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会社の愛し方、教えます――ダメ社員の奮闘を描く、共感度120%の熱血青春小説!

北海タイムス物語

増田俊也/著

1,836円(税込)

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発売日:2017/04/21

読み仮名 ホッカイタイムスモノガタリ
装幀 一丸/装画、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 431ページ
ISBN 978-4-10-330073-1
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,836円

全国紙の採用試験に落ち、北海道の地方紙に入社した記者志望の野々村。破格の低賃金、驚異の長時間労働、超個性的な同僚たち……しかし、新たな世界での出会いが彼を変えていく。『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』『七帝柔道記』の著者が、休刊した伝説の新聞社を舞台に仕事人たちの魂のぶつかり合いを描く、お仕事小説の新たなる金字塔。

著者プロフィール

増田俊也 マスダ・トシナリ

1965年生まれ。北海道大学中退。愛知県立旭丘高校から七帝柔道に憧れて北大に入学。4年生の夏の七帝戦を最後に引退し大学を中退、北海タイムス社記者に。2年後に中日新聞社に移る。中日在職中の2006年『シャトゥーン ヒグマの森』(宝島社)で「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞しデビュー。2012年『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)で大宅賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。2013年、北大時代の青春を描いた自伝的小説『七帝柔道記』(KADOKAWA)で山田風太郎賞最終候補。他著に『VTJ前夜の中井祐樹』(イースト・プレス)など多数。2016年春、四半世紀勤めた中日新聞社を早期退職し、本格的な作家生活に入った。

書評

泣けた、笑えた六倍明朝

鵜飼哲夫

 アカデミー賞から芥川・直木賞まで、洋の東西を問わず賞の贈呈式の挨拶には定番がある。「賞は自分だけの力ではありません。多くの人のお蔭です」。その通りだろう。助演なくして主演は光らず、カメラマン、音響、衣装係など裏方がいなければ、どんなすごい映画だって生まれない。
 とはいえこの世には、陽の当たる仕事と縁の下の力持ちがいる。警察小説では刑事が活躍し、新聞記者ものでは事件記者が主役になる。事件の謎解きあり、追いつ追われつ手に汗握る展開があり、主人公は八面六臂――。結果として裏方には日が当たらない。哀しい現実、淋しい常識である。
 しかし、常識を覆すのが真のニュース、優れたフィクションだ。元記者である増田俊也氏の小説『北海タイムス物語』は、かつて北の大地に実在した新聞社の整理部という、日の当たらない内勤職場を舞台にした、いっけん地味ながら、「みなさんのお蔭です」という思いが文字通り伝わる熱いお仕事小説、業界小説であり、青春小説である。
 整理部は、政治部や社会部の記者が書いた原稿のニュース性を判断し、見出しをつけ、紙面レイアウトをして新聞という商品にする編集局の心臓部。ではあるものの、夜討ち朝駆けし、スクープを狙う一線記者の派手さはなく、入社早々に整理部に配属された野々村巡洋はくさってしまう。しかもかつては北海道新聞と並ぶ名門だった北海タイムスは、部数減が止まらず落日の一途、仕事量が多いのに給料は普通以下の以下で、むちゃくちゃ安い。やってられるか!
 それでも、ニュースに待ったはない。野々村は社会面整理の助手として月月火水木金金、夕刊帯から朝刊帯まで一日中、締め切り時間に追われまくる。技術もなければ教養、体力もない。必死に考えた見出しも、上司から両手で丸められ、ゴミ箱にポイ。非力、無力、脱力……。力はすべてマイナスに働き、おまけに失恋までして心はどん底だ。
 希望しない職場に配属された新人君、慣れない仕事に戸惑っている新人さんにとって、小説の前半は、わかる、わかる、の連続だろう。記者も、読売新聞で五年間支局生活をしてから三年間、昭和が平成に変わる時期に整理部でよく愛のムチを受けていたから本当に身にしみた。
 だが、新入社員諸君! 落胆するのは早過ぎる。「仕事っていうのはな、恋愛と同じなんだ。(略)おまえから抱きしめないかぎり、仕事の方もおまえを見てくれないぞ」と小説の上司が語るように、好きになると面白くなり、工夫をしたくなる、それが仕事だ。
 整理部の仕事だって奥が深い。より正確にわかりやすく、面白い記事にするために、社会部など出稿部のデスクと渡り合い、時に丁々発止とやり合う。制作部門から印刷まで、紙面作りに携わる様々な部署と連絡、調整もする。つまり社外でネタ基に取材する代わりに、社内の各セクションに取材し、新聞の完成品をつくる扇の要の位置にいるのだ。
 そんな地味で凄い仕事の面白さと新聞人の喜怒哀楽を、著者は、悠々として急ぎながら、遊び心をもって大胆かつ繊細に描き、主人公の心を少しずつプラスに変えていく。仕事に厳しい先輩からのマンツーマン指導を受ける場面では、「初心忘るべからず」と襟を正した。ラストで野々村記者が、社会部や印刷、制作など職場仲間の声援を受けながら、一人で社会面の紙面設計する場面は圧巻、涙なくしては読めなかった。
 著者は北海道大学中退後、一九八九年に北海タイムスに入社、整理部などを経て中日新聞に転職し、報道部の記者となり、『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』で二〇一二年、大宅壮一ノンフィクション賞を受けた。受賞作は、有名な格闘家の知られざる生涯を追う、これぞ傑作ノンフィクションだったが、一転してマイナーな職場を題材にした本書では、整理記者時代の経験を存分に生かしている。
 整理の仕事は、本書にもあるようによくコックに例えられる。記者の取ってきた新鮮なネタをいかにおいしく料理して客に出すのか、その力量と職人技が試されるからだ。地味なニュースでも、読ませる新聞にするのが整理のプロなのだ。整理という裏方仕事をネタに、新聞づくりの面白さ、みんなで一つのものを作り上げることの喜びを小説にした著者は、まさに名整理。下積み時代の苦労を見事に花開かせた。
 重大ニュースのとき、新聞では見出しに白地ベタ黒の凸版と倍数の大きな活字を使う。この物語は、「裏方だってすごい! 白地ベタ黒凸版、泣けた、笑えた六倍明朝」です。

(うかい・てつお 読売新聞文化部編集委員)
波 2017年5月号より

目次

第1章 雪の舞う新聞社
第2章 酒と女と、人事が踊る
第3章 運命の配属先は
第4章 この会社を愛せますか
第5章 肉や刺身が食べたい
第6章 権藤権藤、雨、権藤
第7章 貧しい新聞記者
第8章 殴って会社クビになれ!
第9章 国際マラソンと花火大会
第10章 北海道の短い夏に
第11章 ささやく講義
第12章 さよならなんて言わないで
第13章 北海タイムスとともに

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