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俺たちは五人で完璧だった。
おまえが消えるまでは――。

パンゲア5

朝香式/著

1,728円(税込)

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発売日:2017/01/20

読み仮名 パンゲアファイブ
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 239ページ
ISBN 978-4-10-336452-8
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,728円
電子書籍 価格 1,382円
電子書籍 配信開始日 2017/07/07

大学時代に出会い、「完璧なバランス」を保っていたはずの男女五人。その均衡は、ある事件をきっかけにバラバラに崩れてしまう。だが、石丸蓮太がテレビで偶然、高僧となった旧友・大和田道を発見。彼らの時は再び交わりはじめた――。R-18文学賞大賞受賞作家が描く、ユーモラスであたたかな、「選択」と「役割」の物語。

著者プロフィール

朝香式 アサカ・シキ

I971年、愛知県生まれ。第12回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。2014年、受賞作を含む単行本『マンガ肉と僕』でデビュー。同作は杉野希妃監督により映画化された。『パンゲア5』が初の長編作品となる。名古屋市在住。好きなものは映画と珈琲。

書評

すべては世界の有機的なピース

三浦天紗子

 ある日から突然、〈僕〉ことワタベをパシリにして、アニメに出てくる“マンガ肉”のような巨大から揚げを買わせる大学の同期生のサトミは、それを常食しているせいで太っている。風呂嫌いだし、香水がキツイし、外見にもまったく頓着しない。そんなサトミが、ワタベと十年後に再会して打ち明けたコトの真相があまりに切なかった『マンガ肉と僕』。その「R-18文学賞」大賞受賞作を表題作に据えた連作短編集でデビューしたのが朝香式だ。
〈肉女〉などと形容される規格外のヒロインを、ちゃんとヒロインとして輝かせるための仕掛けのみならず、全体にまぶした独特のユーモアのフレーバーが絶妙。
 登場人物たちがゆるくリンクしながら進む五篇によって、個性的な男女それぞれが背負っていた内情が薄皮を剥ぐように明かされていく。その“やむにやまれなさ”が愛おしくなるような作品だった。
 二年半ぶりの新刊となる『パンゲア5』もまた、一風変わったタイトルの長編だ。学生時代に〈五大陸〉という名の喫茶店でたむろしていた男女五人が、十数年ぶりの再会を果たす四篇と、その運命の不思議を解題する一篇からなる。
 パンゲアとは、一つの大きな地続きの土地が分裂して現在のような五大陸になったという説の「超大陸」だが、この物語にもそんなイメージがオーバーラップする。
 アートの才能などないと自覚しているのに、〈ボーディ〉という脳内の予言者的メンターによって、売れっ子オブジェ作家となった石丸蓮太。事務所のスタッフでもある十九歳の美大生・宏美と残念な一夜を過ごした翌朝、ずっと探していた無二の親友・大和田道が、命懸けの荒行を成し遂げた大阿闍梨(高僧)になっていたことをニュースで知る。
 たまらず、押しかけ再会を果たした蓮太は、いまや〈白道師〉として尊敬を集める道に、「弁護士になると言っていたのにどうして突然姿をくらまし、坊主になったのか」と詰め寄る。〈「言えよ、俺のせいなんだろ?」〉。
 蓮太の胸にずっしりと置かれたある出来事の後、五人は散り散りになった。 蓮太も道もいまを受け入れているが、わりなき思いも抱えている。なんとか道をもとの人生へと引き戻したいと考える蓮太は、フェイスブックのタイムラインに、道が見つかったことを投稿した。それを介して五人の運命は再び近づいていくことになるが……。
 一児の母でもあるマンションギャラリー勤務の美和子は、家庭崩壊の危機にある。かつて道と恋人同士だった真名は、家業を継いで生殖医療専門の医師になった。修は、真名と結婚して授かった丹青たおを可愛がるが、その一粒種は子どもらしさに欠けた変わった子だ。五人は五人とも、たどり着いた現在から、あのときの選択は、放った言葉は、「正しかったのか」と分岐点になった過去に思いを馳せる。
 そんなふうに、誰でも、あのときの選択は正しかったのかと答えを欲しがるが、人生には○×式の正解などないに違いない。というか、しょせん人間は、そのときの精一杯でよかれと思う方を選ぶことしかできないのだ。
〈誰かが生まれてきて、誰かと出会って、そこからプラスもマイナスもひっくるめてあらゆることが連鎖する。すごい仕組みだと思わないか?(略)シナリオは完璧なんだ。すべての者に役割がある。いいも悪いもない、ただ選択するんだ〉と五大陸のマスターは言い、〈正しいか正しくないかを判断し思い煩うことは、僕たちの仕事ではないということです〉と丹青は言う。
 その選択のせいでバランスが変わり、なにかの変化が起きたとしても、大いなる意思はそうした変化をうまく受け止めて、世界を回す。
 宏美が若さに似合わぬ母性を持つことも、マスターの右手指が五本ともないことも、一度も笑ったことがない丹青のことも。本書を読んでいると、この世の不思議にも不条理にも、実は意味があるのだと思えてくる。なぜなら、登場人物がみな有機的なピースとなって、その世界で役割を果たしているから。実は現実の世界がこんなふうにできていて、だからこそ誰の人生も美しいのだと思わせてくれる温かな作品だ。

(みうら・あさこ ライター、ブックカウンセラー)
波 2017年2月号より

目次

1
2
3
4
眠りの精

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