ホーム > 書籍詳細:東海道新幹線開業50周年記念 世界最速「車窓案内」

日本で最も見られている車窓風景。でも、その本当の面白さをあなたはまだ知らない!

東海道新幹線開業50周年記念 世界最速「車窓案内」

今尾恵介/著

2,160円(税込)

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発売日:2014/08/29

読み仮名 トウカイドウシンカンセンカイギョウゴジュッシュウネンキネンセカイサイソクシャソウアンナイ
発行形態 書籍
判型 B5判
頁数 127ページ
ISBN 978-4-10-336331-6
C-CODE 0095
ジャンル 産業研究、鉄道
定価 2,160円

小田原が近づくと突如現れる斜面の「三角住宅」地帯、巨大な化粧品会社の野立て看板――1日40万人が利用する東海道新幹線の窓から見える風景から建物・看板まで。在来線の三倍速で飛び去る、知っているようで知らない車窓を、地図の達人が自前イラストと地形図を駆使して語り尽くした東海道新幹線車窓案内の決定版!

著者プロフィール

今尾恵介 イマオ・ケイスケ

1959年横浜市生まれ。小中学時代より地形図と時刻表を愛好、出版社勤務を経てフリーライター。著書に『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)、『絶景鉄道 地図の旅』(集英社新書)、『住所と地名の大研究』(新潮選書)、『地名の社会学』(角川選書)、『鉄道ひとり旅入門』(ちくまプリマー新書)など多数。『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)シリーズの監修者。

目次

凡例的まえがき
東京 かなりレトロな丸の内
多摩川 密集市街地は東京の絶景
新横浜 ハイスピードはここに始まり、ここに終わる
二俣川 とりとめのない台地に睡魔が襲う
高座渋谷 えっ、まだここ!? 意外に長い神奈川県
相模川 関東西端を縁どる丹沢山系
大山 崖に張りつく三角屋根住宅群
大磯 大磯、といっても山の中
小田原 矢倉岳を見逃すな
根府川 ほとんどトンネル、ちらっと相模湾
湯河原 南郷山トンネルは2番目に長い
熱海 指差確認! 初島、熱海城
三島 でっかい富士山登場
愛鷹山 君は沼津アルプスを知っているか
岳南江尾 富士山に釘付け
富士 富士づくしの地名、駅名、学校名
由比 濁りません、「ふじかわ」と読みます
興津 東海道屈指の絶景、なのに新幹線は闇の中
清水 地平を走る新幹線
静岡 心が和む、静岡の山々
焼津 7本のトンネルが並ぶ日本坂
大井川 大井川の扇状地を疾走
牧之原 トンネルと茶畑の繰り返し
菊川 静岡はお茶の国
掛川 企業ショーウィンドー
袋井 続・企業ショーウィンドー
磐田 砂丘の内側に広がる後背湿地
浜松 S字カーブの心地よさ
舞阪 ソーラー畑の新風景
浜名湖 湖面を望む屈指の絶景
二川 遠州・三河の国境地帯
豊橋 鉄道集散地の悦楽
愛知御津 東三河のビニールハウス
蒲郡 遠望三河湾の島々
幸田 三河平野を直線で切り裂く
矢作川 この見開きにカーブはない
三河安城 クルマ大国・愛知を実感
桶狭間 三河・尾張の国境
笠寺 高い高架から眺める名古屋の甍
  [縦断面図とデータ]
名古屋 仰ぎ見る高層ビル群
清洲 沿線最大の沖積平野
木曽川 水田平野に巨大河川
岐阜羽島 平野・水田・穏やかな養老山地
大垣 標高10メートル以下の軟弱地盤
関ヶ原 古戦場は最急峻区間
伊吹山 東京の人へ、これが伊吹山です
米原 鉄道総研もある鉄道の町
彦根城 中山道と北陸道が合流する
愛知川 伊藤忠・丸紅のふるさと
五個荘 商才が眠る里山
篠原 琵琶湖も比良山地も見えるぞ
野洲 駅間距離日本一を実感
瀬田川 湖国とベッドタウン
山科 近江・山城国境地帯
京都 遥かなる比叡山
長岡京 10年の都に弧を描く
大山崎 雌雄を決する天王山
高槻 流通倉庫集積地帯
新大阪 東海道・山陽の結節点
私の好きな車窓 あとがきにかえて

