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ごく普通のマンションで本当にあった小説よりも怖い話。

実録 水漏れマンション殺人事件

久川涼子/著

1,296円(税込)

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発売日:2017/01/31

読み仮名 ジツロクミズモレマンションサツジンジケン
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 223ページ
ISBN 978-4-10-350711-6
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,296円
電子書籍 価格 1,037円
電子書籍 配信開始日 2017/07/14

ある日突然、マンションで起きた水漏れ事故。その原因は上階で起きた殺人事件だった!? 巨額の工事費、悪徳業者の水増し請求、保険会社の出し渋り、傷アリ物件の処理、裁判、法律の壁……突然の災難にもめげず、女一匹、財産と権利を守り抜いた奮闘の物語。ところで、あなたのマンション、大丈夫ですか?

著者プロフィール

久川涼子 ヒサカワ・リョウコ

フリーライター、アメリカ在住。「マンション被害」専門家。

書評

軽やかに、作家魂

鎌田敏夫

「え、こんなことが!?」と、思う。その後で、「いや、都会に住んでいると自分の身にも起こることかもしれない」と、思い直す。次々に襲う難問。強くならなければと決意し、ヒロインは難問に立ち向かっていく。
 こう書くと、サスペンス映画の定石のように思えてくる。
 マンションの上の階で殺人事件が起きた。壊された水道管から大量の水が下の階に流れ落ちて、その事件もただの殺人事件ではなくて、流れ落ちた水もただの水ではなくて(どんな事件か、どんな水かは、本をお読みください)、管理会社の若い男が、警察の捜査が終わっていないマンションの庭で、自分のものではない自転車を一心不乱に磨き上げてる(なぜかは、本をお読みください)という場面に出くわすと、ホラー映画の要素も混じってくる。
 何てことを書くのはとても失礼で、これは作者の身に実際に起きたノンフィクションなのです。自分の部屋で起きた事件ではないからと、最初は甘く見ていた作者が、次々と身に降りかかる難問に、深夜ひとりになった瞬間、号泣してしまうなんて場面に出くわすと、作者の思いが伝わってきて、こちらも姿勢を正してしまう。
 ぼくは脚本を書くことを生業としているから、つい不謹慎なことを考えてしまうのだが、敵役とも言える管理会社や不動産屋、保険会社、そして、事件を起こした側の国選弁護人たちのキャラクターもよく描かれていて(国選弁護人が顔を合わせたら若い女性だったなんてのも意外性がある)、よく出来たドラマのような読み方をしてしまう。難問を抱えたヒロインを助けてくれる友人たちのキャラも繊細で力強く、事件はますます佳境に入っていく。ついでに言うと、これだけの友人がまわりにいるというのは、日頃の作者の人柄を思わせるものがあって、ここは、事件と関係なく感動してしまいます。

 殺人事件を起こした人間に、補償を要求しなければならない。そんなときに、あなたはどうしますか? しかも、それが意外な結果になって(どんな風に意外かは、本をお読みください)、これから後は、事件だけの読み物ではなく、突然の事件に巻き込まれたときのノウハウ本の要素も混じってくる。不動産の処理や保険の支払い、ややこしい難題を、実際に経験した作者が分かりやすく説明してくれる(作者も最初は分かりやすいことではなかったらしいが)。
 そして、ついに、こちらも弁護士を頼むことになって、どんな経過で弁護士を選んだか、弁護士の費用というのはどのくらいで、どんな風に査定されるのか。そんなことまで書いてくれているから、事件に遭遇したわけではない人間にも、いざというときには役に立つ。作者がアメリカ在住というだけあって、アメリカと日本の裁判の進め方の違い(双方の欠点と長所)を、事件をアメリカ人に話したときの反応として伝えてくれるから、裁判ものの証言ドキュメンタリーの要素も漂ってくる。
 いろんな要素が含まれて面白い(と、言ってはいけないのだが)だけではなく、ためにもなる(作者はそれどころではなかっただろうが)と思わせるのは、事件をできるだけ客観的に見て、悲劇のヒロインになることなく読み手を楽しませようとする、物書きを長くやってきた人間の作家魂にあるのだから許してもらうことにします。

 作品と関係ないことなのだけど、日本の凶悪犯罪は、この数年、減りつづけていて、昨年の殺人件数は史上最低になるだろうと言われている。毎日のように、事件が起きているような気がするのは、以前は、特異な事件でないかぎり、地方の殺人事件は地方でしか報道されなかったのが、メディアの発達のおかげというか、そのせいで、どんな事件も全国的に報道されるようになったから、事件が増えているような気がするのだということも事実なので、安心して、この作品をお読みください。

(かまた・としお 脚本家)
波 2017年2月号より

目次

第一章 「もしもし、お宅のマンションが水漏れしているもんで」
▼すべては、一本の電話から始まった ▼水漏れの引き金は殺人事件 ▼なぜ、『めでたい苗字』は自転車を拭き続けるのか? ▼上階で何が起きたのか? ▼明けて翌日、水漏れは止まらず ▼私の損害保険は有効か? ▼マンションは今日も雨だった ▼とってもエラ警察の対応 ▼失火元が国 ▼〈開かずの間〉開いた!
第二章 迷走する殺人マンション
容疑者の妻に面会 ▼『グレー不動産の紳士』からの通達 ▼『FXの女王』参上 ▼見積りと腰砕け ▼マンションの共有保険を払い、を拭う ▼賃借人の引越しと要求 ▼「国選弁護人に」と家族は言い ▼マンション管理組合の無関心 ▼号泣する準備はできていなかった ▼「白髪、増えたな」 ▼きれいは汚い、汚いはきれい? ▼ホンジャマカ氏の正体
第三章 救世主は保険会社と弁護士
▼損保会社に書類提出弁護士に依頼 ▼世間のからくり ▼容疑者は鑑定留置中 ▼アメリカ行きの機中にて ▼弁護士の探し方とお金の話
第四章 〈訳ありマンション〉の資産価値
容疑者の国選弁護人、現る ▼損害鑑定人、来たる ▼『建築家』登場す ▼鑑定人、再び来たる ▼損害保険、金九四〇万円也 ▼K弁護士も来たる ▼大手不動産が査定した〈水漏れ部屋〉の値段 ▼売値が一 気に一五〇万円アップ ▼風変わりな商売、〈訳あり物件買取業者 ▼訳あり専門が査定した〈水漏れ部屋〉の値段 ▼売値は九三〇万円 ▼被害請求額を概算してみた ▼売って一から出直そう ▼さらば、マンション!
第五章 裁判ニッポン狂騒曲
▼容疑者の鑑定結果審判 ▼師走の惨事 ▼加害者の事情 ▼提訴原告になった私 ▼だんだんわからなくなってきました〜 ▼提出された刑事記録 ▼秋になっても責任論 ▼初めての法廷体験 ▼アメリカンな夫に理解できない日本の裁判 ▼ほんにお前はのような ▼悪いことをしたらあやまってくれこんな裁判、もー嫌!尋問の朝 ▼『建築家』の堂々たる証言 ▼法廷の涙 ▼弁護士の使命 ▼判決 ▼控訴、どうする?
第六章 水漏れて地は固まるか
▼災難に逢ふ時節には災難に逢ふがよく候 ▼この裁判、アメリカならどうなっていたか? ▼最長級の絶句
あとがき

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