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ここに生まれて生きていく。喜怒哀楽、フル回転! そして人生はつづくのだ……。

  • 受賞第11回 R-18文学賞

ハンサラン 愛する人びと

深沢潮/著

1,836円(税込)

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発売日:2013/02/22

読み仮名 ハンサランアイスルヒトビト
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 287ページ
ISBN 978-4-10-333541-2
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,836円

在日のお見合いを仕切る「お見合いおばさん」の福のもとを訪れる親子の婚活の実態と、家族の裏事情。青春・恋愛・夫婦、子育て、そして介護まで……痛くてせつない現実をタフに生き抜く老若男女のリアルな姿を活写する。R-18文学賞受賞作と、書下ろし5編を収録。切実な人生を生きる人びとが愛おしい――連作長編小説。

著者プロフィール

深沢潮 フカザワ・ウシオ

1966(昭和41)年、東京生れ。2012(平成24)年「金江のおばさん」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。受賞作を含む連作短編集『縁を結うひと』を始め『ひとかどの父へ』『緑と赤』など、在日の家族が抱える“答えの出ない問い”に向き合う作品や、現代女性の価値観をテーマにした『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』などがある。

書評

波 2013年3月号より 小さな喜びのありか

白石一文

編集者にも収穫期というのがあるのだろう。
本書を担当したKさんは、私が昨年最も感動した田口ランディ氏の『サンカーラ』を作った人だ。その縁で知り合いになり、この書評を頼まれた。ふだんからエッセイ、書評のたぐいはすべて断っているのだが、Kさんの注文ならばと今回だけは引き受けた。同じく彼女が担当した朝井リョウ氏の『何者』が直木賞を受賞した直後のことだ。
本書を一読して、やはりKさんは編集者として最盛期を迎えているのだと確信した。そういうときは、すばらしい作品が自然に自分のもとへとやって来てくれる。
この『ハンサラン 愛する人びと』は見事な作品である。唖然とするほどに面白かった。
作者の深沢潮氏(女性である)は昨年、「金江のおばさん」でR-18文学賞大賞を受賞している。その受賞作を冒頭に置いて、以降、五本の短編を書き下ろして作り上げたのが、このたびのデビュー作ということになる。
四年前にR-18文学賞を受賞し、受賞作にさらに四本を加えた連作集『ふがいない僕は空を見た』で、あっという間にスターダムにのしあがったあの窪美澄氏と同じような登場の仕方と言ってもよかろう。
それだけ新潮社も力を入れているのだろうが、なるほど、ここまでの筆力であればむべなるかなと納得しないわけにはいかなかった。
在日韓国、朝鮮人のあいだで“お見合いおばさん”として名をはせる金江福(本名・李福先)と彼女を取り巻く在日社会の有り様を克明に描いた作品である。
韓流ブームがすっかり定着した昨今、在日の人々への視線は大きく変わった。『GO』や『パッチギ!』で描かれたような世界観はなりをひそめ(決してなくなったわけではないだろう)、本書でも触れられているように誰もがコリアンタウンに日参し、若者たちは韓国のアイドルに熱狂する時代である。かくいう私でさえ、三日に一度はPSYの「江南スタイル」のPVをユーチューブで視聴して楽しんでいるのだ。
かつてのような差別的な視線からいまの在日の人々はすっかり自由になったかのように、つい我々も錯覚しがちだ。しかし、事は当然ながらそう単純ではない。本書の各編を読むと、本国の生まれでもなく、さりとて日本人でもない彼らの微妙な立場が、婚姻という最も機微に触れる世界を舞台にありありと描き出されている。その意味ではまったく新しい在日文学の出現と言っても差し支えないのではなかろうか。
しかしそうした堅苦しいことは抜きにしても、この小説は掛け値なしに面白い。
夫が総連の職員だったがゆえに、一人息子を北に送ってしまった福は、縁結びの恩人として数多の同胞子女の結婚式に招かれながらも我が子の式には行くことができなかった。それどころか数年前から息子の消息さえつかめなくなっている。そんな彼女がめあわせたそれぞれのカップルが、各編の主人公として、在日ゆえの、または人間ゆえの様々な悩みに翻弄されていく。
そうしたなか、やたらと親族集まっての儀式が多い在日家庭の日常が、台所からの視点で丹念に、しかもどこかしらユーモラスにつづられている。いつの世、どの国でも習俗や暮らしを支えているのは女性たちなのだと痛感させられるが、そこへ注がれる作者の目線は冷静で、かつ精緻である。それがこの小説のリアリティーをなお一層高めてくれている。
そして、各編を読み重ねていくうちに、読者は、人種や国籍などとかかわりなく、誰もが抱えている人生のつらさと、そのつらさを乗り越えてこそ手に入れることのできる小さな喜びのありかに目を向けざるを得なくなっていく。そうした点でも、本書は実に見事な傑作なのである。

(しらいし・かずふみ 作家)

目次

金江のおばさん
四柱八字(サジュパルチャ)
トル・チャンチ
日本人(イルボンサラム)
代表選手
ブルー・ライト・ヨコハマ

判型違い(文庫)

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