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蹴飛ばしたい店。抱きしめたい犬。人生の時を振りかえる発作的感情旅行。

殺したい蕎麦屋

椎名誠/著

1,512円(税込)

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発売日:2013/12/20

読み仮名 コロシタイソバヤ
雑誌から生まれた本 yom yomから生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 248ページ
ISBN 978-4-10-345622-3
C-CODE 0095
ジャンル エッセー・随筆
定価 1,512円

何故、かくも憎むのか? 何故、かくも愛するのか? 後ろ足で蹴りたいエラソーな店。噂話と悪口が好きな奴。世界の奇食珍食。懐かしの飼犬たち。辺境旅。クルマで近場旅。焚き火。格闘技。寝る前に読む本……。シーナを作りあげてきたモノをめぐる怒りと笑い、好奇心と追憶が縦横無尽に炸裂する極私的感情文集。

著者プロフィール

椎名誠 シイナ・マコト

1944(昭和19)年、東京生れ。東京写真大学中退。流通業界誌編集長を経て、作家、エッセイスト。『さらば国分寺書店のオババ』でデビューし、その後『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』『銀天公社の偽月』などのSF作品、『わしらは怪しい探検隊』シリーズなどの紀行エッセイ、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『哀愁の町に霧が降るのだ』『岳物語』『大きな約束』などの自伝的小説、『風のかなたのひみつ島』『全日本食えば食える図鑑』『海を見にいく』など旅と食の写真エッセイと著書多数。映画『白い馬』では、日本映画批評家大賞最優秀監督賞ほかを受賞している。

目次

はじめに

さらば愛しき犬たちよ
辺境の食卓
殺したい蕎麦屋
“本場”と“本格”には気をつけよう
好きなもの
なくていいもの
ぼくの駆け出し時代
貧しい人間
仕事うた
夏だ あらしだ、うっちゃりだ

* *
高野山を行く
いい旅を――といつも思っていた
クルマで見にいく風景
大洗、なにかと逆上旅/よろこびの海浜春キャンプ/トンネル妄想ドライブ/黄金街道をいく/クルマ社会・日本のレベル/ハザード会話/強くて賢い母さんのような/多機能という軽薄と無駄/クルマの強さと品格/愛と恫喝――ナゾの交通標語/ガイコツ車に感動した/北海道トラック貧困旅/空飛ぶ未来自動車
飛び跳ねる猛禽類 ムエタイ
* * *
犬が喋る時
かごむ
倦怠俳句
一枚の写真、妻のヒトコト――嫌になった、そのときに
最初の原稿料
熱気と喪失の町
黄金時代に暮らしていた
ことばと話の技術
消える本箱
たぬきとたねきのあいだ
あとがき

インタビュー/対談

波 2014年1月号より 【椎名誠『殺したい蕎麦屋』刊行記念対談】 書いたエッセイが5万枚!

