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若菜17歳。青春真っ最中の女子高生と、三世代女系のてんやわんやの家族の物語。

乙女の家

朝倉かすみ/著

2,160円(税込)

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発売日:2015/02/20

読み仮名 オトメノイエ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 398ページ
ISBN 978-4-10-332342-6
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 2,160円
電子書籍 価格 1,728円
電子書籍 配信開始日 2015/08/07

内縁関係を貫いた曾祖母、族のヘッドの子どもを高校生で産んだシングルマザーの祖母、普通の家庭を夢見たのに別居中の母、そして自分のキャラを探して迷走中の娘の若菜。強烈な祖母らに煽られつつも、友の恋をアシスト、祖父母の仲も取り持ち大活躍の若菜と、それを見守る家族。それぞれに、幸せはやって来るのか……。

著者プロフィール

朝倉かすみ アサクラ・カスミ

北海道生れ。2003(平成15)年に「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞を、2004年に「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞。2005年、『肝、焼ける』で単行本デビュー。2009年に『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞した。他に『ロコモーション』『夏目家順路』『声出していこう』『てらさふ』『地図とスイッチ』『恋に焦がれて吉田の上京』『静かにしなさい、でないと』『少しだけ、おともだち』『満潮』『遊佐家の四週間』『乙女の家』など著書多数。

書評

波 2015年3月号より 「だれか探し」の行方

青衣茗荷

朝倉かすみは、腹にたまる作家だ。腹におちた言葉がからだのなかで活発に動く。だから、朝倉かすみの小説を読むときはいつもからだが動く。ごろごろと転がったり、立ち上がったり、朗読したり、じっとしていない。今作も、からだをあそばせながら読んだ。
主人公・若竹若菜は高校二年生。両親は二年前に別居し、母・弟とともに祖母の家で暮らしている。けれど平日の夕飯は父も一緒に過ごす。別居の際に母が「夕ごはんは家族そろって食べること」という条件を出したからだ。静かに淡々と過ぎる「平日の儀式」。若菜は母を「かたちというもの」を「重んじる傾向」の人だと思う。
若菜は自分を「付和雷同型」だと思う。自分を主張することなく「水中をただようクラゲ」のように「友だちや、家族のあいだで、ぷかぷか浮かんでいるだけ」。だから若菜は「他者」に対して「特徴」を持たせる「新しい人物像」を欲していた。それは「他者が目にする『若菜というひと』」の「イメージ」であり、決して「自分」が「主体」となるものではない。若菜は「若菜のなか」でも「他者」のなかでも「チャーミングな脇役」でありたいと思い、その「キャラ」を探している。「じつはひそかに」自分探し、ならぬ「『だれか探し』の真っ最中なの」だ。
そしてある日若菜は、以前から気になっていた、「直球の文学少女キャラ」である図書委員の同級生・高橋さんに声をかける。高橋さんもまた、キャラにこだわって生きていた。知り合って一か月後、それぞれの理由を胸に、ふたりは一緒に家出を決行する。
若菜と高橋さん。「キャラ」にこだわるという点では同じだけれど、高橋さんの「キャラ設定」は若菜とは対照的で、あくまで高橋さんの「内側」にあるものが基盤となっている。だから高橋さんはいつでも、高橋さん然、としている。若菜と高橋さんが、会話と行動を重ね、お互いに新鮮な刺激を受けながらだんだん、いいコンビ、になっていくのが気もちいい。
若菜の家族には、波乱万丈な女性たちがいる。ながく曾祖父の「愛人」のような立場だった曾祖母・和子、一六歳で妊娠し高校を中退した「元ツッパリ」祖母・洋子、ふたりを反面教師に「普通」にこだわってきた母・あゆみ。今なお三人は「乙女」のように浮き足立つ女心をもっている。
そんな祖母たちや高橋さん、そしてクラスメイト、バイト先のおばちゃんなど、若菜に関わる多くの人との時間のなかで若菜が感じる、ざわざわ・ざらざらした心の感触。それは若菜だけが感じる「他者」との摩擦音だ。若菜はその音に心を澄まし、言葉にする。ときにそれが不快なものや疑念であっても、若菜はなぜ自分がそんなふうに感じるのか、考える。自分の心のなかのいろんな場所を行ったり来たりしながら。
物語は、その音に応えながらすすむ若菜の姿を中心に描かれる。家族や友人のあらゆる事情のなかで若菜の「キャラ」はどんなふうに変化するのか。「だれか探し」の行方はどうなるのか。
わちゃわちゃした祖母たちのおしゃべりや、高橋さんとの会話、四世代にまたがる家族ドラマを楽しみながら、くるくるまわる若菜の「内側」の変化に引きこまれる。そして、若菜が、いま「自分」はどこにいるのかを確かめながら、周りの人々と過ごす姿に、時折胸をうたれる。ひとりで生きているわけがない、「他者」という景色に映りこむ、あらゆる自分の姿を、軽やかに肯定していきたい、と思うのだ。
若菜が、自分の思いや考えたことを記すノートがある。表紙に書いたタイトルは「WTC」。「ワカナノトチュウ」のアルファベット表記の略だ。一七歳の若菜の「途中」の言葉、考え、思い。自分はいま、ここまで分かった、ここまで考えた、という「途中」のページ。それはこれからどんどん増えるだろう。若菜の人生はまだ続く。その先をわたしは知ることはできないけれど、どうか、若菜にとって多くの時間が、すとん、と腑に落ちるようなものであるように、と思う。

(あおい・みょうが イラストレーター)

目次

第1章 家出してみよう
第2章 多忙になってみよう
第3章 病弱になってみよう
第4章 告白してみよう
第5章 遠くをながめてみよう

判型違い(文庫)

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