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ホンマでっか!? 「生物のルール」をめぐる言説の真偽を読み解く88講。

生物学の「ウソ」と「ホント」―最新生物学88の謎―

池田清彦/著

1,404円(税込)

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発売日:2015/03/18

読み仮名 セイブツガクノウソトホントサイシンセイブツガクハチジュウハチノナゾ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 204ページ
ISBN 978-4-10-423111-9
C-CODE 0095
ジャンル 生物・バイオテクノロジー
定価 1,404円
電子書籍 価格 1,123円
電子書籍 配信開始日 2015/09/11

シーラカンスはなぜ進化しないのか。哺乳類はなぜ長生きしないのか。女心と秋の空が移ろいやすいのはなぜか。ナマケモノはなぜ怠け者なのか。人間の能力を決めているのは遺伝か環境か──。生物をめぐる根源的な疑問から、目の前で起きている不思議な現象のしくみまで。最新の知見を尽くして明快に説く、腑に落ちる生物学講座。

著者プロフィール

池田清彦 イケダ・キヨヒコ

1947(昭和22)年、東京生れ。東京教育大学理学部卒業。東京都立大学大学院生物学専攻博士課程修了。山梨大学教育人間科学部教授を経て、2004(平成16)年4月より早稲田大学国際教養学部教授。構造主義生物学の地平から、多分野にわたって評論活動を行っている。著書に『構造主義生物学とは何か』『構造主義と進化論』『分類という思想』『新しい生物学の教科書』『環境問題のウソ』『「進化論」を書き換える』『世間のカラクリ』、共著に『ほんとうの環境問題』『マツ☆キヨ』などがある。

目次

INTRODUCTION 生物学が解明している現象と、解明できていない現象
Ⅰ 生物進化の謎
生命はどのように誕生したのか
史上最大の生態系破壊者とは何か
サンゴはなぜ色とりどりなのか
寄生虫の謎
真核生物はどのようにして誕生したか
シーラカンスはなぜ進化しないのか
哺乳類はなぜ長生きできないのか
哺乳類より魚類や爬虫類の寿命が長いのはなぜか
植物が動物より長生きなのはなぜか
恐竜の謎
爬虫類はなぜ多様なのか
恐竜はなぜ巨大化したのか
熱帯に昆虫が多いのはなぜか
昆虫の進化の謎
甲虫の起源は?
II 生命とは何か――遺伝子と細胞の謎
生命とは何か
「不老不死」は可能か
クマムシはなぜ不死身なのか
ヒトが「冷凍人間」となって生き返るのは可能か
生物の能力は脳細胞の数に比例するか
「STAP細胞」に世界中の生物学者が仰天したのはなぜか
「STAP細胞」の真偽問題の核心にあるもの
免疫とは何か
自己免疫病を引き起こすものは何か
DNAとは何か
タンパク質を作る遺伝情報の「暗号」の謎
一つの遺伝子がいくつもの異なるタンパク質を作れるのはなぜか
免疫細胞の多様性の基礎となっているのは?
インフルエンザウイルスはなぜニワトリで強毒性になるのか
幼形成熟の謎
幼虫のまま生殖する種の生存戦略は?
昆虫の成虫の体が再生不能なのはなぜか
III ♂と♀――性と生殖の謎
オスなしで子供を作れるコモドドラゴンの謎
ヒトのオスが不要にならずにすんだのはなぜか
ライオンのオスの役割とは
近くのオスより遠いオスにひかれるのはなぜか
「女心と秋の空」が移ろいやすいのはなぜか
なぜオスとメスがいるのか
生殖能力を放棄した「兵隊アブラムシ」とは
クマノミが性転換するのはなぜか
昆虫のメスが生涯数度しか交尾しなくても受精卵を産み続けるのはなぜか
オス・メスを決めているのは何か
男と女の心性の違いは何に起因するのか
なぜオスは大きな角を持つのか――オオツノコクヌストモドキの場合
IV 環境と生態の謎
ナマケモノはなぜ「怠け者」なのか
草食動物はどうやってタンパク質を摂るのか
毒をもつのはどんな動物か
虫の分布は何によって決まるのか
擬態の謎(一)
擬態の謎(二)
素数ゼミの謎
セミの鳴き声の謎
一方が増えれば一方が減るセミの謎
セミの棲み分けの謎
ホタルの発光パターンの謎
多くの虫が単食性・狭食性なのはなぜか
外来生物は悪者なのか
ガウゼの法則
ダイオウグソクムシが食べなくても生きていけるのはなぜか
蛾や蝉はなぜ「飛んで火に入る夏の虫」なのか
一番エコロジカルな食べ物は何か
美味な虫は何か
街路樹の実は食べられるか
なぜスズメが減少しているのか
なぜツバメが減少しているのか
新種のカミキリムシ発見
ネキダリスに関して奄美だけが特殊なのはなぜか
生物の名前の謎
最も低酸素に強い魚は何か
なぜクジラは巨大化したのか
極地の海でも動物が多くいるのはなぜか
生態系にとって動物はどのような存在か
「東洋のガラパゴス」小笠原に生息している唯一の固有鳥類は?
メグロはなぜ「怠け者」になったのか
絶滅危惧種を救う方法は?
小笠原の父島・母島はどうしてグリーンアノールだらけになったのか
V ヒトの謎
人類の脳容量が急激に大きくなったのはなぜか
「ミトコンドリア・イブ」とは何か
ネアンデルタール人と現生人類の混血児はどうなったのか
クオリアの謎
人間の能力を決めているのは遺伝か環境か
花粉症の謎
ヒトと共生する微生物の謎
感染症はいつから発生したのか
エマージング・ウイルスが人間を宿主にするのはなぜか
エイズが恐ろしい病気になったのは人間がエロくなったせい?
がんを放置しても治療しても予後に差はない。なぜか
ヒトの寿命はどうすれば延びるか

