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表情あり、歴史あり、吉凶の運命あり。訪ねて極める、楽しい「道紀行」。

国道者

佐藤健太郎/著

1,404円(税込)

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発売日:2015/11/27

読み仮名 コクドウモノ
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-339731-1
C-CODE 0095
ジャンル 歴史・地理・旅行記
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,123円
電子書籍 配信開始日 2016/05/13

人は道なしには生きていけない。しかしふだん、その存在を意識することはほとんどない。人の道同様、道にも様々な道がある。廃道、酷道、登山道、階段、海に消える国道などなど。国が定めた「国道」でさえ、目を疑うような末路を辿る道もある。マニアを自認する筆者が日本の道の実態を浮き彫りにする「国道ノンフィクション」。

著者プロフィール

佐藤健太郎 サトウ・ケンタロウ

1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』(新潮新書)で科学ジャーナリスト賞。2011年、化学コミュニケーション賞。著書に『炭素文明論』(新潮選書)『「ゼロリスク社会」の罠』(光文社新書)『世界史を変えた薬』(講談社現代新書)など。

書評

道から紡ぎだされる物語

高橋良和

 鉄道は趣味の王道の一つであるが、その理由はロマンと非日常性を感じさせてくれることであろう。鉄道趣味として、ノスタルジックな機関車や最先端テクノロジーの新幹線、バラエティあふれる民鉄車両などの魅力あふれるハードはもちろん、駅での出会いや別れ、鉄路の先の新しい生活への希望や不安、旅情や望郷など、鉄道を通して多くの人間ドラマが頭をよぎる。鉄道はハード・ソフトともに非日常を演出する数多くのコンテンツが含まれているのである。さらに鉄道趣味の世界には、『時刻表2万キロ』の宮脇俊三氏をはじめ、多くの作家が、更なる鉄道趣味の魅力をかき立てている。
 一方、同じく公共交通の用に供する道路も同様の魅力を秘めているはずであるが、鉄道に比べて分が悪い。家を出れば目の前にある道路は、極めて日常的な存在である。カーエンスーは数多くいれども、それは自動車趣味であり、道路趣味では無い。あくまで道路そのもので勝負する必要があるものの、趣味として分かりやすいコンテンツは少ない。道路の魅力を味わうには、日常的な道路に潜む非日常を見つけ出す努力が必要で、コンテクストが鍵となるのだ。松波成行氏の『国道の謎』や平沼義之氏の『大研究 日本の道路120万キロ』、また佐藤氏の『ふしぎな国道』は、道路趣味のコンテクストを読み解くための数少ない入門書だ。国道は誰もが知っている道でありながら、実は、その何たるかはあまり広くは知られていない謎多き道でもある。そこで、道路の歴史や法制度を整理しながら、道路の世界の幅広さが紹介され、最長、最短国道や最高、最低地点などのデータや、国道らしからぬ酷道など、道路の奥深さを示しながら、道路を趣味とするための道筋を教えてくれる。本書『国道者』は、道路に秘められた物語を紡ぎだす、というコンテクストをもって、道の魅力を読み解こうとするものである。
 本書には、二九の道路から紡ぎだされた物語が紹介されている。バイパスの開通によってわずか一八七・一メートルまで短くなってしまった国道一七四号や、気づかぬ間に国会議事堂横が国道二四六号になっていた物語を読むと、変化しない象徴のような道路が、伸び縮み、動き回ることが可能な生き物のようにも感じることだろう。また、急勾配で行く手を阻む「酷道」三〇八号や、登山道であった国道二八九号などの物語は、我々の国道の概念を一変させるに十分である。本書で特に印象的なのは、それぞれの物語に、実に様々な人間模様が綴られていることである。国道五二号や国道二七一号に見え隠れする権力者や、国道一号起点の日本橋を横切る高速道路建設に苦悩する技術者、尾瀬の自然を守るために国道四〇一号を永遠に分断させた山小屋主人や国道三三九号の階段国道を観光の目玉に活用する地元民など、その登場人物も様々である。一見無機質な道路の物語に人を登場させることで、道路に感情移入することへのハードルを下げ、一気に興味を高めてくれる。
 本書には紹介されていない国道の中で、個人的に強くその物語に興味を覚えるのが、国道五八号である。かつて一級国道には一桁、二桁の番号が、二級国道には三桁の番号が割り当てられたが、一九六四年七月の道路法改正により、一級、二級の分類は廃止され、一般国道に一本化されて以来、新しく制定される国道には全て三桁の番号が割り当てられている。その唯一の例外が国道五八号だ。一九七二年の沖縄返還を機に、鹿児島と沖縄を結ぶルートが国道に制定され、かつての一級国道の証である二桁の番号が付与された。この特別な配慮を知ったとき、沖縄の本土復帰を心より祝う日本国家の心意気を感じた。また、沖縄県民もその心意気を感じたのであろう、沖縄では「ゴーパチ」と呼ばれ、国道五八号の標識を象ったお土産物が沢山ある。地元民から愛される国道は、愛されるだけの物語が潜んでいるのだ。
 道の物語には正解はない。人それぞれ異なる物語が発見できるだろう。本書で紹介される道から紡ぎだされる物語を味わいながら、自分なりの物語を発見してはどうだろうか? そのとき、目の前に見える道路は今までと違う景色に見えるはずである。

(たかはし・よしかず 京都大学准教授)
波 2015年12月号より

目次

まえがき――万物に宿る「マニアという人種」
国道333号 網走監獄のルーツとなった道――北海道
国道339号 竜飛崎に全国唯一の階段国道――青森県
国道458号 デコボコ道で昭和を体感――山形県
国道289号 秘湯にあった国道だけど登山道――福島県
国道349号 阿武隈高地の隘路――福島県
国道6号 「ある町の」海の国道――茨城県
国道401号 永遠の開かずの国道――福島県・群馬県
 コラム(1) 断絶国道
県道162号 わずか7メートルの最短県道――長野県
県道14号 国道になれなかった道――茨城県
県道9号 四県を跨ぐ県道――栃木県・群馬県・埼玉県・茨城県
 コラム(2) 欠番の謎
 コラム(3) 「国道」という名の鉄道駅
国道1号 日本橋の小さな空――東京都
国道246号 謎の永田町バイパス――東京都
国道16号 東京湾に消える道――神奈川県・東京都・埼玉県・千葉県
国道246号 裏街道「246号」の逆襲――東京都・神奈川県・静岡県
踏切 消えた「開かずの踏切」――神奈川県
 コラム(4) 路線番号
国道271号 東名高速を削り取った男――神奈川県
国道52号 権力者のいた風景――山梨県
国道414号 今昔天城越え――静岡県
国道152号 あゝ青崩峠――静岡県・長野県
国道23号 伊勢神宮で終わる国道――三重県
 コラム(5) 幻の道
 コラム(6) 角栄伝説
国道308号 恐るべき道、暗峠――大阪府・奈良県
 コラム(7) 国道のルーツは街道
国道166号 最古の国道は町中の「酷道」――大阪府
国道43号 車線を削られた阪神国道――大阪府・兵庫県
国道174号 神戸税関前に「最短国道」――兵庫県
 コラム(8) 短い国道、長い国道
国道31号 生き残った「海軍国道」――広島県
 コラム(9) 国道標識のあれこれ
国道189号 起点が米軍基地内だった――山口県
 コラム(10) 最長・最低トンネル
国道32号 無理矢理高知に集まる8国道――高知県
国道499号 東シナ海に消えるトマソン国道――鹿児島県
国道390号 沖縄の「左右」が入れ替わった日――沖縄県
あとがき

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