ホーム > 書籍詳細:学級崩壊立て直し請負人 菊池省三、最後の教室

どんなに荒れた子供でも、クラスの誰一人、絶対に見捨てない! 本邦初公開、菊池メソッド実践編。

学級崩壊立て直し請負人 菊池省三、最後の教室

吉崎エイジーニョ/著

1,296円(税込)

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発売日:2015/08/07

読み仮名 ガッキュウホウカイタテナオシウケオイニンキクチショウゾウサイゴノキョウシツ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 255ページ
ISBN 978-4-10-334362-2
C-CODE 0095
ジャンル 教育学
定価 1,296円
電子書籍 価格 1,037円
電子書籍 配信開始日 2016/02/12

北九州市の公立小学校で、崩壊した学級を次々と立て直してきた “スゴ腕”教師・菊池省三。「ほめ言葉のシャワー」「成長ノート」など「言葉」を重視した独自の授業は、果たして、どんな子供も変えられるのか――。クラス全員の成長を目指した教師生活最後の2年間に、29年前の教え子が密着。渾身の教育ドキュメント。

著者プロフィール

吉崎エイジーニョ ヨシザキ・エイジーニョ

1974年生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学外国語学部)朝鮮語科卒業。北九州市出身。小学校6年生の時の担任が菊池先生だった。2013年、先生との共著『学級崩壊立て直し請負人 大人と子どもで取り組む「言葉」教育革命』を刊行。「Number Web」「週刊プレイボーイ」などに執筆するほか、韓国語での取材・執筆活動も数多く行う。著書に『メッシと滅私 「個」か「組織」か?』『オレもサッカー「海外組」になるんだ!!!』『オトン、サッカー場へ行こう!』など。翻訳書も多数。本名は吉崎英治。

