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神さま、あなたの出番はまだです。患者さんの痛みは、私たちが和らげますから――。

野の花ホスピスだより

徳永進/著

1,512円(税込)

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発売日:2009/08/27

読み仮名 ノノハナホスピスダヨリ
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 220ページ
ISBN 978-4-10-388903-8
C-CODE 0095
ジャンル 科学
定価 1,512円

死が遠くではない患者さんの希望と選択を支えたい――そんな思いで開設した19床の野の花診療所。「わし、先生のこと大好き。ここで死なせてつかんせぇ」「楽になったら生きとうなって、まあ、人間っていい加減なもん」「最高だったよ、ありがと」。大空へ旅立つ人の、見送る人の、ことばと涙と微笑みを、鳥取からお届けします。

著者プロフィール

徳永進 トクナガ・ススム

1948(昭和23)年、鳥取県生まれ。京都大学医学部卒業。鳥取赤十字病院の内科医などを経て、2001(平成13)年12月、鳥取市内にホスピスケアのある「野の花診療所」を開設。『こんなときどうする?』『死の文化を豊かに』『てんしさん』『詩と死をむすぶもの』『野の花の入院案内』『死ぬのは、こわい?』など著書多数。

目次

I 野の花の人々
空いた2号室/笑うって難しい/五年生の力/二つの宿題/お別れ会/天寿がん/息抜き、失敗/「ハイ」を使い分ける/野の花ポスト/うれしい小包/パタパタ/とんがる心/豆電球/鳥取のさくら/分かりますかあ/百八十歳の漂流/月曜のラウンジ/ピッコロの言葉/アンラーン/オシメの東さん/おかえり/沈潜する言葉/十日の月/ふくろう/最後のコーヒー/オカアサーン/小さなレーダー/混沌の場/キムタク/たこ焼き/あのもん/ありがとう/花の六十歳/気持ちをくむ/ドンドン、パー/おさらば/イテテノテ/こ・わ・い/朝方、親方死ス/おれについてこい/とらわれる/野の花に飽きず/漁師気質/I(アイ)ターン/いのちの糸/初めての個展/手のひら/老いいろいろ/伝書鳩/父の思い出/黒い心/町の水車小屋/地球の文化/広ーい空、青ーい海/忍者ハットリくん/厨房ネットワーク/天河/ひとり/二人の服職人/励まし人間/生きたい/いつ死んでも/私たちのがん/なかよし時間
II 野の花通信から
病む人とともに/湧いてくること/飽きない/いちインチ/ジレンマ、あるよなあ/そば、そば/神様/「ー」/Nurse(ナース)の和語/つい、つられて/家族の存在/友だち/かげのキーパーソンず/相反するものがあってこそ/音合わせ/私の星座
III 野の花カルテ
生死の体操/ええけえ/助けてあげて/死亡日指定!?/ボルタレン坐薬/土手のすかんぽ/海からの風/タケノコ林/メロン畑/あさって/手の力/飲まない薬/身体と言葉/ビビ、ビビ/受容の受容/大切なこと/おやすみ/走りきる/心を解く/ひいきメロン/前倒し/絶品イチゴ/いのち飛行/ペルソナ/庭の桜/カントリー・ドクター/意気投合/生きてたあ/揺れる/未練がひとつ/星からのメール/冬の星座
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

波 2009年9月号より 二十三時間、いつでも診ます――著者とのQ&A

徳永進

――野の花診療所(ホスピスケアのある19床の診療所)は病院らしくない建物と聞いていましたが、本当にそうですね。周囲は竹垣ですし、床も木! ほかに苦心されたところを教えてください。
人って排泄で自分を失う。失禁もそうだし、排泄のことで他人さまの世話になるって辛い体験です。ベッドサイドから40センチのところに水洗トイレを用意しました。立って一歩踏み出せる限りは自分の世界が保てる。人間って、他の動物と同じく動物です。一歩が難しくなる。そこからがまた新たな課題。課題は尽きることはない。
壁はアイボリー色の漆喰。うるしを塗ったぶ厚い日記綴り台にシンプルなスタンド。照明は電燈色。でも工夫って、病状によっては何の役にも立たぬという宿命を持っている。
――二十四時間営業がモットー、在宅で療養中の方々の往診もあって大忙し。先生ご自身の健康管理は? 気分転換は?
開業して五年間は、「二十四時間、いつでも診ます」とパンフレットに書きました。でもやってみると、二十四時間は難しいと感じました。それで六年目からは書き替えました。「二十三時間、いつでも診ます」
健康管理ですかあ? 困りましたね。管理は苦手で、自己管理できてない。日曜の夕方に一時間ほど、裏山散歩をします。でも一番の健康法は、往診であちこちの山や谷の村を走ることかな。四季の巡りを見て、深呼吸をすること。仕事の中に気分転換の仕組みがある。
――『野の花ホスピスだより』を読んだ人は、「私もいざという時は野の花診療所に行きたい」と思うかもしれません。入院の資格(?)みたいなものはあるのでしょうか。鳥取にご縁がないとダメですか?
思って思ってー。ほんとは「深い悩み」を持っているひとならどなたでも可。でも、自分では悩みさえ感じる力を失って、路上にでも倒れんとする人が到着されると、ナースたちの手は自然に伸びてくでしょうね。鳥取に縁がない人、大いに歓迎です。縁って、あるのもいいけど、ないのが格別いいですね。これも新たな縁。見知らぬ人と出会うこと。お互いに予期せぬ力を生み出しますね。
――診療所でボランティアをしておられた女性が、亡くなる前に「一番楽しかったこと、ここでボランティアやったことや」と言われて……。感動しました。
ほんと、あの人、すごいと思う。でもなぜそう言えたのか、と考える。自然が大好きだった。人間も。ちょっと変わった人が大好きだった。やりたくないことは「やらない」、と断言。ハンディーある人を引っぱり上げることはせず、伴走者として行動してた。「好き」という言葉をよく使った。「これ、大好きなの」。診察室に飾ってある須田剋太の少女の絵を見て、「これ、剋太でしょ」と見抜いた。びっくりした。
――先生も看護師さんも厨房の方も、患者さんの希望と選択を支えようと努力しておられます。喫煙コーナーもあるそうで、びっくり。希望とわがままの違いはありますか?
喫煙コーナーは先日閉鎖し、第二面談室として新しくデビューしました。引き戸にステンドガラスがはまっていて、ぼくはその空間、好きですね。誰よりもぼくはわがままなので、第二面談室に座って、一息ついたり、短い面談をします。希望とわがままって同じ、好きとえこひいきみたいに、って思ってます。
――この本の中で、たくさんの人が亡くなります。読後、その方々から大切なものを贈られたような気がして、ありがとう、を言いたくなりました。
ありがとうございます。同感。でも書き手としては、ありがとうとは違う感情が別にあります。「すいません」だったり、「すごいっ」だったり、「敬礼っ!」だったり。患者さん全体をとらえることなんかできなくて、狭い角度からほんの一部を描写したに過ぎないけれど、そういう失礼を実行しながら、いつも「すごい、この人」、という敬意だけは、ぼくの中で涸れたことはないですねえ。

(とくなが・すすむ 医師)

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