東海林さだお椎名誠

椎名 十二月におれ、『殺したい蕎麦屋』というエッセイ集を出したんだけど、これは連載じゃなくて、いろんな媒体に書いたものを集めたものなんです。枚数もまちまちで、三、四枚のものもあれば三十枚を超す大作(笑)まで入ってます。
東海林 ああ、寄せ集めたんだ(笑)。
椎名 なんか人聞きが悪いなあ。確かに寄せ集めなんだけど、ずっと週刊誌二誌、「週刊文春」「サンデー毎日」にエッセイを連載してきたし(今年の春で二十三年続いた文春の連載が終わったけど)、スポーツ紙に週に一回の連載もしていて、月刊誌・季刊誌入れると月に二十くらい締切があるから、連載以外のエッセイはなかなか書けない。単発で書いたもので一冊になるのは珍しいんです。でも、単発エッセイを書く面白さってあるんですよね。
東海林 僕は単発のエッセイの依頼をほとんど引き受けられない。頭を切り換える余裕がなくて。
椎名 おれもまったく同じなんだけど、枚数が珍しいと受ける。東海林さんは「週刊朝日」で長く連載しているから知っているでしょうが、週刊誌は大体見開き六枚か七枚だよね。おれが「東京スポーツ」でやっているのが三枚半。それ以外の枚数、四枚半とか九枚とかで頼まれると、一回こっきりだし、つい面白そうだなと思って引き受けちゃう。
東海林 テーマじゃないんだ。
椎名 東海林さんはもう忘れているだろうけど、三十四、五年前に初めてお会いした時、週刊誌のエッセイの書き方を教わったんです。「毎回いいものが書けるわけがない。野球と同じで三割打てればいいんだ」と。それでずいぶん気持ちが軽くなって、おかげでおれは粗製濫造作家になった(笑)。
東海林 十回打席に立って三回クリーンヒット打てたら名選手ですよ。まあ、プロだから残り七回全部三振はダメだけど、バントとかポテンヒットとかで誤魔化しながらね。
椎名 でも、締切が迫ってきても、今日はもうバントもできないやってことが長い連載人生の中ではあったでしょう?
東海林 最初、週刊朝日からは「何でもいいからエッセイを連載してくれ」と言われたんです。でも、「何でもいい」というのは締切の時に一番苦しくなるなと思って、食べ物に限定したのが「あれも食いたい これも食いたい」。それでどうにか二十五年以上続けられてる。
椎名 食べ物限定でテーマを探す方が楽だもんね。
東海林 で、例えば「白湯(さゆ)」とか、いいテーマを思いつくと嬉しいね。ただ単にぬるいお湯なんて一番書きにくそうなテーマだけど、書けるのか書けないのか、「ようし!」ってファイトが湧くもんね(「白湯の力」『タケノコの丸かじり』所収)。
椎名 そういうテーマの在庫は持っているんですか? 代打、補欠というか、例えばインスタント・ラーメンなら季節問わずいつでもOKだから、いざとなればあいつを出そうとか。
東海林 在庫なんかあるはずない(笑)。週刊朝日の原稿は月曜に渡しているんだけど、夕方の六時頃渡すと、すぐにもう次のを考えてる。
椎名 エライなあ。東海林さんがそれをできるのは、ひとつには仕事が好きだからですよね。
東海林 大好き。
椎名 だろうねえ。でも苦しい時はあるでしょ? 文春と「週刊現代」のサラリーマン漫画の連載もずっと続けているし(共に四十年以上)。そういや、「ダジャレのオチが多くなっている!」って、おれ、指摘したことがある(笑)。
東海林 今、ダジャレやめてるの。複数の人に言われたから。ここが自営業者のコワイところだよね。「最近ダジャレのオチが多くなっているぞ」とは、なかなか自分では気づけない。変な方向に行っていても、誰も教えてくれないなんてことはいくらでもある。
椎名 編集者からも「先生、最近ダジャレが多くなりましたね」とは言われないキャリアになってるからね。おれが東海林さんの漫画が変なことになっているなと気づいたら、電話します(笑)。
東海林 最近悩んでいるのは、僕の漫画では会社の女子社員が制服を着ているんですよ。もう何回となく「おかしい」と言われてる。デスクにパソコンを描くようになったのも、世間の実情よりけっこう遅かったけど。
椎名 でも、「サザエさん」と同じで、別次元を行く会社だと思えばいいんですよ。おれの好きなキャラクターなんだけど、社長はいつも自慢げに葉巻を空中高く見せびらかすように持って廊下を歩いてる会社なんだから(笑)。
東海林 もうあの社長は出てきません。引退した(笑)。僕の漫画でも、灰皿なんて今は社内に置いてないですよ。
椎名 そうか、もうあの社長には会えないのかあ。
東海林 ああいうキャラクターをいつ見切るかも大事なんです。最近僕は端役に凝ってるんですよ、酒屋のオヤジとか八百屋の大将とか。

エッセイに書かないこと

椎名 ほかに気をつけているところはありますか?
東海林 週刊誌の見開きエッセイで、びっしり書いている人がいるでしょう? ページが真っ黒になっている人。あれ、読まれると思っているのかな。
椎名 二週に分けたらいいのにね(笑)。
東海林 現在ほど活字や文字にこれだけ親しんでいる時代はないんです。携帯や何かでね。でも、彼らが見慣れているのは行間スカスカの文章ばかりだからね。
椎名 そういや東海林さんのページは白い(笑)。手抜きじゃないの。
東海林 丸が来たら改行。でも、今の読者にはそれでいいんじゃないかな。もう一つ考えているのは、エッセイに論理はあまりいらないんじゃないか。論理を繋げていくより、漢詩みたいにいいリズムがあればそれでいいような気がしてる。
椎名 いきなり高度な話になったぞ。
東海林 エッセイで一番良くないのはリズムも何もなくて、論理の繋がりでぐだぐだ書いていくやつじゃないかな。
椎名 内容についてになるけど、東海林さんは時事ネタって書いてます?
東海林 漫画はそればっかり。
椎名 ああ、そうかあ。おれは時事ネタ、宗教関係、女関係は書かないようにしてるんです。
東海林 何で? 一番面白いのに(笑)。
椎名 尖閣諸島や原発の問題にしても、膨大な資料を読んで書いたって、用語とか間違えやすいし、些細な間違いでもすぐ攻撃されるしさ。小説でもSFを書いて時代ものを書かないのは、時代ものは考証にうるさいヤツが鬼の首取ったようにクレームつけるっていうから。SFなら、これはこういう世界なんだもんっ、って開き直れる。
東海林 僕の商売道具というのはユーモアです。ユーモアで笑ってもらってナンボ、という商売上の基本方針があるから、ユーモアを持ち込みづらいものは取り扱わない。例えば、どういう角度から突いても、大震災はユーモアにはならない。そういえば、椎名さんの初期作品は、『さらば国分寺書店のオババ』でも何でも上質で新しいユーモアがあったけど、だんだんユーモア以外のものも入ってくるようになったよね。あれは興味の対象が移ったということ?
椎名 昔はユーモアやギャグが自然と文章に出ていたように思います。歳をとって感性が鈍ってきたんでしょう。そうかといって、笑わせようとしてわざとらしいユーモアを入れるのも嫌だしね。それと意外にも、おれの小説はシリアスに書く種類のものが多いんですよ。そうだ、来年はひさびさに――と言っちゃ悪いか、力を入れて書いたハチャハチャSF小説が講談社から出ます。
東海林 エッセイでももっとユーモアのあるものを書いてほしいなあ。書けるんだから。

