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あの婀娜(あだ)な身体(からだ)が、秘術を尽した機巧(からくり)だとでも!? ドンデン連発の本格ミステリー!

機巧のイヴ

乾緑郎/著

1,620円(税込)

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発売日:2014/08/22

読み仮名 キコウノイヴ
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 287ページ
ISBN 978-4-10-336191-6
C-CODE 0093
ジャンル ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
定価 1,620円
電子書籍 価格 1,296円
電子書籍 配信開始日 2015/02/13

十三層の巨大楼閣に君臨するという噂の遊女・伊武(イヴ)。千年の秘術を求めて彼女を追う幕府配下の機巧師・釘宮久蔵。遷宮と幕府転覆計画の帰趨を見定めつつ、目も綾な衣裳の下、匂い立つ肌の奥で回転を続ける、精緻な歯車の心臓部へと探索は進んでゆく――。連載当初から話題をさらった、エロスの薫る長篇時代ミステリー小説!

著者プロフィール

乾緑郎 イヌイ・ロクロウ

1971(昭和46)年、東京生れ。2010(平成22)年、『完全なる首長竜の日』で『このミステリーがすごい!』大賞を、『忍び外伝』で朝日時代小説大賞を受賞。著書に『鬼と三日月』、「鷹野鍼灸院の事件簿」シリーズ、『ライプツィヒの犬』などがある。

目次

機巧のイヴ
箱の中のヘラクレス
神代のテセウス
制外のジェペット
終天のプシュケー
参考文献
初出一覧

インタビュー/対談/エッセイ

波 2014年9月号より 『機巧のイヴ』刊行記念インタビュー 色香の漂う歯車たち

乾緑郎

『機巧のイヴ』は、謎の遊女・伊武(イヴ)と、からくりの秘術を求めて彼女を追う幕府配下の機巧師・釘宮久蔵が、遷宮や幕府転覆計画が進行するなかで絡み合う物語。著者の乾緑郎さんに、その創作の舞台裏を聞いた。

○この小説の主人公は、ある意味で機巧人形だと言ってもおかしくないと思うんです。著者としては、機巧人形と生身の人間との違いはどこにあると捉えているんでしょうか。
 決定的な違いはない、というのが僕の基本的発想です。何を考えているのか分らないという点では機巧人形も人間も同じだし、解剖していっても心や記憶が見えてくるわけではない。謎の存在という点ではまったく変わりがないんじゃないか。フィリップ・K・ディック原作の映画「ブレードランナー」がそうであったように、対象物が、あるいは自分が真に人間であるかどうかを疑うことって、何も哲学じゃなくても本質的な問いかけですからね。

○作品が電脳的な方向、つまりSFでさんざん描かれた方向に行く可能性もありましたよね?
 感情を持たないという点では疑う余地のない工学的な構造物を使って、逆にどこまで「心」に行き着けるか。そこを小説のモチーフの一つにしたわけです。電脳やバイオテクノロジーを使うと、構造物が心や感情を持つ可能性が高まるので面白くない。「心」の部分を、ロスト・テクノロジーとしての機巧、つまりゼンマイ仕掛けの歯車が担うという設定にした理由の一つはそこですが、もうひとつ、強いマイナスの動機が存在するんですよ。
実は僕、ある時までデジタル大好き人間だったのが、急激に醒めてしまって、デジタル世界に対する期待感が全く持てなくなっているんです。ここには小説的可能性がもはやないんじゃないかと。歯車で動く機巧の世界を描いたのも、そんなアナログ回帰の流れかも知れません。

○乾さんは小説家であると同時に劇作家であり、かつ鍼灸師なので、身体のメカニズムやその動きに格別の興味があるんじゃないかと思うんですが。
 芝居の世界には能書き垂れが多いんです。だけど実際に舞台を見に行くと全然たいしたことない場合が多い。つまり思想は嘘をつくけど身体は嘘つかないということですね。ダンスでもミュージカルでもプロレスでも、身体の鍛錬が前提になっているものにはすべて関心がありますが、身体と身体の動きにこそ真実が宿るという思いは常に持っています。この作品では相撲や闘蟋(コオロギ相撲)の世界を使いましたが、原点は身体的ダイナミズムなんでしょうね。闘蟋は中国の文化なんですが、相撲と同じように藩お抱えの蟋蟀力士(?)がいたりすると面白いと思った。さらにそこにも機巧を絡めてゆくと、どんな展開になるんだろうというふうにね。

○今回はイヴという大変に艶めいたキャラクターが登場します。これまでの作品にはなかったタイプですね。
 女性キャラの中ではたしかに初登場です。婀娜(あだ)なキャラですから、エロスが匂い死が匂う。もちろん機巧人形にどこまでエロスを担わせ得るかという挑戦でもあったわけです。ここをどう読んでいただけるか楽しみです。

○舞台は江戸時代を思わせる豊かなディテールに満ちていますが、読み進めれば不思議な点がたくさん出て来る。しかし読者としては、異世界の話とはとても思えないわけですよ。SFっぽい新奇さよりも重厚なリアル感がまさっている。書店ではどのジャンルの棚に置くべきか、悩ましい面がありそうですね。
 個人的には、時代小説って何を書いてもいい自由なジャンルだと思っているんです。この小説、言ってしまえば時代小説を装ったSFなんですが、ミステリー的な、あるいはサスペンス小説的な要素も強い。かと言って僕はジャンル・クロスオーバーを目指して書いたわけでも何でもない。僕の中でそれらは最初から同居しているんです。
現代を舞台にSFをやる時は、結構制約が多くて、嘘っぽくならないよう、突飛にならないよう充分に考えなきゃいけない。意外とハードルが高いんです。そこが時代小説だと、ある制約さえ守っていさえすれば比較的容易に他ジャンルの要素を持ってくることが出来る。時代小説の形って、僕にとっては、他ジャンルとの相性がこの上なくいいものなんです。

○SFと言いながら、幕府と帝との関係など、政治的にも文化的にも真実をズバリ言い当てている印象です。
 書き進めるうち、三話めくらいから世界が拡がり始め、これは天皇のことを書かないと小説が閉じられないなと感じたんです。天帝がオートマタ、つまり機巧であるという設定なのですが、これって一種の不敬小説(笑)。そこに神代のロスト・テクノロジーへの探求という要素を加えた。そうしておいて日本がどういう仕組みで動いているのかという話になってゆく。
こういう展開だと日本を戯画化して描きやすい。天帝をどう描こうかというときに、皇室の存在理由とかを考えるわけですよ。日本の中心は実は空洞だとかよく言われてきましたが、冷静になればなるほど、また歴史を遡れば遡るほどよく分らなくなる。しかし実際の日本史をみても権力側の思惑と絡みやすい存在であることは間違いない。そのへんをカリカチュアライズしてみようと。

(いぬい・ろくろう 作家)

[→]大森 望/半村良を超えた、時代SFの金字塔

判型違い(文庫)

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