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大それた試みかもしれない。でも書かずにはいられなかった。書下ろし2002枚。

クラシック 私だけの名曲1001曲

宮城谷昌光/著

6,264円(税込)

本の仕様

発売日:2003/07/31

読み仮名 クラシックワタシダケノメイキョクセンイチキョク
発行形態 書籍、電子書籍
判型 A5判
頁数 1,038ページ
ISBN 978-4-10-400411-9
C-CODE 0073
ジャンル 文学賞受賞作家、音楽理論・音楽論、音楽
定価 6,264円
電子書籍 価格 5,011円
電子書籍 配信開始日 2015/02/06

音楽はありとあらゆることを教えてくれる。喜び、生きることにつきまとう、どうしようもない哀しみ、その表現方法……音楽は小説であり、私自身の生き方そのものである――。四十年余にわたり、こよなく愛し、聴き惚れた名曲から1001曲を厳選。さらに最良の演奏を特選し、魅力の真髄を伝える、世界に比類なき音楽エッセイ。

著者プロフィール

宮城谷昌光 ミヤギタニ・マサミツ

1945(昭和20)年、愛知県生れ。早稲田大学第一文学部英文科卒。出版社勤務等を経て1991(平成3)年、『天空の舟』で新田次郎文学賞を、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。1993年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞受賞。2000年、司馬遼太郎賞受賞。2001年、『子産』で吉川英治文学賞受賞。2006年、紫綬褒章受章。『晏子』『玉人』『史記の風景』『楽毅』『侠骨記』『沈黙の王』『管仲』『香乱記』『二国志』『古城の風景』『春秋名臣列伝』『楚漢名臣列伝』『風は山河より』『新三河物語』『呉越春秋 湖底の城』『草原の風』等著書多数。2013年には10年にわたって「文藝春秋」で連載した『三国志』を完結した。

書評

波 2003年8月号より CD棚をのぞき見する楽しみ  宮城谷昌光『クラシック 私だけの名曲1001曲』

吉松隆

「愛読書は?」と訊かれて「ゲーテ、シェークスピア、紫式部です」などと答える人がいたら、「ほう、変わったご趣味ですね」くらいの皮肉は言われそうだが、クラシック音楽に限ってはまだまだ「バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンです」などと言って不思議に思われない。不思議だ。
確かに古典文学の名作を引っ張り出して読みふけることも一生のうち何度かはあるけれど、日々読んで楽しむのはやはりシェークスピアよりは村上春樹、コナン・ドイルよりは島田荘司、司馬遷よりは宮城谷昌光だったりするわけで、本棚にも最近買った好きな作家の新刊や新人の話題作に混じって昔からの愛読書が何冊か並んでいるというくらいが普通の読書家なのではなかろうか。
となると、クラシック音楽のマニアというのもそうあるべきであって、いかに天才の作品と言えども二百年近く昔に(電話もTVも冷蔵庫も飛行機もない)遠い遠いヨーロッパの一都市でドイツ語をしゃべっていた男たちの書いた音楽より、自分の時代・地域・文化に近い社会に生きていた(つまり近代現代の)作曲家が書いた音楽の方により共感を感じるのが(古典の大名作より多少出来は甘くても)当然というもの。
特に、最近のように「CDの時代」ともなると、音楽もまた書物と同じように「古典」でも「新作」でも「中古」でも「限定品」でも「荷崩れ品」でも、同じようなCDケースの中にパックされて(同じような値段で)巷に浮遊しているのだから、コンサートの時代とは全く違った聴き方、蒐集の仕方があり得る。「クラシック」だからと言って百年も前から学校の音楽室に並んでいるようなお仕着せの名作ばかりを聴いている場合ではないのだ。
まさに、そんな時代の「私的音楽コレクション」というべき書が、今回のこの大著。本棚に並んだ書物を見ればその人の趣味や性格と共に人生も分かるというが、CD棚にもおなじようなことが言える。だから、まさに宮城谷昌光氏のCD棚をのぞき見る機会を与えられた読み手としては、そのコレクションの組み合わせの妙に(氏の作品世界を重ね見つつ)、思わず感心したり首を傾げたり共感の拍手をしたりしてしまうのだ。
なにしろ交響曲にしても、大御所ベートーヴェンは軽く往なし、人気のチャイコフスキーやマーラーは無視して、バントック、ベルワルド、マニャール、パリー、チャドウィック、マルティヌーなどといった作曲家たち(このうち一人でも知っていたら相当なマニア!)の交響曲に聴きふける。一方、古典的名作として外せないベートーヴェンの弦楽四重奏(全16曲)やピアノソナタ(全32曲)はみっちり紹介する。そんな「好き嫌い全開で切り捨て御免でありながら、音楽の基本はしっかり押さえる」という絶妙の「アンバランスさ」に氏の音楽への偏愛と溺愛が込められていて、思わずニヤリとしてしまう。
しかも、本棚に「愛読書」ばかりが並んでいるわけではないように、この書も「お薦め品」ばかりが並んでいるわけではない。例えば……「この曲は、たいした曲ではない。だから、人には薦めない」(ショスタコーヴィチの項)に始まり、「よくもこれほど愛想のない曲を作ったものだ。(中略)通常の市民生活を送っている人は、この曲には近づかないほうがよい」(同コッコネン)、「あんな曲を薦める人の気がしれない。そういえば小林秀雄がフランクの交響曲を聴いて、吐いた、という文がある。(中略)さすがに私は吐かなかったが、二度と聴くものではないとおもった」(同フランク)……という具合。逆に、そこまで言われるとどんな曲かぜひ聴きたくなるではないか。
しかし、特にレアな近代現代作品などで、ペンが滑ったふりをして音楽の核心を突くあたり、一家を成した「作家の目」が鋭くあちこちに光り、気が抜けない。例えば……「名曲を並列化するだけで、その曲とともに生きた時間を提示できない批評などは読むに価しない」(同ダンディ)という宣言とともに、「芸術作品は敬愛されなければならない。(中略)万人に共有されるものではないが、孤立して枯死するようなものであってはならない」(同ディティユー)などと喝破するあたり、職業的な音楽評論家では踏み込めない孤高の音楽愛好家ならではの確信犯的世界がある。
ただ、私も変な曲の蒐集マニアとしては人後に落ちないと思っているのだが、それでもこの書に紹介してある作曲家の五分の一、作品の三分の一は「見たことも聴いたこともない」ので、通常の市民生活を送っている人は推して知るべし。
ホレーショ、世の中にはまだまだ知らないことがあるのだ。

(よしまつ・たかし 作曲家)

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