って話し合っていたんです。今回もまさに「千年の眠り」から、中世の男たちを呼び覚ましていくわけです。『眠れる森の美女』とは男と女が逆になっちゃうけど(笑)。眠りの中にある男たちを呼び覚まし、そして二十一世紀の、しかも異文明のわれわれ日本人の前で、生き生きと動いてもらう。どうぞお愉しみに!

(しおの・ななみ 作家)

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