書評

本気の教師、教師の本気

齋藤孝

 北九州の公立小学校で、長年、荒れた学級を次々に立て直してきた菊池省三先生。言葉を重視した独自の授業が全国的に注目を集めていますが、本書は、菊池先生のメソッドが実際に運用されている様子を、二十九年前の教え子である吉崎エイジーニョ氏が二年間にわたって取材した教育ドキュメントです。教師というのは、日々変化していく子どもたちを目の前に、刻々と判断を求められる仕事で、例えば、本書で特にクローズアップされた一人の少年・堀之内孝太くんに対して、叱るのか叱らないのか、強く叱るのか一言だけで伝えるのか。または、叱るとは別のアプローチをとるのか。菊池先生が判断していくその過程が細やかに描かれていくので、読み手が臨場感をもって、先生の実践を体験することができる――それがまず素晴らしいと感じました。
 そのような菊池学級の二年間を読み、改めて、私が考えている教育のスタイルと菊池先生の授業とは、とても近いものがあると思いました。例えば、ほめ言葉のシャワー。毎日のホームルームの時間に、日直の子に対し、その日その子が良かった点をほめていくという、菊池学級独自の「ゲーム」があるのですが、必ずクラス全員一人ずつがほめるとか、ほめられた人は最後に感想を三つ言うとか、そのルールは徹底されています。そして、有無を言わせず学級全体でそのゲームを行っていく。すると、ルールが徹底されているから、照れくささも徐々になくなって、問題行動を起こしていた堀之内くんが、気が付けば人前できちんと挨拶できるようになっているというように、知らぬ間に子どもたちにコミュニケーション力がついていくのです。また、菊池先生は、例えば「十秒で班を作ろう」「グループの皆と十五秒で話し合おう」というように、授業を秒数で区切っていきます。大学生でもなかなかできない秒数=ルールで進んでいく授業、つまりは、言葉を中心にしたパワフルでスピーディーな授業によって、日本人が苦手とされる能力――ディベート力、ディスカッション力、プレゼンテーション力といった力を身につけることも可能にしています。「新しい教育内容」が必要なのではなく、教え方次第で現状でも可能だということを、菊池先生は証明しているわけで、他の先生たちが特に学ぶべき点ではないでしょうか。
 そんな基本姿勢はもちろんですが、読んでいる方に特に感じてもらいたいのは、菊池先生の意識の高さと本気度です。カバー写真の立ち姿だけでも普通とは違う気合いを感じられるのですが、菊池先生は、「この先出て行く公の社会でも通用する人間を育てる」という強いミッションをもって、莫大なエネルギーを発しながら日々子どもたちと対峙しています。「不退転の覚悟」を子どもたちに示している、とも言い換えられるのですが、かつて吉田松陰が弟子たちに対してそうだったように、まず教える側が覚悟を決め、相手に対して本気で立ち向かうというのが教育の基本であり、何より大切なことだ、と。そして、三十人のクラスならば三十人全員のちょっとした変化を見逃さず、「クラス全体を見ているよ」という強いメッセージを常に出し続けることによって、子どもたちの方にも、覚悟を求めていくのです。子どもは純粋ですから、そのエネルギーに最初は驚きながらも、教師の本気を瞬間的に察知するので、「この人の言うことは聞かないといけない」と思うようになる。たとえ穏やかに話していても、子どもにとっては「怖い先生」であるという、今の教育が失いつつある側面を、菊池先生は実現しているわけです。
 そして菊池先生は、大人と子どもの区別をつけません。「一人も見捨てない」「一人が美しい」など、自己形成を支える「価値語」(菊池先生の造語で、その時々で教室のなかで流行らせたい言葉のこと)を決めて、それをクラスの目標にします。小学校高学年には難しい言葉だとしても、です。それらの「価値語」は、これから社会へ出ていく子どもたちへの、先生からの「言葉の贈り物」とも言えるでしょう。それらを子どもたちがしっかり受け止めている様子も、よく伝わってきました。
 菊池先生にとって最後の教室となった二年間を、かつての教え子が本にしたということもですが、舞台同様、ライブ空間で行われるため、活字で記録され難い教育というものが、きちんと「作品化」されたことが、この本の何より素晴らしい点だと私は感じています。(談)

(さいとう・たかし 明治大学文学部教授))
波 2015年9月号より

目次

まえがき
序章
第1章 五年生 四月・五月 どんな自分も「リセット」できる
四年生時に学級崩壊の原因となった子どもが多く集められた五年一組。中でも堀之内くんは特に手強いという。そんな彼らはどう変われるか――菊池の戦いが始まる。
第2章 五年生 六月から十月 はじめて書いた、感想文
集団のなかで個を育てる――この「授業観」を徹底して子どもたちに示す菊池。すると堀之内くんは徐々に変化を見せ始める。保護者とも初めて連絡がとれるのだが……。
第3章 五年生 十一月 非日常は新しい「公」――学校開放週間
年に一度、一般に対して授業を公開する一週間。多くの参観者が教室を埋めるなか、生き生きと自由に発言する子どもたち。菊池独自の授業が促す「成長」とは。
第4章 五年生 十二月から三月 「ぼくは、みんなに追いつきたい」
この時期、菊池はある女子から思いがけない提案を受ける。学級も堀之内くんも、四月とははっきりと違う姿を見せる三学期、確かな手応えを感じていく。
第5章 六年生 四月から十月 中だるみから脱却、二度の晴れ舞台
順調に成長を見せていた堀之内くんだったが、皆の思いを裏切るある出来事を起こしてしまう。しかしその後、二度の「公」の場で、驚くようながんばりを見せ……。
第6章 六年生 十一月から卒業式 全員が成長した、日本一の学級
いよいよ迎えた巣立ちのとき。子どもたちを前に、最後の言葉を伝える菊池。「宝物のような三十四人」との「戦い」を終えた菊池は、ある一大決心をする――。
今、思うこと  菊池省三
おわりに

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