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たけしがたどりついた“究極の愛”。
狂暴なまでに純粋な、書下ろし恋愛小説。
「人生で一度だけ、こんな恋がしたいと思った。」

アナログ

ビートたけし/著

1,296円(税込)

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発売日:2017/09/22

読み仮名 アナログ
装幀 ビートたけし/題字、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 174ページ
ISBN 978-4-10-381222-7
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,296円

「お互いに会いたいという気持ちがあれば、絶対に会えますよ」すべてがデジタル化する世界で悟とみゆきが交わした、たったひとつの不器用な約束。素性も連絡先も知らないまま、なぜか強烈に惹かれあう二人の、「アナログ」な関係が始まった。いまや成立しがたい男女のあり方を描き、“誰かを大切にする”とは何かを問いかける渾身の長編。

著者プロフィール

ビートたけし ビート・タケシ

1947(昭和22)年、東京都足立区生まれ。漫才コンビ「ツービート」で一世を風靡。その後、テレビやラジオのほか、映画や出版の世界でも活躍。1997年「HANA-BI」がベネチア国際映画祭グランプリを受賞。著書に『間抜けの構造』『テレビじゃ言えない』『アナログ』など。

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書評

わかり合うより重要なのは

角田光代

 水島悟は設計会社の一部門である、工業デザインを扱う研究所で働いている。三田のマンションでひとり暮らしをし、仕事帰りには高校時代からの友人たちと飲み、休みの日には埼玉の施設に入居している母親に会いにいく。職業も住まいも暮らしぶりもイマドキの若人に見える悟だが、イマドキの「便利さ」「いけてる感」が苦手で、自身の暮らしからは排している。都心に住みながら彼が好んで通うのは、昔ながらの家族経営の食堂だし、友人たちといくのも広尾の焼き鳥屋。デザインの仕事もコンピュータ処理ではなく手作業を好む。かといって、コンピュータも携帯電話も現代的ツールは一切合切拒絶しているわけではない。彼が信じられるものは、デジタルではなくアナログ的なもの、ということになる。
 悟はあるとき広尾の喫茶店でみゆきという名の女性と出会う。ひょんなことから言葉を交わし、ある約束をする。相手を拘束するような約束ではない。しかも2人は、なんとなくの成りゆき上、携帯の電話番号もメールアドレスも交換しない取り決めを交わす。連絡を取り合わないという条件の上に、約束を交わしたことになる。
 この2人の取り決めを、異様だと思うか、それもありだと思うかは、年齢によってわかれるはずだ。だれかに連絡したいときに、すでに携帯電話が存在していた世代にとっては、この2人の関係は矛盾した、一種異様なものに思えるだろう。親しくなろうとしているのに、親しくなることを拒否している、そういう矛盾である。
 成長後に携帯電話が普及した世代は、この2人のありようにさほど抵抗はないはずだ。私を含むその世代が若かったときにはこのような通信手段はなかった。恋人が待ち合わせにこなければ、何時間でも待つか、あきらめて帰るしかなかった。固定電話はあるが、居留守などいくらでも使える。会いたくない人に会わなくなるのは今よりずっとかんたんだった。それは裏返すと、会いたい人に会うのは今よりずっとたいへんだった、ということだ。だから、古い世代に属する私にとって、この2人の取り決めはそう不思議でも異様でもなく、運命を信じたい理由がそれぞれにあるのだろうとすんなりと納得する。携帯電話がない時代、会いたい人に会い続けるのは運命だった。約束をしていなくてもばったり会い続けるのはまさに運命だし、また、おたがいが同じ気持ちで会おうとしているかぎり会える、これもある意味で運命だし、ちょっとした奇跡だ。
 この小説を説明するのに私は幾度か「信じる」という言葉を使っているが、まさにそれが悟という人間をあらわしている。信じられるか、信じられないか。それが彼の人生の尺度であり基準だ。彼が信じられないものは合理的でも偽物であり、彼が信じられるものは実体がなくても本物になる。
 本物の最たるものが、母だ。父親のいない悟にとって、母親は観音さまみたいな存在である。彼の母親への思いは信仰に近い。信仰心が満たされることがないように、彼の思慕の念が満たされることはない。彼が求めているのは母の愛ではなく、母の愛に報いる何かだからだ。彼の感じる母の愛は大きすぎて、それに見合うものを報いきれない。そのことに悟はずっと苦しんでいる。そしてそれは、悟にとっての愛し方である。愛を求めるのではなく、愛を与えるのでもなく、信じ、かつ、信じたものに報いようとする姿勢こそが。
 この小説がいわゆる「ふつうの」恋愛小説と異なるのは、みゆきという女性の内面がいっさい描かれないところだ。みゆきが何を思い、悟に何を感じているのか、読み手にはわからない。しかし、だから悟とのあいだに焦れったい軋轢はない。誤解したり早合点したりすることもなく、言葉足らずや不要な言葉で相手を傷つけることもない。2人のあいだにあるのは感情よりむしろ運命だ。携帯電話を介さないことで、彼らがつながろうとした唯一の方法である。悟が、もしかしたら恋より性より信じているものとしての、運命。
 帯には恋愛小説と書いてあるし、分類としてはそれが正しいのだけれど、私にはなんとなく求道小説と呼びたいような作品だった。わかり合うことより信じることに重きを置き、捧げられることではなく捧げることを願い、与えられることより報いることに心を砕く、悟の愛のありようによって、そう思うのだ。

