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あなたが描く「刑事」のイメージに、この小説は、革命を起こす。これが本当の「刑事」だ!

新任刑事

古野まほろ/著

2,376円(税込)

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発売日:2017/05/31

読み仮名 シンニンケイジ
装幀 広瀬達郎(新潮社写真部)/写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 502ページ
ISBN 978-4-10-332744-8
C-CODE 0093
ジャンル ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
定価 2,376円

六年目、28歳、新人刑事。同期なのに先輩の女性刑事は優秀すぎるし、やらないといけないことも多すぎる――。でも、がんばります、市民のみなさまのために! と思っていたら、時効目前の犯人、目撃情報が。どうなる、僕? テレビや小説で無視されてきたディテイル満載。元キャリアの著者だから描けた超絶リアルな警察小説!

著者プロフィール

古野まほろ フルノ・マホロ

東京大学法学部卒。リヨン第三大学法学部第三段階「Droit et Politique de la Securite」専攻修士課程修了。フランス内務省より免状「Diplome de Commissaire」受領。なお学位授与機構より学士(文学)。警察庁I種警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官。2007(平成19)年、『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受賞し、デビュー。有栖川有栖・綾辻行人両氏に師事。他の著書に、『新任巡査』、『復活』、『ぐるりよざ殺人事件』、『禁じられたジュリエット』などの小説、新書に『警察手帳』、『残念な警察官』がある。

書評

中毒必至の緻密さがもたらす濃厚なスリル

村上貴史

 古野まほろ――『天帝のはしたなき果実』という、斬首死体やら暗号やら七不思議やらを詰め込んだ学園ミステリ巨篇(というかそれを超越したもの)でメフィスト賞を受賞し、2007年にデビューした作家である。その後、この作品をシリーズ化しつつ、様々な他のシリーズ作品や、『池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟』(文庫化に際してこう改題)などのノンシリーズ作品を精力的に執筆してきた。
 そんな彼が、男女2人の新人の巡査を主役に据えたミステリを発表したのは、2016年のこと。『新任巡査』と題されたその長篇は、とにかくとことん克明に巡査の姿を描いた類例のない1冊であった。その克明ぶりは新人巡査の1日(大きな事件には遭遇せず、交番勤務をしている1日だ)を300頁以上も費やして語るという程だ。その1日の描写が終わった段階で本のほぼ7割まで進んでしまう異常な構成の1冊だが、そこに記された警察知識の質と量に、そしてそれを新任巡査と先輩たちとのやりとりなどを通じて読者に的確に伝えていく手腕の巧みさに心をグイと掴まれ、夢中になって読まされてしまう(さらに物語がそこからミステリに化けていく醍醐味も堪能できる)。
 古野まほろは、何故これだけ警察のことを深く詳細に知っているのか。答えはシンプルで、彼はかつて警察の一員だったのだ。東大法学部からフランス留学を経ての警察入り。いわゆるキャリア組で、交番勤務経験もあれば警察大学校での主任教授経験もある。そんな経歴の人物が、その知識と経験を解き放って著したミステリが『新任巡査』だったのだ。
 いささか前置きが長くなったが、いよいよ本書『新任刑事』である。前作とスタイルは重なるが、内容は独立している。前回同様、男女2人の同期生が活躍する物語で、主な視点人物は、男性の新任刑事、28歳の原田貢である。
 原田貢は、愛予県の筆頭署である愛予警察署の刑事第1課強行係に抜擢された。愛予で起きた大事件――愛予県の重要人物を死に追いやって指名手配された渡部美彌子の事件――が3ヵ月後に時効を迎えようとしているタイミングでの異動だった。強行係で彼は、警察学校の同期であり、現在は貢より出世して巡査部長の地位に就いている上内亜梨子の下で、渡部美彌子事件の捜査を含む刑事として活動を始めることとなる。初日はまず、首吊り事件の捜査だった……。
 首吊り事件の現場で彼がたたき込まれたのは、そう、事件性の判断という基礎であり、また、死体見分報告書をはじめとする書類の書き方であり、そこに書くべき内容を把握するための刑事としての観察の重要性であった。「上から下へ」「毛髪から爪先まで」、あるいは「失禁・脱糞・漏精」や「直腸温測定」などなど。警察署に戻ってからも学習は続き、さらに溺死事件や放火事件に駆り出されたりもする。そしてそのたびに大先輩たちやアリスから、数々のことを学び、それを通じて、観察すること、観ようとする気持ちの大切さを知るのだ。こうした刑事の現場における学びの緻密な描写は、まさに『新任巡査』で味わった興奮と共通する。古野まほろの警察ミステリに読者が期待する魅力は、期待通りのかたちで(数々の捜査関係書類の形式や、そこで使われる言葉遣いの専門性など、読者の知識をはるかに凌駕するという期待通りのかたちで)、この小説に宿っているのだ。
 そうやって貢の成長を綴る本書は、徐々に渡部美彌子事件の真相究明へと軸足を移していく。10年前に一体何があったのか。愛予県で目撃された渡部美彌子に似た女性とは何者なのか。貢たちの捜査もやはり徹底的に緻密に描写され、その進展と同時に時効を巡るタイムリミットのサスペンスも増していく。そこに、警察の組織の問題(例えば組織の相違や、それと密に関連する出世や保身の意識)が絡み、捜査を思うように進められないもどかしさが募る……。
 いやはや実にスリリングだ。不思議なもので、序盤は緻密さを魅力と感じつつも、読み進むにつれ緻密さに慣れ、結果として緻密さが生み出す濃厚なスリルを自然体で堪能できるようになっている。それが故に、結末で明かされるいかにもミステリらしい真相と驚愕を満喫できるのだ。
 古野まほろの『新任刑事』。中毒必至である。

(むらかみ・たかし 書評家)
波 2017年6月号より

目次

序章―― 美彌子/東/亜梨子/貢
第1章 三箇月前
第2章 二箇月前
第3章 一箇月前
第4章 三日前
終章―― 美彌子/刑事部屋/署長室

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