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殺すから鬼になるのか。鬼になったから殺すのか……。教えてくれ。この復讐は、いつ終わる?

武士喰らい

矢野隆/著

1,728円(税込)

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発売日:2013/05/22

読み仮名 ブシクライ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-334071-3
C-CODE 0093
ジャンル 歴史・時代小説
定価 1,728円
電子書籍 価格 1,382円
電子書籍 配信開始日 2013/11/08

主君、父、兄弟、そして妻。戦場での突然の裏切りにより、全てを失った小次郎。男に残されたのは、復讐の道だけだった。命じられるまま仇討ちを繰り返しているうち、「武士喰らいの黒鬼」と恐れられるようになる。だが、小次郎は知らされてはいなかった。その殺戮に隠された真の目的を。そして、本当の仇が誰なのかを――。破天荒かつ号泣必至。ことし一番の戦国綺談!

著者プロフィール

矢野隆 ヤノ・タカシ

1976年福岡県生まれ。2008年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。以後、奇想とリーダビリティを兼ね備えた時代小説や史実に材をとった歴史小説を中心に、多くの作品を刊行。小説以外にも、『NARUTO―ナルト―シカマル秘伝』『NARUTO―ナルト―イタチ真伝 暗夜篇/光明篇』『戦国 BASARA3 伊達政宗の章』『鉄拳 the dark history of mishima』といった大人気マンガ、ゲームのノベライズ作品も執筆している。他の著書に『武士喰らい』『我が名は秀秋』『弁天の夢 白浪五人男異聞』『覇王の贄』『信玄の首』などがある。

書評

波 2013年6月号より 読め、しかして刮目せよ!

細谷正充

復讐は、エンターテイメントの、重要なテーマのひとつである。アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』の時代から、復讐を題材にした作品は書き継がれてきた。その最新の成果が本書だ。時代小説界の気鋭・矢野隆は、圧倒的な筆力と、興趣に富んだストーリーにより、新たなる復讐譚を創り上げたのである。
戦国の筑前に、二十万石の領国を有する大巌家があった。その大巌家の家老をしている津久茂直澄には、三人の息子がいる。次男の小次郎は、強力な長男の太郎と、智謀の持ち主の三男・精三郎に挟まれ、今ひとつ、自分に自信を持てないでいた。しかし父や兄弟、妻に囲まれた生活に満足している。そんなとき、大巌家の主筋に当たる我妻家と戦になった。だが、両家の軍がにらみ合う中、大巌家の重臣たちが、次々と敵に寝返る。裏切り者の情けにより、かろうじて戦場を生き延びた小次郎だが、父と兄は死に、大巌家も滅びてしまった。
それから五年。我妻家に仕える旧大巌家の武士たちが、武士喰らいの黒鬼と呼ばれる異形の男に、次々と惨殺された。その“鬼”こそ、薬師の乱阿弥によって、兄の手足を移植された小次郎であった。何やら事情のあるらしい乱阿弥と娘の包の世話になりながら、復讐を遂行しようとする小次郎。ところがある人物の登場により意外な事実が明らかになり、彼の復讐は思いもかけない方向に捻じれていくのだった。
さて、粗筋で戦国の筑前と書いたが、どの時代のどの場所と、はっきり作中で明記されているわけではない。冒頭に掲げられた『大巌家伝陪臣ノ部津久茂家条』により、いかにも実在した場所や人物のように感じられるが、すべては作者の創作である。その意味では戦国小説ではなく、戦国ファンタジーといった方が、いいのかもしれない。実在の戦国武将を主人公にした『西海の虎 清正を破った男』を、既に上梓している作者である。もっと史実に寄り添った書き方も出来ただろう。でも本書では、それと反対の手法を採用している。なぜか。理由のひとつは、物語の自由度だ。
死んだ兄の手足を移植された小次郎だが、拒否反応のようなものがあるらしく、痛みを押さえるために針を打っている。だが、そのため痛みを始めとする身体の感覚がなく、記憶も混濁している。まるでゾンビのような状態の小次郎は、槍や刀の破片を埋め込んだ“不浄”という名の棒を武器に、かつての裏切り者を狙い、立ち塞がる侍たちを、かたっぱしから殺しまくる。その様はチャンバラというより、スプラッタだ。過剰にして過激な殺戮の宴は、虚構の色が強い舞台設定だからこそ、実現したといっていいだろう。
もうひとつの理由が、人間の感情の普遍性を表現することだ。愛する人々を殺した相手に、恨みと憎しみをぶつけたい。法律により復讐が禁止されている、現代の日本人でも、状況によっては容易にこのような感情を抱く。なぜなら復讐とは、人間の持つ、プリミティブな情動なのだから。しかし一方で小太郎は、復讐という行為に疑問を抱き、懊悩する。これもまた人間ならではの感情である。復讐者の揺れる心は、この手の物語の定番であるが、それだけに小太郎がどのような道を選ぶのか、ドキドキしながら読み進めることになるのだ。
しかもそこに、捻りの効いたストーリーが絡んでくる。ネタバレを避けるため、詳しく書けないのがもどかしいが、中盤である人物が登場してから、次々と意外な事実が明らかになる。その果てに小次郎は、五年前の大巌家滅亡の裏に潜んでいた、驚くべき真実を知ることになるのだ。血みどろアクションを描き切る豪腕ぶりと同時に、巧みな筋立ても、高く評価できるのである。
そしてすべてを理解したことにより、小次郎の復讐は、さらなるステージに突入する。本来、復讐の原因は取り返しのつかない過去にあり、必然的に後ろ向きにならざるを得ない。しかし作者は鮮やかな展開により、小次郎の復讐を、未来を切り拓くための行為へと変容させた。ここに本書の、最大の魅力が屹立している。『モンテ・クリスト伯』の有名なラストの一行を捩って“読め、しかして刮目せよ!”といいたくなる、斬新な復讐譚が、ここに誕生したのだ。

(ほそや・まさみつ 文芸評論家)

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