ホーム > 書籍詳細:ロケット・ササキ―ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正―

この男なくしてシャープの興隆はなく、この男をなくしてシャープは墜落した。

ロケット・ササキ―ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正―

大西康之/著

1,620円(税込)

本の仕様

立ち読みする

発売日:2016/05/18

読み仮名 ロケットササキジョブズガアコガレタデンセツノエンジニアササキタダシ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 254ページ
ISBN 978-4-10-350071-1
C-CODE 0095
ジャンル ビジネス人物伝
定価 1,620円
電子書籍 価格 1,296円
電子書籍 配信開始日 2016/11/11

「ロケット」と称された爆発的な着想力が、電子立国日本の未来を切り拓いた。トランジスタからLSI、そしてMPUへ――シャープの技術トップとして半導体の開発競争を仕掛け続け、日本を世界のエレクトロニクス産業の先頭へ導いた男。インテル創業者が頼り、ジョブズが憧れ、孫正義を見出した佐々木正の突き抜けた人生。

著者プロフィール

大西康之 オオニシ・ヤスユキ

ジャーナリスト。1965年生まれ。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。産業部記者、欧州総局(ロンドン駐在)、編集委員、「日経ビジネス」編集委員などを経て、2016年に独立。企業や業界の深層を、人物を中心に描き出す手腕に定評がある。『稲盛和夫 最後の闘い』(日本経済新聞出版社)『ファーストペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(同)など著書多数。『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(日経BP社)は第13回新潮ドキュメント賞最終候補となった。

書評

シャープの盛衰を決めた「伝説の技術者」

成毛眞

 ビル・ゲイツの功績を一つだけ挙げよと聞かれたら、かならずこう答えている。それはOSを標準化したことではなく、集積回路すなわちLSIの価格を劇的に下げたことだと。
 1965年、インテル創業者の1人であるゴードン・ムーアは「ムーアの法則」を発表した。その法則とはLSI上のトランジスタ数は18ヶ月ごとに2倍になるというものだ。
 しかし、トランジスタ数がまさに倍々ゲームで増加しても、LSIの価格はむしろ劇的に低下していった。50年前の大型コンピュータをはるかに凌ぐ性能を持つCPUチップを、いまでは100円以下で買うことができるのだ。
 安くなった要因は、トランジスタの集積率が上がったために原価が下がったからだけではない。ICを利用した機器が大量に販売されたからでもある。
 ビル・ゲイツはIBMの競争相手であるNECなどにも販売する権利を確保した。結果的にパソコンメーカー間の価格と性能の競争が促進され、ユーザーはより安く高性能になったパソコンを数年に一度買い替えるようになったのだ。
 とはいえ、この劇的なLSIの性能向上と価格低下という現象は、1990年代のパソコン業界が嚆矢ではなかった。1960年代から30年ものあいだ続いた電卓戦争という先史があったのだ。
 ロケット・ササキこと佐々木正こそ、その電卓戦争の指揮官だった。佐々木がシャープに入社した1964年、オールトランジスタの電卓が誕生した。価格は53万5千円。重さは25キログラムもあった。それから13年後、シャープは現在の電卓とほぼ同じ形態の、太陽電池付き液晶電卓を発売した。価格は8500円。重さは65グラムになっていた。重さは384分の1、価格は63分の1になったのだ。
 LSIだけでなく液晶などの部品の値段も劇的に下がった。LSIを作るための製造装置もより高度なものになっていった。電卓につづくパソコン業界の勃興はこの強固な産業基盤の上に成立したのである。
 では佐々木はどのように電卓戦争を指揮したのだろうか。大正4年生まれで太平洋戦争中には軍需産業のエンジニアだった佐々木は、どのような経緯でシャープに入社したのだろうか。そして、電卓戦争後の電子産業はどこへ向かおうとしていたのだろうか。本書は佐々木の技術者人生を辿りながら、戦後日本の産業史を読み解くための絶好のよみものだ。
 著者の大西康之は日本経済新聞社で食品、鉄鋼、コンピュータ、自動車、商社などの業界を担当した多能な記者だった。この4月に独立したあとも、日経ビジネスオンラインなどで人気記事を書き続けている。
 大西の記事は独特だ。新製品発表や謝罪会見などあらゆる記者会見に駆けつけ、会場全体を最後方から眺めるようにして記事をまとめるのだ。取材対象にフェアであり、目先の細事に惑わされず前向き、なによりも明朗な書きぶりの記事で多くの固定ファンをもっている。
 本書でもその特徴が遺憾なく発揮されている。1970年代、佐々木正はサムスンに4ビットマイコンの製造技術を供与したことがある。その後サムスンは日本企業を押しつぶすほどの規模に成長したため、佐々木を「国賊」と呼ぶ連中も現れた。しかし佐々木は「日本半導体産業の敗因は、外に技術を漏らしたことではなく、自らが足を止めたことにあると考えている」と結論付けるのだ。
 昨今のシャープの苦境は「デジタルデフレ」が起こっているにもかかわらず、自ら足を止めた結果である。ムーアの法則はここでも有効だ。年々集積度が上がるため、最後に生産設備を作った会社がより安く、性能のよい製品を作ることができる。それゆえに、日本の半導体製造企業は韓国や台湾に抜かれ、さらにその両国は中国に抜かれようとしている。皮肉にもこのデジタルデフレの先駆けを作ったのは佐々木正だったということになる。
 読者は本書に登場する人物、すなわち佐々木が直接関わった人物たちに驚くであろう。ノーベル賞受賞者だけでも、トランジスタを発明したショックレー、バーディーン、ブラッテンと江崎玲於奈。さらには井深大、松下幸之助、孫正義、ロバート・ノイス、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツなどの電子業界とIT業界の大物たち。
 佐々木と彼らとの関わりも本書の読みどころの一つだ。互いに良質な情報を交換し、フェアに判断をする。そして何よりもみな明朗だ。本書はさわやかな読後感を楽しめる評伝の傑作である。

