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砂漠の下から「古代都市」が見つかった! 気鋭の考古学者がその謎を解明。

ピラミッド・タウンを発掘する

河江肖剰/著

1,512円(税込)

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発売日:2015/09/25

読み仮名 ピラミッドタウンヲハックツスル
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-339571-3
C-CODE 0020
ジャンル 世界史
定価 1,512円
電子書籍 価格 1,210円
電子書籍 配信開始日 2016/03/11

「ナイル川の東は生の世界、西が死の世界」。まことしやかに語られるこの説は誤りだった! 四五〇〇年前、あの巨大建築物をつくった労働者と家族はそのすぐ横に住んでいたのだ。最新の発掘データを元に「どのように作ったのか」、なぜ作ったのか」に加えて、ピラミッドを建てた「人間」に焦点を当てた古代エジプト研究の最前線。

著者プロフィール

河江肖剰 カワエ・ユキノリ

エジプト考古学者(歴史学博士)。1992年から2008年までエジプト在住。2015年9月現在、名古屋大学CHT共同研究員。米国古代エジプト調査協会のメンバーとして『ピラミッド・タウン』の発掘、並びに多国籍チームによるメンフィス地区の巨石建造物の3D計測調査に従事。

書評

ピラミッドを作った人々のリアリティ

橋本麻里

 古代エジプト、あるいはピラミッドという語句に接して、胸をときめかせずにいられる日本人は、そう多くはあるまい。だが時間的にも空間的にも遠く隔たった魅惑的な異世界に、私たちは勝手な幻想――時に超古代文明から宇宙人まで登場する――を投影してもきた。確かに古代エジプト、そしてピラミッドに謎は存在する。この謎に営々と立ち向かってきた、考古学者たちによる研究の歩みを明らかにしながら、なお残る謎が何なのかを明確に指し示したのが、エジプト考古学者の河江肖剰による『ピラミッド・タウンを発掘する』だ。
「待望のカイロ・アメリカン大学に入学を果たした私は、フレッシュマンながらに『大ピラミッドの謎を解明したい!』と意気込んでいた。しかし、その謎が具体的に何を指しているのか、当の本人にもよく分かっていなかった」。考古学シロートの筆者が心から共感できるスタート地点から、いままさに河江自身が立っているエジプト学研究の最前線へと読者を誘うために、本書では約4500年前に築かれたピラミッドを、「どのように作ったのか」「なぜ作ったのか」「誰が作ったのか」という3つの大きなルートが設定される。
 硬く巨大な石灰岩をどこから切り出し、いかにして運び、積み上げて、あの大規模な建造物を作り上げたのか。「どのように」の検証作業には、王のミイラどころか考古学の華たる発掘作業さえ出てこない。だが、三大ピラミッドが聳えるギザ台地全体の精密な測量を続けて地図を作成し、巨石を橇に乗せて引き上げるための手法や人数を実践によって確かめる「実験考古学」などの地道な成果から、ピラミッド建設の過程と技術が少しずつ明らかになっていく。
「何のために」と問うならば、それは確かに王の墓だった。ヘロドトス以来、神秘のヴェール越しに眺められていたピラミッドに、初めて学術的な探索の目を向けて測量を行った、17世紀イギリスの数学者ジョン・グリーヴズに始まる近代的な研究。そして河岸神殿、参道、葬祭神殿、周壁、衛星ピラミッドなど「ピラミッド複合体」全体から得られた知見を統合し、ひとつの文脈の中に位置づけていった結果浮かび上がるのは、単なる墓ではなく、原初の混沌の海の中から、秩序ある世界が生まれ出る創世の神話を再現し、象徴するものとしてのピラミッドの姿だ。
 本書全体を通じて河江が徹底的に重視しているのは(彼が師事するエジプト学の泰斗、マーク・レーナー博士の方針でもある)、「人間」の存在だ。その河江たちが現在、最後の謎として取り組んでいるのが、ピラミッド建設に携わった人々がどこに住み、どのような生活を送ったのかという、建造を成し遂げるための営みすべてを明らかにするはずの、「ピラミッド・タウン」の発掘調査である。ピラミッド建設そのものに従事する労働者、道具や工具を作る職人たち、食料を供給する者など、建設事業に関わった人員は2~3万人と見積もられている。レーナー博士の指揮下で河江たちは、それまでエジプト学ではほとんど顧みられることのなかったピラミッド建設に携わる人々と、彼らが暮らした町「ピラミッド・タウン」を発見。パン焼き場の跡から激しい労働を支えた主食のパンを再現し、ゴミ捨て場に捨てられた「封泥」(文書などを密封し、そこに印章や手描きの文字を記した)から、そこで暮らした人物の社会的地位を明らかにしていく。
 黄金に輝く宝物とは無縁の現場で蓄積された「情報」をもとに本書の結末部で描き出される、ギザ台地で生きた人々の日々の営みと建設中のピラミッドが佇む風景に宿るリアリティは圧巻だ。ピラミッド建設の時代が理解を絶した異境ではなく、現代の私たちと変わらぬ喜びや悲しみ、生きることの喜びや明日への希望を抱いた人間の暮らす世界であったことを知り、彼らの生々しい息づかいまでを感じた時、私たち読者は、考古学が非現実的な夢を追うのではなく、何よりも人間を知り、深く洞察する学問であったことに、あらためて気づかされるのである。

(はしもと・まり ライター・エディター)
波 2015年10月号より

目次

プロローグ ある日の発掘現場
第I部 どのようにピラミッドを作ったか
第1章 内部構造の解明
第2章 傾斜路のエキスパート
第3章 二八〇〇〇時間の奮闘
コラム1 スーダンにまで拡がる数百基のピラミッド
第II部 なぜピラミッドを作ったか
第4章 ピラミッドに取り憑かれた人々
第5章 王墓か、否か
第6章 「再生」の力
コラム2 神へ近づいた王たち
第III部 誰がピラミッドを作ったのか
第7章 レーナー博士の軌跡 超古代文明探しから実測へ
第8章 古代パンのレシピ
第9章 甦る古代都市
第10章 「アラブの春」
エピローグ 四五〇〇年前の「ピラミッド・タウン」

あとがき/註/参考文献/索引

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