インタビュー/対談/エッセイ

波 2015年4月号より [『生物学の「ウソ」と「ホント」―最新生物学88の謎―』刊行記念インタビュー]  わからないことだらけの「生物のルール」

池田清彦

――今回の新刊では、生物をめぐる根源的な疑問から、不思議な生命現象の仕組みまで、様々なトピックを扱っていますが、ひと口に「生物学」といってもその対象領域は広大ですね。
池田 ミクロな物質レベルの研究は生化学にも近いし、たとえば古生物の研究のような地球レベルの話は地学ともその領域が重なる。もっと極端な例で言うと、生物の起源は天体から降ってきたというような話は、天文学にも近くなってくるわけです。つまり、分子の世界も生態系全体も全部、生物学の対象になるのだから、とにかくとても広範だよね。
そして、それらを全部知っている生物学者は、いない。今は、ミクロのレベルでも、たとえば細胞のミトコンドリアだけを研究しているとか、専門がより細分化している。そういう専門家同士は横のつながりがあまりないし、自分のやっている学問の対象に深くのめり込んでいく一方で、それが全体のなかでどんな位置にあり、どういう意味があるのか、わからなくなりがちです。
僕は、もともと実験はあまりやっていなかったし、若い頃にやっていたフィールドワークもその後やらなくなった一方で、いろんな人の本や論文を読んで、様々なレベルのことに興味を持ってきたから、相応にいろんなことを知っては、考え、本を書いているんだけれども、個々の専門家から見れば情報が古いと言われてしまうところもあるだろうね。どうしたって、ジャーナル(査読つきの学術論文誌)に載ったときにはもう、それは少し古い話になってしまっている。最先端の研究をやっている専門家は常にもっと先を行っているから。

――今回の本『生物学の「ウソ」と「ホント」』のサブタイトルは、「最新生物学88の謎」ですが……。
池田 一般読者に対しては「最新」といっても問題はないだろうと思いますよ。それに、生物学者にしても自分の専門外のことについては僕が本に書いているような話をほとんど知らなかったりする。生物学全体について広範囲に語れる人というのが、ほとんどいないんです。また、広範囲に知っている人がいても、そういう人は今、大学の教授とか研究者にはなかなかなれないしね。医学部でも、理学部でも、教授になるためには、専門的な、査読つきの論文を書かなくてはならない。そのためには、特殊な実験をしなければならなかったり、あるいは、新しい理論を構築するにしても、ある領域の最先端の話にしなくてはならない。昔はそれぞれの専門がそんなに細かく分かれていなくて、知識レベルもそんなに深くはなかったから、自分の専門領域を研究しながら生物学の全領域もカバーするような人もいたけれども、今はそういう人があまりいないんですよ。僕としては、多くの人に「生命とは何か」とか「生物とはどういうものか」とか、そんなようなことに興味を持ってもらいたいと思っているから、できるだけ広範囲に、様々なトピックを選んで、なんとか面白く読めるように、今回のような本も書いているんだけどね。