(かくた・みつよ 作家)
波 2017年11月号より

インタビュー/対談/エッセイ

男と女は会った瞬間が一番いい

ビートたけし又吉直樹

ビートたけしさんが70歳にして挑んだのは、なんと自身初となる恋愛小説。
芸人の後輩であり、小説を書くにあたって刺激を受けたという芥川賞作家の又吉直樹さんと、お笑いと恋愛と文学について語りました。

芸人には文学の力がある

又吉 『アナログ』は初の恋愛小説ということなんですが、たけしさんはこれまでも『少年』や『菊次郎とさき』などたくさん小説を執筆してこられましたね。
たけし ゴーストライターですけど。
又吉 最初から言いますか、それ(笑)。
たけし 喋ったんだけどほとんど書いた覚えがないから、後から読んで「はあーこういう本だったのか」と気づく今日この頃です。でも今回は本当に自分で書いたからね。ペンだこできちゃったよ。
又吉 手書きで書かれたんですか?
たけし まずはノートにボールペンで書いて、4冊目になったところでワードに打ち込んでいったの。又吉先生はどうやって書いてるんですか?
又吉 いやいや、先生じゃないですよ(笑)。僕は初めからパソコンですね。
たけし 今は普通そうだよな。だけど俺もし本が売れたら、そのノートを1ページずつ破ってネットオークションに出そうと思ってんだ。1枚5万くらいで売れたら大儲けだなと思って。ときどき、行間に「コマネチ」って書くつもり。
又吉 売れるでしょうね(笑)。
たけし 俺は前から、簡潔に言葉を選んで、短い時間で笑いに持っていく漫才師には文学の力があるはずだって言ってきたの。自分では失敗してきたけど、又吉さんみたいな成功者が出てよかったなと思ったね。
又吉 そんな、とんでもないです。だけど芸人が小説を書けるはずっていうのは、僕も同じ気持ちでした。最初から小説家の人っていないじゃないですか。色々な職業の人が作家になっていく。そういう意味では、芸人は日常的にネタを書いて架空の自分を動かしているところがあるから、作家性みたいなものをある程度は持っているんじゃないかと思っていたんです。それをたけしさんに言っていただけるのは、すごく嬉しいですね。
たけし しかし『火花』の書き出しには驚いちゃったね。花火大会で興行師に呼ばれて漫才するっていうのは俺もよくやってたんだけど、視点が文学だなって。俺にも演台の上に立った漫才師の視点があるはずなんだけど、夏のアスファルトの熱気、海岸のむせ返るような暑さなんかの描写を読んでさ、あ、これが文学なんだと思ったわけ。当たり前なんだけど、どこに視点を置くかが表現なんだよな。あれを漫才でやると「暑くてよ、熱海の営業で参っちゃうんだ、花火がバンバンバンバン上がってよ、ウケねえし誰も聞いてねえしよ、だけどよ、すごい先輩がいてな」っていきなり毒蝮三太夫みたいになっちゃうんだよな。
又吉 (笑)。僕、『アナログ』はたけしさんが書いたってことを一旦忘れようと思って読ませていただいたんですが、本当に作品の世界に引き込まれました。すごく面白かったです。でもたまに、普段たけしさんがお話しされてることとかぶる部分もあったりして。
たけし かぶったり、ずれたり、もうヅラ話が大好きで(笑)。いつもの癖で、小説でも止まんなくなっちゃうんだよな。そのネタならノート1冊分あるんだけど、いま俺は純愛小説書いてるんだって自分に言い聞かせて、2、3ネタで終わらせるのに苦労いたしました。
又吉 そんなご苦労もあったんですか(笑)。主人公の男性が、建築デザイナーじゃないですか。モノを作る人間の、仕事に対するあり方と恋愛に対する向き合い方が共鳴するというところ、すごく面白かったです。人間の生業と恋愛がお互いに影響を与えているというのは、僕自身が小説を書くときにも意識したことだったので。
たけし 俺ね『火花』も『劇場』も久々に一生懸命、理解しようと思って読んでみたんだ。まあまあ、理解できた。だけど根本的に俺と又吉さんで違うのはね、育った時代のお笑いだとも気付いたんだよな。
又吉 なるほど、そうかもしれないです。
たけし 又吉さんの時代は俺が知ってる漫才ブームの後に生まれた漫才なの。芸が洗練されてんだ。俺の時代はもっと粗野っていうか、面白い先輩って言っても「なんかクルクルパーだけど、凄いな」くらいの跳ね方だった(笑)。でも今トップにいる人たちっていうのは、うまい漫才をいっぱい見て育った、センスのある人なんだよね。だから又吉さんが書く凄い人と、俺にとっての凄い人って、なんか別世界の人みたいなんだよ。
又吉 でもたけしさんの時代の方が、よりルールがないというか、無茶苦茶な先輩がいらした印象があります。
たけし 俺が好きだったのは、漫才中に手品ばっかしてた先輩。鳩出してツッコミに「鳥出すな」って怒られるっていう。
又吉 それ面白いですね(笑)。
たけし そういうことが許される時代だったんだよね。あの頃はスターを作る土壌があったんだよ。野球でいうと、長嶋さんよりイチローの方が断然バッティングうまいと思うんだけど、やっぱり長嶋さんの方がめちゃくちゃ人気あったっていうのと似てるよね。今はお笑いも上手い人がたくさんいて、情報もたくさんあって、みんなが頭並べてる中で突き抜けようがない状態じゃない。『火花』に出てくる先輩は確かに突き抜けてるんだけど、散々ネットで叩かれたりした人たちの跳ね方っていうのかな。生々しいというか、明るくないんだよね。
又吉 ああ、そうですね。
たけし 大変だよね。
又吉 僕らも漫才のショーレースに出た時、大先輩の審査員の方からダメ出しされたことがあるんです。「君のタイプだったら昔○○という人がいて、ネタ中にポケットからうどん出したりしたよ」って言われたんですけど、今の時代なかなかうどんは出しづらいなと思って(笑)。そういう無意識の流れみたいなものから抜け出したいっていう気持ちもあるんですけどね。