駅データ●東京/品川/新横浜/小田原/熱海/三島/新富士/静岡/掛川/浜松/豊橋/三河安城/名古屋/岐阜羽島/米原/京都/新大阪

インタビュー/対談/エッセイ

波 2014年9月号より 「日本」が凝縮された車窓

今尾恵介

私が鉄道や地図について執筆するようになってから最も多く参照した本といえば、時刻表や地名の事典などを除けば『旅窓に学ぶ』という鉄道旅行ガイドブックである。東・中・西日本の3分冊で全国の国鉄線を紹介しており、昭和11年(1936)から13年にかけてダイヤモンド社から発行された。このうち東日本篇の東海道本線・浜名湖あたりは次のような具合である。

列車が稍進めば右窓に渺茫として白帆点在の浜名湖現はれ左窓に長い国道橋が見えて第一浜名鉄橋を渡る。此の橋上を走るとき浜名湖の全景は右に、遠州灘の碧波は左に、両窓の展望は水天相接し、殆んど海上をゆく如く豪快な大展望である。そのうち松生ひ茂る一島に弁天島停車場を通過して行く。駅前の瀟洒な海水浴旅館、松林に囲まれた砂浜の別荘、さゞ波に揺れる岸の釣舟、なかには釣糸垂れた儘悠々として、煙草の味に此の名勝地を独占してゐる漁夫もある。

これの新幹線版を書きたいものだと思っていた。解説に加えて私が中学生の頃から親しんできた2万5千分の1地形図を東京から新大阪までズラリと並べる。遠景はカバーしきれないが、在来線のほぼ3倍のスピードで近づき、あっという間に過ぎ去っていく景色をこれで網羅的にチェックできる。ただ、あの速さであるから左右一緒に解説していたのでは車窓風景に集中できない。そこで別々にした。新幹線の車窓についての本はこれまで何冊か出ているけれど、おそらく文章が左右別々のものは初めてではないだろうか。
思えば私が幼稚園児の頃、「ひかり」「こだま」の見える場所に引っ越してきたのは、ちょうど新幹線が開業した昭和39年(1964)であった。自宅の庭から線路までは、改めてネットの地図で測ってみると125メートルの近さ。当時は「夢の超特急」と呼ばれていて、私と2歳下の弟はその超特急が通過するのを見るたびに「超特急! 超特急!」と連呼して喜んでいたものである。本数は今よりはるかに少なかったけれど、パンタグラフが多くてけっこう騒々しく、独特の風切り音と架線を彩る火花もあって、他の列車にない特別感を発散していた。そんな原風景が本書の執筆につながったのかもしれない。
それはともかく、東海道新幹線について書いてみて、改めてその車窓風景が日本という国を凝縮したものであると感じている。欧米の人は新幹線に乗って「家が途切れないこと」に驚くと聞いたことがあるが、なるほどかなりの山の中でも必ずどこかに家があり、周辺には田畑がきれいに耕されている。それらの間を高度成長の牽引役となった沿線の工場があらゆる業界にわたって分布しており、それらの色も形も大きさも千差万別だ。
過ぎゆく山河も多い。多摩川から大山を望む相模川、その後は箱根連山と富士山を望み、富士川・大井川・天竜川で長大な橋梁を渡った後は、水面がずいぶん近い浜名湖。濃尾平野に入れば木曽・長良・揖斐の三川を渡りながら金華山や幸運なら木曽の御嶽山まで望めるというし、関ヶ原トンネル内の全線最高地点を通り抜けた後は目の前に伊吹山、その後は近江富士こと三上山、大津と京都の両側から望める比叡山。最後は淀川と背景に霞む生駒山地まで、これだけ役者が揃っている路線が他にあるだろうか。
窓側に座ったらコンセントにPCを繋ぎ、寸暇を惜しんで仕事するのも結構だけれど、ちょっと手を休めて、この「日本一の車窓」に目を向けてみよう。

(いまお・けいすけ 地図エッセイスト)

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