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ブッダの声が聞こえる! 悠久のインドの風景の中で読む“慈悲”の教え。

ブッダの言葉

中村元/訳、丸山勇/写真、佐々木一憲/解説

1,512円(税込)

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発売日:2014/08/29

読み仮名 ブッダノコトバ
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 175ページ
ISBN 978-4-10-336311-8
C-CODE 0072
ジャンル 宗教
定価 1,512円

いっさいの生きとし生けるものは、幸福であれ……二千五百年前、ブッダが弟子たちに語った生の声を伝える経典を、日本人の“生活の言葉”に置き換えた中村元博士の訳文から、現代人にも通じる普遍的な教えを抜粋。「人の道」を説く滋味あふれる言葉の数々を、ブッダの足跡を辿って撮影した写真と併せて読む、小さな写真文集。

著者プロフィール

中村元 ナカムラ・ハジメ

(1912-1999)1912年島根県松江市生まれ。1999年逝去。哲学者・宗教学者。東京帝国大学文学部印度哲学梵文学科卒業。文学博士。東京大学名誉教授。日本学士院会員。紫綬褒章、文化勲章、勲一等瑞宝章受章。1970年(財)東方研究会(現・〔公財〕中村元東方研究所)、1973年東方学院を創設。同理事長・学院長。比較思想学会名誉会長。著書に『中村元選集[決定版]』全40巻(春秋社)、『広説佛教語大辞典』全4巻(東京書籍)、ほか多数。2012年、松江市に中村元記念館が開館。

丸山勇 マルヤマ・イサム

1936年東京都生まれ。写真家。日本大学芸術学部写真学科卒業。1976~1978年インドでの取材写真による写真展「釈尊の足跡をたどって」がニューデリーほかインド国内3都市で好評を博し、また同取材写真によってアメリカ・プロフェッショナル写真家協会賞を受賞。著書に『ブッダの旅』(岩波書店)。写真集に『新編 ブッダの世界』、『インド神話の謎』(共に学習研究社)、『禅の世界』(東京書籍)、ほか多数。

佐々木一憲 ササキ・カズノリ

1973年岩手県北上市生まれ。インド思想・仏教学研究者。東京大学大学院博士課程単位取得退学。(公財)中村元東方研究所専任研究員。立正大学、和光大学講師。2010年より1年間、インド政府奨学金給費研究者(ICCR fellow)として、IIAS(シムラー)、The Asiatic Society(コルカタ)にて研究活動に従事。

書評

波 2014年9月号より 生きる力と勇気を授かる

竹田武史

数多ある仏教経典の中でも、ブッダの教えに最も近いとされる原始仏典が、中村元博士の現代語訳によって続々と出版されたのは半世紀ほど前のことである。以来、誰もが、ブッダその人の語った言葉に気軽に親しめるようになった。私自身『ブッダのことば――スッタニパータ』や『ブッダ最後の旅――大パリニッバーナ経』などを何度も読み返してきた。
恵まれた王宮の暮らしを捨てて出家したブッダの悩みが、生老病死の苦しみに満ちたこの世界をどうしたら克服できるか、という問いに発せられていることに共感する人は多いだろう。なぜなら文明社会が抱える様々な問題も、突き詰めればすべて生老病死の苦しみに行き着くわけで、ブッダの問いは人類にとって永遠のテーマともいえるからだ。
ブッダの悟りの核心は、生老病死の苦しみを受け入れることだった。宇宙や大自然のはからいのなかで生かされている生命そのものに目覚め、「諸行無常」という真理を明らかにした。そして、一切の人間存在は無常であり、一切の物事は無常であるからこそ、人は人を慈しみ、人は物事に感謝することができると、ブッダは説いたのである。
時には仏典に記された戒律の厳しさに、人生の喜びのすべてを否定されてしまったように感じることもあるだろう。だが、何度か読み返せば、厳しい戒律が出家僧たちのためのものであることが分かる筈だ。俗世に生きる私たちは、せめてそれら戒律の半分くらいは守れるように、日々に感謝して生きたいものである。そして何よりも、一切の人間存在を無常としながら、人を助け、導くことに生涯を捧げたブッダという人がいたという事実に、私たちはいつだって、生きる力と勇気を与えられているのである。
いっぽう、インドには、ブッダが苦行し、悟りを開き、布教活動を行った聖地が存在する。今から40年程前、大先達である写真家・丸山勇氏は初めてインドを訪問し、聖なるヒマラヤ山麓から北インドにかけてブッダの足跡を辿り、その後さらにインド亜大陸全域の仏教遺跡を巡る撮影旅行を重ねてこられた。これまでのインドへの渡航は23回を数えるという。
丸山氏は初めてインドへ旅立つ前年に、中村博士に会われている。おそらく、インド亜大陸に散らばる仏教遺跡・仏教美術を写真に記録し、世に伝えることの意義が語られただろう。また、1970年代といえば、ベトナム反戦運動を発端にアメリカで起こったヒッピームーブメントが、全米、そして世界中を席巻した時代でもある。74年生まれの私は、当時の熱気を想像してみるしかないのであるが、日本でも、ブッダの思想に影響を受けた芸術家たちが、荒廃した文明社会を脱し、東洋へ、魂の故郷へ帰ろうとする新しい潮流を生み出そうとしていた時期だったように思う。果たして、丸山氏もそのような熱気のなか、インドへの想いを温め、中村博士と夢を語り、ブッダの聖地巡礼へと旅立たれたのであろうか。
丸山氏の写真を眺めていると、人々に注がれるブッダの慈愛にも似た温かな眼差しを感じずにはいられない。一家総出で収穫に汗を流し、洪水のなか薪や穀物を入れた袋を頭に載せて移動していく農民たちの姿はとても印象的だ。また、タンドールの上でチャパティを捏ねる料理人の眼差しは真剣なのに、裸体のまま苦行を続けるサドゥーはどこか冷めた笑みを浮かべている。路上では椅子にまどろむ男のあご鬚に床屋の主人が今まさに刃を当てようとしていたり、親子ほど年の差のある二人の僧侶が托鉢しながら目の前をとぼとぼと通り過ぎていく。夜中だというのに花嫁行列は歌い踊り、それでも夜明け前の川の畔には、もう、橙色に染まる空に向かって静かに頭を垂れる人がいるのである。
そんな悠久ともいえるインドの大地と人の存在感に比して、私たちはなんと慌ただしく、目まぐるしく日々を生きていることだろう。けれど、それもまた諸行無常である。そして今日思い立てば、明日の飛行機に乗ってインドのどこかの町に降り立ち、聖地巡礼に赴くことができる――そんな便利で幸せな時代に私たちが生きているのも事実なのである。ブッダの言葉と丸山氏の写真で綴られたこの本が、多くの人の疲れた心を癒し、いつの日か、ブッダの聖地を目指すきっかけとなることを希う。

(たけだ・たけし 写真家)

目次

はじめに 佐々木一憲
第一章 慈しみ
第二章 幸福
第三章 道を歩む
第四章 怒り 怨み
第五章 世に生きる
第六章 執著を離れる
第七章 死と向き合う
第八章 真理とは
第九章 心
第十章 つとめ励む
第十一章 ブッダの生涯
撮影後記 丸山 勇
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