二人が歳をとったら

椎名 あとは我々もそろそろ老化という問題が出てくるんだけど、書くスピードは落ちた?
東海林 漫画を描くスピードは確実に落ちてます。似たような年齢の同業者で手が震えるようになった人もいるけど、僕は手は大丈夫。ただ、視力が落ちちゃって、そのせいで時間がかかるようになってます。あと、今は腰を痛めてて、大好きだった草野球も休んでる状態。椎名さんは体を鍛えてる?
椎名 いまだに毎日スクワット三百回、腹筋二百回、腕立て伏せ百回やってる。午前中に原稿書いて、疲れたら屋上で体をほぐすんですよ。日光を浴びるのは不眠症にもいいから。
東海林 でも、紫外線はマイナスの要素もあるでしょう?
椎名 皮膚がんとかね。特に白人は気にしますね。おれみたいに漁師と見間違えられるくらい色黒な人間は平気。
東海林 人類は最初アフリカで発生して、全員黒人だったそうですよね。それが突然変異でメラニン色素のない白い人間が生まれて、白い肌ではアフリカにいられなくて、移動していったという説がある。
椎名 猛獣にやられないから木の上の方が安全なのに、木から降りた動物が人間の祖先って言われてますよね。彼らは、チンパンジーやゴリラがやるみたいなナックル歩行もやめて、木からも降りて、手を自由にした。手を解放したことで道具も使えるようになり、脳が進化して人間になった、という説は正しいように思ったな。
東海林 そもそもなぜ木から降りたんだろう?
椎名 行動範囲が狭くて、つまらなかったからじゃない?
東海林 ああ、「つまらないから」っていうのは大切な理由だよね。
椎名 みんな、最初に降りようとしたヤツを止めたと思うんだ。「バカなことするな、危ないぞ」とか。でも、上から見てたら、存外そいつが地上で楽しそうにしているから、みんなゾロゾロ降りてきた(笑)。
東海林 地上に降りてきたから火も使えるようになったし。
椎名 あれも穴居生活している洞窟の前で、最初に山火事か何かから火を持ってきて、焚火をしたヤツがいたと思うんだ。それで鹿なんかの生肉を焼いて食ったらやたらと旨かった、という原始焼肉誕生の瞬間があったんだろうね。で、肉は焼くに限るとなって、火の文化ができたんじゃないか。
東海林 そういう最初の一歩というか、子供っぽい好奇心を持った人間がいるのが社会にとって大事なんですよ。これはネオテニー、幼形成熟っていうんだけど、現代みたいに社会が豊かになると、子供でいられる期間が長くなりますよね。これは良くないことだと見られがちだし、実際そんな人たちばかりになると社会は成り立たなくなるんだけど、子供っぽい好奇心を持ち続けることで成り立つ商売もあって、僕たちもそうだよね。エッセイ書けるのも漫画描けるのも、子供じみた好奇心のおかげだもん。視力は衰えて、腰も痛めたけど、好奇心は衰えてないな。
椎名 むつかしいこと知ってるんだなあ。でも好奇心でよければ、そこはおれも今でも昔と変わらないな。
東海林 だから僕たちは歳をとっても大丈夫(笑)。

(しょうじ・さだお 漫画家)
(しいな・まこと 作家)

判型違い(文庫)

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