たけしと又吉、恋愛を語る

又吉 でも僕、今日たけしさんに伺いたかったんですけど、これまでいろんな映画を撮られてきたじゃないですか。今なぜこのタイミングで、小説をもう一度書こうと思われたんですか?
たけし 実は最初、映画のプロットとして考えてたの。
又吉 あ、そうだったんですか。
たけし うん。俺の映画は暴力だけで「たけしは男と女を描けない」なんて言ってる野郎がいやがって。腹立ったんで男と女の話を撮ってやる! って書き始めたら純愛小説になっちゃった。恥ずかしい話、まともな恋愛なんてしたことないんだけど……これまで恋愛したのはソープランドくらいのもので、俺は会ったその日が恋愛ってタイプだから。
又吉 そうなんですか。
たけし いや俺はね、あのう、男と女っていうのはね、そのう、会った瞬間が一番いいんだと思ってるわけ。
又吉 ああ、なんか分かる気がします。
たけし うん。「あ、いいな」と思った時が一番その子を好きな瞬間で、その後の好きになっていく気持ちは妥協でしかないと思ってるの。本当はその場で押し倒したいんだけど、今の法律だと人間社会に悪影響があるんで、いろいろ奢ったりして罪を薄めているだけであって。
又吉 (笑)。
たけし 1回目で押し倒したら暴行になるけど、10日も付き合えば合意の上になって、1ヶ月したら恋愛って呼んでいいんだと思ってんの。
又吉 なるほど、恋愛と呼ぶまでには我慢が必要なんですね。
たけし でも我慢できるようになると、最初の出会いのようにどう補っていくかが問題なんだよ。相手にいいとこ見せようとか思い始めると、初めのテンションには敵わないという感じがするね。
又吉 でも今回の小説は、そのテンションが続いていく感じがありました。
たけし うん、だってセックスシーン書いてないもん。手も握ってない。『劇場』にも性的な描写ってないね。
又吉 もちろん2人の間にはそういうこともあるんでしょうけど、永田という主人公は他人に言わないやろうなって。最初にたけしさんが仰ったみたいに、恋人の沙希とか別の視点だったら、そういう話も出てきたかもしれないですけど。
たけし 男3人だと酔っ払って「あの女としたの?」とかくだらない下ネタも言わせるんだけど、いざ女性と2人きりになると何言わせればいいのか俺もわからないの(笑)。でもギャング映画たくさん撮ったから、男女の話をやってみたかったんだ。いろんなものに手を出すわりにはどれもダメなんだけどねえ。
又吉 いや、そんなこと(笑)。
たけし 俺、近代五種だったら優勝できると思ってるんだ。芸能っていう総合ではオリンピック候補になれるはずなんだけど、単発の競技だと順位に入ってこないんだよなあ。

