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俺のすべてを、クルんでくれ! ヘタレな自分を脱ぎ捨てる着ぐるみ劇団ストーリー。

  • 受賞第23回 日本ファンタジーノベル大賞

吉田キグルマレナイト

日野俊太郎/著

1,620円(税込)

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発売日:2011/11/22

読み仮名 ヨシダキグルマレナイト
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-331471-4
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,620円

ヘタレ大学生スーツアクター・水野葉一が拾われたのは、変人揃いの鞍馬からかさ一座。この劇団の着ぐるみキャラには、なんと……選ばれし者を見抜く“力”があった!? ライバル劇団との大勝負を懸けた大晦日のパレードで、主役に抜擢された葉一の「葉隠吉田丸」が弾け舞う。京都郊外を舞台に繰り広げられる最高に幸せな青春小説!!

著者プロフィール

日野俊太郎 ヒノ・シュンタロウ

1977(昭和52)年、東京都八王子市生まれ。京都府育ち。京都大学文学部卒業。等身大の人形劇団で役者や脚本を担当した経歴を持つ。

目次

第一章 ☆ 悶絶ヒーロー
第二章 ☆ 吉田スタジオパーク
第三章 ☆ 鞍馬からかさ一座
第四章 ☆ 三人の悟空
第五章 ☆ いざ! 初舞台
第六章 ☆ 御前会議
第七章 ☆ 三大老
第八章 ☆ 吉田丸
第九章 ☆ 決戦の火蓋
第十章 ☆ キグルマレナイト

インタビュー/対談/エッセイ

波 2011年12月号より 第二十三回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作 『吉田キグルマレナイト』刊行記念インタビュー 「最高の幸せ」を描こう

日野俊太郎

――初めて書き上げた小説が、“パートナー”を選ぶ不思議な着ぐるみの物語。着ぐるみ劇団には、実際に所属していた時期もあるそうですね。
劇団を立ち上げ自分でプロデュース公演をやったりしていた時、よくある話ですがお金の問題で行き詰まり、そこに着ぐるみのアルバイトが来たんです。現場は東映太秦映画村。「被り物」と聞いていたので、てっきり時代物だと思っていたら、なんとお子様ショーでした。「お友だち」が拳を振り上げて、アンパンマン体操を踊っている……。でも、舞台上での基本的な技術を学べるのが嬉しかった。そして、客層は若いけれども素晴らしいコール・アンド・レスポンスがある。大学ではバンドもやっていましたが、「お友だち」に呼びかけて返ってくる「ごーんにっぢばーっ!」は、学生バンドでは望むべくもない。これはすごいロックだぞ、と(笑)。
着ぐるみ劇団一本では食えませんでしたが、三十歳までは好きなことを全部やってみようと思っていました。高校生の頃でしたか、中島らもさんに没入しまして、らもさんも最初はコピーライターとして世に出て、演劇をやったり。ああいう自由に憧れました。いろいろやりましたよ、京言葉の教則本の“ネイティブスピーカー役”とか。ちょうど就職氷河期で、でもそれを逆手にとれば正社員にならずとも何とか恰好がつく。「何やっとんじゃ」という感じかもしれませんが、僕にとってはラッキーでした。
――では、小説を書き始めたきっかけは?
三十歳を過ぎ着ぐるみの仕事からも離れることになり、自分の中で踏ん切りをつける必要がありまして、書かずにいられない衝動を何か形に残したくて。結局、自分にとって一番自由な設定で描けるのは小説なのかなと。最初は私小説的なものを書いてみたんですけど、「こんな話、誰が読むねん」と断念(笑)。むしろ「最高の幸せ」を描こうと思って書き出したのが、『吉田キグルマレナイト』でした。
京都で育ち、土地の持っている不思議な力にとても魅力を感じていて、舞台を京都にすることに迷いはありませんでした。日常と地続きで非日常、幻想的な世界が息づいている感じがするんです。他の場所では「歴史」になってしまっているものが、そのへんを歩いている人の中で生きているような。高校の同級生が「僕の先祖は坂田金時やねん」と普通に口にしますからね。架空のテーマパークを設定した吉田山は、あまり通ってもいないくせに自分の大学(編集部註・京都大学)の近くだということで勢いで書きましたが、着ぐるみ劇団の本部がある鞍馬には、「洛中を追い出された人々が溜まる場所」というイメージを重ねています。
――登場人物も演劇で知り合った人々がモデルですか?
特定のモデルはいませんが、書き終えてから「あの時、あの人はこんな気持ちだったんだろうな」と気付くことは、いろいろとありました。お芝居の神様なのか何なのか、ともかく何者かに「自分は選ばれた」と体感すること――演じることをめぐる最高の幸せは、芸事の残酷さと裏表だと思うんです。いくら努力をしても報われない人もいれば、努力せずとも華を持っている人がいる。作品の中で着ぐるみに「選ばれた人」と「選ばれない人」を敢えて描いたのは、実際にそれを、まざまざと見せつけられてきたことが背景にあります。
この作品をお読み頂くことで、脚光を浴びない仕事の大切さにも光があたったらいいなと思います。恩返しのつもりで書いたわけではないのですが、世間ではキツい裏方仕事のイメージがあるスーツ・アクターは、むしろ「選ばれた人」の仕事なのだと。もちろん裏方の人々だって、照明さんなら照明さんとして「選ばれる」瞬間があるはずです。芸事をやっていると、そういう仲間ができる。本番が始まると「あ・うん」の呼吸、終わったら「またいつか板の上で会いたいね」。職人的な泥臭い人間同士のつながりは、これから書いてゆく小説でもきっと描くことになると思います。

(ひの・しゅんたろう 作家)

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