――様々なトピックを通して読者の方々に知ってもらいたいと考えているのは、大まかにいえば、どんなことですか。
池田 生物の原理は極めて曖昧だということです。もちろん、原理がないわけではない。それなりにルールがちゃんとあるんだけれど、なかなかそれをうまく明示的に記述することができない。物質と密接に関係しているルールはかなり厳密に決まっている。たとえば遺伝暗号のルールはほとんどの生物に共通の厳密に決まっているルールですね。「免疫」も物質のレベルの話ではあるけれど、高分子になって、タンパク質同士の関係になるわけで、そうすると、ルールが少し曖昧になるというか、ちょっといい加減になってくる。メインのルールはあるんだけど、そこにサブのルールがあれこれ絡んで、ひとつのルールでは説明できないことが起こる。アノマリーが生じて自己免疫病になったり、アナフィラキシーが起きたりメインのルールに反するようなことが起こるわけです。

――メインのルールに反するといっても、生物独特のルールが物理化学法則に反する別個のものということではないですよね。
池田 生物のルールは恣意的に適当に決まっているんだけど、物理化学法則に矛盾しているわけではない。物理化学法則の場合は、力学的にも化学的にも最も安定なところに落ちるから、わりに一意に決着するというか、必然的にあるところに落ちつく。生物のルールの場合は、物理化学的に安定なところ、最も蓋然性があるところにかならずしも落ちつかないで、不安定なところに留まることが多い。だから、ヘンチクリンに見える。普通の物理化学・熱力学的に、いちばん安定しているところに落ち着くわけではなく、可能性を限定してルール化しているのが、生物のルールなんです。物理化学法則で全部説明しろと言われてもとうてい説明できないわけで、何かローカルなルールが働いているのかもしれないけれども、生物の場合はわからないことが多すぎる。
また、ルールがわかったと思っても、そのルールが途中で変わってしまうというようなことも生物ではあるからね。

――ルールが途中で変わるというのは、たとえば?
池田 進化がそうですよね。それまでのルールと違うことを、途中からしはじめるわけでしょ。そのために生物の形が大きく変わってしまったりするわけで。
ヒトならヒトの、受精卵から人間になるルールの範囲の中で起きることは、すべての人間に共通することだから、その共通性を取り出して示せば、それが人間の体の中を司っているルールだとわかるわけだけど、もしそれが途中で変われば、別の生物になってしまうことも起こるわけです。そういうことは普通の物理化学のルールの下では起こり得ないでしょう。そもそも人間の形はどうやってできるのか、すべてを厳密に記述するなんてことを、誰もできていないわけだから、そういう意味では、人間のルールはちっともわかっていないわけです。わからないからといって、「神が創った」と言ってしまったら、それは生物学的には「ウソ」だし、それ以上の進歩もなくなってしまいます。生気論のようなもので説明してしまうのは、“生物学のルール”に反するというか、それはもはや科学ではないんだよね。
不思議な現象を前にすると、物理化学とは関係なく、「神が決めた」とか、そういう話になりがちだけど、科学というのはわからないことがある限りは進歩するわけです。もしもすべてがわかって、すべてを説明できたら、それで終わりです。
ネオダーウィニストは、自然選択と突然変異ですべて進化を説明しようとするんだけど、それって神が生物を創ったという話と大して変わらないでしょう? そんな、わからないところを単純化して説明してわかったような気にしてしまうやり方は、いま、いろんなところに蔓延っている。たとえばCO2が増加したのが地球温暖化の主因だという単純な言説もそうですね。
原因がいっぱいあるであろうことを全部、ひとつの原因やひとつの法則で説明してしまいたがるのは、なぜなんだろうね。人間にはそういうパトスでもあるのかねえ……?

――サブタイトルにあるように、今回の本では「88の謎」を扱っているわけですが、それらの「謎」を全部、解き明かしているわけではないですしね。
池田 わからないものはわからないからね。

――わからないものについて、「なぜわからないか」ということを説明している項目もあります。
池田 さっき言ったように、科学というのは、わからないことがある限りは進歩するし、すべてを説明できたら、それで終わり。生物に関して「全部、解けました」と言っている人がもしいたら、それはたぶんインチキだと思う。
複雑な何かを統一理論で説明できそうだとなると、それが魅力的に見えてしまうのだろうけれど、実際はなかなかそうはいかない。とりわけ生物の場合はなかなかそうはいかない。
ともあれ、今の生物学が解明できている現象もあれば、解明できていないと思われる現象もあるわけで、まだ解明されていない事柄について、僕の本を読んで、「じゃあ、その謎は私が解いてやろう」という人が出てくれば、それはそれでもちろん大歓迎ですよ(笑)。

(いけだ・きよひこ 生物学者)

判型違い(文庫)

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