お笑いとの戦い

又吉 たけしさんは、何をされている時が一番幸せなんですか?
たけし やっぱり自虐的なゴルフだね。
又吉 それはなんですか?
たけし ガッと打って「あ~OBかよ」「畜生、また入んねえ」「帰りの道混んでやがる」っていう(笑)。もう自虐的なのが楽しいね。
又吉 へえー!! うまくいくことが幸せではないんですか。
たけし うまくいかないのが嬉しいね、意外に。料理屋行っても「まずい」「こんな値段取んのかよ」とか、とにかくひどい目に遭った自分が好きなんだよね。その分だけ悪口で稼いでやろうと思っちゃう。浅草行って芸人になろうとした時に、自虐的な方が面白いと思ったんだよな。売れなくて、酒飲んで死んでいったとしても漫才だよなって。終わりから考えちゃうようなとこあるんだよね。死に場所を見つけた、みたいに思ったところがあったのかもしれない。
又吉 たけしさんは小説を書く時も結末を考えてから書かれるんですか?
たけし 映画と同じで4コマ漫画みたいに起承転結を考えて、最後にこの画で終わるんだっていうのは決めてるね。
又吉 僕はまだ2作しかないんですけど、人物の関係性から考え始めて最後までは決めずに書いたんです。書きながら登場人物が言った言葉を自分なりに解釈していったりして。
たけし 俺はやっぱりお笑いと同じで、オチをつけたがるってとこがあるかもしれない。お笑いとの戦いだね。でもガルシア=マルケスの『族長の秋』を読んだ時に「なんか夢みたいだな」っていう読後感が好きで、そういう作品を自分でも書いてみたいって思ったんだ。
又吉 夢という話でいうと『アナログ』の作中人物の会話に、落語の「芝浜」が出てくるじゃないですか。もちろん話の構造は違うんですけど、「芝浜」を聴いてから『アナログ』をもう一回読むと面白いと思うんですよね。
たけし なるほどね。又吉さんの小説を読んだ時に「うわ、俺これ書けない」って思ってちょっとショックだったんだけど、これは書けると思っちゃいけないんだと思ったの。できないものを真似してもしょうがないし、変な言い方かもしれないけど、又吉さんに俺には上手い文学的表現はできないんだって教えてもらったというか。有り難かったね。俺はもっと単刀直入な、漫才とか落語表現なんかが得意だから、それでガンガン行こうかなと。きれいな装飾ができないんだったら、シンプルに書くしかない。だから自分なりの書き方を見つけられたのは又吉さんの存在があったからだね。だって芥川賞だよ、お笑いにとってもいいよ。「芥川賞作家、万引きで捕まる」とか人生使ってネタにもできるし。
又吉 芥川賞作家って確かにフリになりますもんね。
たけし そうそう、だから俺偉くなりたいのよ。文化勲章とかもらった後に立ち小便で捕まったりしたら、いいじゃない。
又吉 幸せな自虐タイムですね。
たけし やっぱり最後はオイラ、そういうお笑い的発想になっちゃうんだ。
又吉 こんなにたけしさんとゆっくりお話できることはないので、最後は立ち小便の話でしたけど(笑)、今日は光栄でした。
たけし 『』読者の皆さんも『アナログ』買ってくださいね、ゲラを読んだ人がガンが治ったりですね、家出をした女房が帰ってきたり、子どもが東大に受かったなどいいことずくめです。
又吉 読者の皆さん、あくまで個人の感想です。

(びーとたけし 芸人・作家)
(またよし・なおき 芸人・作家)
波 2017年10月号より

たけしさん大重版おめでとう! 直筆サイン本&サインポスターが当たるぞキャンペーン

ビートたけしさん初の恋愛小説『アナログ』の大重版を記念して、みなさまの感想をツイッターで募集いたします。#アナログ感想 をつけてつぶやいてくださった方の中から抽選で、ビートたけしさんのサイン入り『アナログ』書籍を3名様、サイン入り『アナログ』非売品ポスターを3名様にプレゼントいたします! 

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募集期間

2017年9月26日~10月31日(23時59分まで)

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