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いつもかたわらに物語を。
小説や映画と一緒なら、語学はもっと面白い!

物語を忘れた外国語

黒田龍之助/著

1,728円(税込)

本の仕様

発売日:2018/04/26

読み仮名 モノガタリヲワスレタガイコクゴ
装幀 イナキヨシコ/装画、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-351721-4
C-CODE 0080
ジャンル ノンフィクション
定価 1,728円

何のために言葉を学ぶのか? 試験や資格のための勉強では見えてこない、外国語習得の秘訣、大公開! 語学学習で大切なのは、TOEIC対策でも問題集を何周もすることでもありません。小説、映画、テレビドラマetc……、物語から学ぶこと。言葉を知れば、物語の新たな魅力も見えてくる。本当の語学の楽しさ、教えます!

著者プロフィール

黒田龍之助 クロダ・リュウノスケ

1964年生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒、東京大学大学院修了。東京工業大学助教授(ロシア語)、明治大学助教授(英語)を歴任。NHKロシア語講座の講師として、テレビ・ラジオに出演。2018年4月現在、神田外語大学特任教授。外国語の面白さ、それを学ぶ楽しさを語らせたら並ぶ者がないと言われ、著作も多数。著書に『羊皮紙に眠る文字たち』『外国語の水曜日』『ロシア語の余白』『チェコ語の隙間』『ロシア語だけの青春』(いずれも現代書館)、『もっとにぎやかな外国語の世界』『寄り道ふらふら外国語』『寝るまえ5分の外国語』『ことばはフラフラ変わる』(いずれも白水社)、『ぼくたちの英語』『ぼくたちの外国語学部』(いずれも三修社)、『ポケットに外国語を』『その他の外国語エトセトラ』(いずれもちくま文庫)などがある。

書評

物語が語学力を磨く

羽田詩津子

 本書の著者である黒田龍之助さんは長年にわたりロシア語教師をされ、大学で教鞭をとり、テレビやラジオの講座でも教えていた。ロシア語ばかりか英語、フランス語、イタリア語、セルビア語、クロアチア語なども使えるというから、まさに語学の達人である。そんな黒田さんがチェコ語で講演をすることになり、チェコ語のレベルアップをしようと考える。
 まず、チェコ語辞典などから拾いだした単語を黙々とパソコンに打ちこんでいく作業をした。「語彙は外国語の基礎」で「料理でいえば材料」なので、「食材不足ではロクなものができない」からだ。もうひとつはチェコ語本の読書。これは大好きな星新一作品集のチェコ語版を選んだという。おかげで講演は大成功をおさめることができた。
 この例からわかるように、語学力をつけるためには検定試験問題集を何度も解くよりも、物語を原書で読もうと、黒田さんは強く勧めている。大学の英語教師になったときはフィールディングの『トム・ジョーンズ』を原書で読破したそうだ。ここまで読んで、わたしは思わず膝を打った。実はわたしも中学、高校時代、英語の力をつけようとして、子ども向けの本の原書を読んでいたのだ。最初は知らない単語ばかりで何を言っているのかさっぱりわからないところもあったが、すでに日本語で読んでいるので筋はわかる。そんなことをしている暇があったら、読解問題を解いた方が受験には有利では? と思う方もいるかもしれないが、結局、英語の底力はこうした原書の読書で養えたと信じている。黒田さんも「外国語で読書をする場合、心がけるべきはすべてを分かろうとしないことである」と言っている。そう、わからないところは飛ばしてどんどん読み進めばいいのだ。
 本だけではなく、映像の力を借りてもいい。黒田さんはアガサ・クリスティーのBBC放送のドラマを見てから、英語で小説を読んだそうだ。映画も字幕と音声をさまざまな組み合わせにして繰り返し見ることで、「最高の外国語教師」となりうる。
 また、本書ではさまざまな言語が登場する小説がたくさん紹介されるが、どれも読んでみたいものばかりだ。とりわけ、湊かなえの『絶唱』に登場するというトンガ語には興味をひかれた。日本語学習者には同じ作者のベストセラー『告白』を勧めているが、この英訳書なら日本人英語学習者によさそうだ。スウェーデン語、エストニア語、リトアニア語、オランダ語、フランス語、ロシア語、アブハズ語など聞いたこともない言語を含め、架空の言葉モルバニア語まで登場する数々の本の読書案内は、読んでいて興趣が尽きない。
 翻訳を生業とするわたしにとって、とりわけ興味深かったのは、翻訳が「頭にスッと入っていきすぎる・・・とつまらない」という意見だ。最近の翻訳は、とにかく読みやすくわかりやすく、が優先されているように思える。しかし、こういう意見もあるということを頭のどこかにとどめておきたいと思う。外国の土地ならではの歴史や文化が翻訳文にも残っていて、そのため読者にとって多少理解しづらくなっているとしても、そこがいいのだ、たとえるなら「ワインの渋み」のようなものだ、と黒田さんは力説する。機械翻訳では絶対に出せない「渋み」を評価する黒田さんの言葉に、翻訳家として力をもらえた。
 言葉に注目した小説や映画の考察もおもしろいが、この本の魅力はなんといっても、ユーモアたっぷり、切れ味鋭い文体だと思う。最後の章で、シェークスピアチェーホフの戯曲はピンとこなかったが、ニール・サイモンにはハマったと書かれていて納得した。「喜劇」で「作品のテンポ」がよく、「セリフのカッコよさ」があるニール・サイモンの魅力は、まさに黒田さんの文章の魅力そのものなのだ。読んでいて実に爽快だった。おまけに読書中、にやにや笑いでずっと口角が上がっていたので、アンチエイジングにもなったかもしれない。黒田さんの語学についての考えに心から共感したので、さっそく明日からニール・サイモンの映像作品で翻訳に役立つせりふを楽しく勉強してみるつもりだ。

(はた・しずこ 翻訳家)
波 2018年5月号より
単行本刊行時掲載

目次

はじめに ライ麦畑の語学教師
第一章 犬神家の英文講読
第二章 ボッコちゃんの動詞活用
第三章 横道世之介の和仏辞典
第四章 細雪のウクライナ語?
第五章 砂の器の日本語の器
第六章 スウェーデン語の謎
第七章 モルバニア国へようこそ!
第八章 エストニア語行き星の切符
第九章 マイ・フェア・言語学者?
第十章 太陽系共通語のルーツ
第十一章 オランダ語のナインチェ、フランス語のラパン
第十二章 物語の中の文法用語
第十三章 私的ソビエト文学案内
第十四章 ウホッホ社会言語学
第十五章 アジアの外国語教室から
第十六章 外国語・シネマ・パラダイス
第十七章 物語と外国語、おかしな二人
あとがき

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