(なるけ・まこと 書評サイト〈HONZ〉代表)
波 2016年6月号より

目次

プロローグ 孫正義の「大恩人」、スティーブ・ジョブズの「師」
第一章 台湾というコスモポリス
常在戦場
フロンティア・台湾へ
辜振甫、李登輝との交流
ストライキを打つ生徒会長
異質なものを「接ぐ」
第二章 「殺人電波」を開発せよ
天邪鬼、「弱電」を選ぶ
本場・ドイツへの留学
電話機のスタンダードを作った京大生
どうすればアフリカで反物が売れるか
ウルツブルグ・レーダー
「この工場と一緒に死んでやる」
殺人電波と秘密戦
技術者としての「正しい道」とは
第三章 アメリカで学んだ「共創」
GHQからの指令
クオリティー・コントロールとは何か
ノーベル賞を二度受賞する男
真空管から、トランジスタの時代へ
江崎玲於奈を育てる
ソニーの引き抜き
殺人電波が電子レンジに
第四章 早川電機への転身
ハワイでの待ち伏せ
クリスマスイブの決断
愚痴から生まれたプロジェクト
「コンピューターをやると死ぬで」
国の金には頼らない
「共創」の思想
早川電機に佐々木あり
カシオの猛追
第五章 「ロケット・ササキ」の誕生
「次はMOSでいくぞ」
尻込みする半導体メーカー
ロックウェルへ乗り込む
新米技術者、MOS‐LSIに挑む
ミッション・インポッシブル
技術の価値、技術者の価値
「ロケット・ササキ」という称号
ポータブル電卓誕生
「足を止めたら負ける」
佐伯旭のクーデター
第六章 電卓戦争と電子立国への道
天才マーケター
あえて機能を削る
後を追ったら勝てない
液晶への挑戦
偶然の大発見
電子立国とデジタル・デフレ
創業者の度量
第七章 未来を創った男
超LSIへ
MPUという本命
人と人をつなぐ
孫正義と西和彦
「ザウルス」を生んだ1億6000万円
苗は肥沃な土地に植えなさい
天才、神童、カタリスト
ジョブズの相談
スパイラル戦略
「パソコンの次は音楽だと思う」
1990年の和製「iPad」
技術は人類の進歩のためにある
エピローグ 独占に一利なし
主要参考文献

まとめテーマでくくる 本選びのヒント

感想を送る

新刊お知らせメール

大西康之
登録する
ビジネス人物伝
登録する

同じジャンルの本

書籍の分類

ロケット・ササキ―ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正―

全国の書店、または以下のネット書店よりご購入ください。

※ 書店によっては、在庫の無い場合や取扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

  • amazon
  • 楽天ブックス
  • 7net
  • e-hon
  • HonyaClub
  • TSUTAYA ONLINE
  • 紀伊國屋書店
  • エルパカBOOKS - HMV
  • honto

ロケット・ササキ―ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正―

以下のネット書店よりご購入ください。

※対応端末でお探しください。

Shincho Live!