昭和二十七年、松坂熊吾は中之島の三階建てのビルに、一階は雀荘、二階は中華料理店、三階は消火用ホースの修繕を請け負うテントパッチ工業株式会社を設立し、多角経営に乗り出した。
曾根崎小学校に入学したばかりの伸仁は堂島川、土佐堀川を遊び場として、ポンポン船の船頭夫婦、沖仲仕、近所の商売人、そしてやくざ者までも知り合いにして、逞しく伸びやかに育っている。
南宇和から、熊吾の妹タネ、母ヒサ、姪千佐子が上阪し、尼崎に移り住む。タネはやくざまがいの男と同棲し、老母ヒサをないがしろにしはじめた。ヒサの面倒は房江がみるようになったが、一瞬、目を離した隙に、ヒサは突如、姿を消してしまった。離婚した麻衣子、丸尾千代麿の隠し子とその曾祖母、伊佐男の子を産んだヨネ、城崎で女と子供ばかり五人の奇妙な同居生活がはじまる。新しく、きんつばの製造販売業も起こし、一見、熊吾の事業は順調に展開していくかに見えたのだが……。