ホーム > 書籍詳細:枕詞はサッちゃん―照れやな詩人、父・阪田寛夫の人生―

童謡「サッちゃん」のモデルは阿川佐和子!?
爆笑必至の“変父”論。

枕詞はサッちゃん―照れやな詩人、父・阪田寛夫の人生―

内藤啓子/著

1,728円(税込)

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発売日:2017/11/30

読み仮名 マクラコトバハサッチャンテレヤナシジンチチサカタヒロオノジンセイ
装幀 100%ORANGE/装画、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 254ページ
ISBN 978-4-10-351361-2
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,728円

「今日からおれをオジサンと呼べ」。離婚して新しい妻と子供ができた時に備えた父から、ある日突然指令が下った。家族の恥部は全て創作のネタにし、本で埋め尽くされた家で「おれはダメだ」と叫んでいた父親失格のひねくれ者に、なぜあんなに優しい詩が書けたのだろう? 爆笑必至、娘が綴る「サッちゃん」の作者のハチャメチャな人生。

著者プロフィール

内藤啓子 ナイトウ・ケイコ

1952年大阪市生まれ。詩人で作家、阪田寛夫の長女。1975年東京女子大学文理学部日本文学科卒業。著書に妹のことを書いた『赤毛のなっちゅん―宝塚を愛し、舞台に生きた妹・大浦みずきに』がある。熱烈な宝塚ファン。

書評

阪田寛夫さんにしっかり会えた気がする

工藤直子

(あ、あの「さかたひろお」さんだ!)。そう思って見上げた阪田さんは、ひょろりと背が高く、すこし傾いて、おじぎしてくださった。それが阪田さんに出会った最初だ。
 阪田さんの詩集『わたしの動物園』(1965年初版)を古本で見つけて昔から愛読していた。「葉月」と「熊にまたがり」という詩が好きで、なんどもなんども暗唱した。

  熊にまたがり屁をこけば
  りんどうの花散りゆけり

  熊にまたがり空見れば
  おれはアホかと思わるる

 昭和56年(1981年)、光村図書出版が「飛ぶ教室」という季刊誌を創刊することになり、阪田さんは、その編集委員(石森延男/今江祥智/尾崎秀樹/河合隼雄/栗原一登の各氏)のお1人だった。その集まりでお目にかかった。
 お目にかかったとたん、私は(とうちゃんに似てる!)とイソイソして、なついちまった。……私は筋金入りのファザコンなのだ。なついて、その後、2年にわたり聞き書きを新聞に掲載する仕事をさせていただいた(『どれみそら』1995年/河出書房新社刊)。じつに「うれしい聞き書き」の日々だった。
 2005年、阪田さんは亡くなられた。私は2度父をなくした気持ちだったから、『枕詞はサッちゃん―照れやな詩人、父・阪田寛夫の人生―』という本が刊行されると知って喜んだ(嬉しいったら、ありゃしない!)。
 本の「まえがき」に、「それでは、阪田寛夫、またの名を、ユロオ、ぽち、ブーちゃん、オジサン(由来については本文をお読みください)の話を始めたいと」とある。
 そう。私たちも阪田さんを、オジサン、オイチャン、などと、呼んで遊んでもらった。
 いま、啓子さんの描く阪田寛夫さんを読み、(寛夫さんと啓子さんの不思議なユーモア、そっくりだ。……親子なんやね)と、笑ったり、ジンとしたりしている。啓子さんは、こう書く。
……父の書いた様々な詩を集めた『全詩集』を、編集者・伊藤英治さんが16年かけて編んでくださった。一〇八七編の詩が載せられている分厚い本だ。
……そして「思わず広辞苑と並べて記念撮影」し、読み返して「面白い詩をたくさん書いたものだ」と感心する。
 そうなんです啓子さん。阪田さんは、奥さんや啓子さんたちを、喧嘩相手にしたり、からかったり、頼りにしたりして、こつこつこつこつ……ほんとうに、こつこつこつこつ、作品を描き続けられたのだと思います。
 啓子さんは、さらに、こんな阪田さんの様子を書く。
……父は本を一冊書くのに段ボール一箱以上の資料を集める。おまけに捨てない。放送台本に楽譜、録音テープ、新聞雑誌の切り抜き、取材にいった先の記念館などのパンフレット、入場券、泊まったホテルの領収書(何故申告に使わなかったのだろう?)。
 啓子さんは整理を始めると、その中から、阪田さんの、子ども時代の落書き帳などを見つけ、
「読むと面白くて手が止まり、片付けはなかなかはかどらなかった。」という。
 この本に出会い、啓子さんの筆によって、含羞の作家の、家族だけが知る、いろんな気配を感じさせてもらい、私は阪田さんに、丸ごと出会えた気がする。
 本の最後は、奥さんのトヨさんの認知症の様子や、阪田さんの精神の衰えの話など、せつない。つらい。しかし、啓子さんは、ぼかさず、きっちり書く。淡々と描写する。それはまるで、きっぱり向き合い見つめ合う父と娘だ。かっこいい。
 そして、啓子さんは最後にこう書く。
……体重は最後に測った時点で三十キロ台まで落ちていた。
……私は霊感などには縁がないし、夢枕に誰かが立つという経験も無かった。今まで見送った家族たちも冷たいもので、夢にも出て来ない。それなのに、喧嘩ばかりしていた父の夢だけ見た。天国なのかどこなのか、細長い食卓を囲み大勢の人が座っている。テーブルの上には湯気の立つ美味しそうなスープが並んでいて、父もその大勢の中に混じってスープを食べている。やがてどこから持ってきたのか、
「おい、見てみい」と、父は自慢げに体重計に乗ってみせた。
「どれどれ、五十キロだ! オジサンやったね」褒めたところで目が覚めた。

 これを読んで私は泣いちまった。

……オイチャン
  よかったね
  大掃除がきらいで
  資料や書き散らしを
  たくさん残しておいて
  ケンカともだちの啓子さんに
  読んでもらえて
  書いてもらえて
  よかったね。

(くどう・なおこ 詩人・童話作家)
波 2017年12月号より

目次

まえがき
サッちゃん
かぜのなかのおかあさん
ああめん そうめん
ところがトッコちゃん
おとうさん
チャンバラ時代
モモジロウ
年めぐり―しりとり唄―
熊にまたがり
幾千万の母たち(戦いよ、終われ)
ぽんこつマーチ
まっしろいこころ
塩・ロウソク・シャボン
スペイン階段の少女
おこってるな
世界地図
さよなら
びりの きもち
おおTAKARAZUKA1984
きつねうどん
チェ・タンゴ・チェ
おれはもうダメだ
鬱の髄から天井見れば
おなかのへるうた
あとがき

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