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なぜこれが名建築なのか? 住宅名人の建築家ならではの視点で解き明かす。

意中の建築(下巻)

中村好文/著

3,024円(税込)

本の仕様

発売日:2005/09/22

読み仮名 イチュウノケンチク2
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 B5判
頁数 143ページ
ISBN 978-4-10-435005-6
C-CODE 0052
ジャンル 住宅建築・家づくり
定価 3,024円

建築を見学するのに理屈なんかいらない。建築は「理解」するものではなく、見て、触って、包み込まれて感じるものだ――ル・コルビュジエの推敲が透けて見える住宅、改修の名手カルロ・スカルパによる古城の美術館、北欧の森にたつ小さな礼拝堂、抽象画のように美しい沖縄の石塀、“名建築”の見方がぐっと広がります。読者のための見学案内つき。

著者プロフィール

中村好文 ナカムラ・ヨシフミ

建築家。1948年千葉県生まれ。1972年武蔵野美術大学建築学科卒業。宍道建築設計事務所勤務の後、都立品川職業訓練校木工科で学ぶ。1976年から1980年まで吉村順三設計事務所に勤務。1981年レミングハウスを設立。1987年「三谷さんの家」で第1回吉岡賞受賞。1993年「一連の住宅作品」で第18回吉田五十八賞特別賞を受賞。現在、日本大学生産工学部居住空間デザインコース教授。著作は『住宅巡礼』『住宅読本』(ともに新潮社)、『普段着の住宅術』(王国社)、柏木博氏との共著に『普請の顛末』(岩波書店)などがある。

インタビュー/対談/エッセイ

[『意中の建築』上巻・下巻 刊行記念ミニ対談]
建築をめぐる旅は、人生の糧となる

三谷龍二中村好文

三谷龍二さんは、中村さんの旅仲間。
「意中の建築」を訪ね歩いた道中の裏話を
あれこれ語り合っていただきました。



三谷 しょっちゅう旅に出かけてるよね。
中村 そうかな。今年は少ないよ。
三谷 そんなことないんじゃない。一月にバリ島、六月にアメリカ西海岸、これは僕も一緒に行ったけど。八月はインドネシア。秋もどっか行くんじゃなかった?
中村 そうだ。十一月にシチリアへ行くんだった。



三谷 僕が中村さんと知り合ったのは自宅の設計をしてもらった時だから、もう二十年以上前になる。一緒に旅に行くようになったのは、そのしばらく後で、最初の旅はフランスのロマネスク巡りだった。ブルゴーニュのオータンやプロヴァンスのル・トロネ、セナンクの修道院を見て回ったんだけど、中村さんは二回目だって言ってたよね。
中村 そう。あの後さらに二回行ってる。去年本になったけど(とんぼの本『フランスロマネスクを巡る旅』)。僕は気に入ったところに何度も出かけて行くタイプ。年に七、八回、少ないときでも年に三、四回は海外に建築を見に行く。建築だけじゃなく、それぞれの土地の習慣や暮らしぶりを見るのも楽しいんだ。
三谷 旅先での中村さんは、とにかく早起き・上機嫌。目覚めた瞬間から鼻歌。
中村 夜は余興。
三谷 サービス精神旺盛だからね。前にベトナムに五人くらいで旅行したとき、みんなでぞろぞろバスルームに入って行ったことがあった。何だろうと思ってたら、「ファッション・ショー」って言いながらアオザイを着て出てきた!
中村 だって旅って夜けっこう暇じゃない。それに旅先だといくらでも楽しいこと思いつくしね。
三谷 新聞をつくる時もあるよね。
中村 レミング・タイムス。僕がねずみ年で事務所の名前がレミングハウスだから。
三谷 ぜんぶ中村さんの手書き。
中村 フォーマットを用意して行って、旅で起こる出来事や同行メンバーの失敗談などを面白おかしく新聞記事に仕立てる。天気欄もあるし、「弥次喜多」っていう天声人語的な欄もある。年末年始に旅行に出たときなんかは、元旦の朝早起きして各部屋のドアの下から差し込んでおいてあげたり。楽しいけどけっこう手間がかかるんだ。
三谷 歌う日というのも必ずある。
中村 歌い出すと止まんないんだな、これが。
三谷 一晩中歌い続けて、朝目が覚めてまた鼻歌。



三谷 この本には上下巻で二十五の建築が載ってるけれど、中村さんと一緒に行ったのが五つ、勧められて自分で行ったのが五つある。なかでもヴェローナのカステルヴェッキオ美術館は、中村さんのイチ押しで僕の初めての海外旅行先。
中村 十四世紀の古城をカルロ・スカルパが改修して美術館にしてる。
三谷 そこへ行って初めて改修ってこんなに素晴らしいものかと思った。
中村 あれはスカルパの最高傑作だね。僕が見たなかでは一番いい。
三谷 場所もよかった。町を流れる大きな河のほとりにたっていて、美術館へ入るのに橋を渡るんだ。
中村 確かに場所性というのはあるよね。いい建築はいい場所に建ってる。
三谷 観光地では感じられない何かがそこに宿ってる感じがする。そういう意味でも今度ぜひ行ってみたいのは韓国の河回村。
中村 あそこはいいよ。村全体が李朝時代のたたずまいを残していて。ソウルからバスか電車で五~六時間かかるけど、車窓の風景もいいし。オンドルのある民宿に泊まって村を散歩すると、なんとも穏やかな気持ちになる。
三谷 穏やかといえば豊多摩監獄。中村さんの撮った写真を見ると、通路の天窓から崇高な光が射していて意外だった。
中村 思想犯を収容してた十字舎房ね。今はもう取り壊されてないけど、解体前に法務局に掛け合って見学させてもらったんだ。独居房も意外に居心地よさそうだった。ロマネスクの僧室を思い出したほど。
三谷 そうなんだ。でも考えてみたら、中村さんの仕事は住宅設計がほとんどなのに、この監獄をはじめ、教会、美術館、図書館、オフィスビル、天文台、学校等々、「意中の建築」は住宅以外のものが多いよね。それはなぜなんだろう。
中村 う~ん……。僕は見たものをすぐに自分の住宅の仕事に役立てようと考えてないからじゃない。音楽を聴いたり、絵を見たりするのと同じくらいの気持ちで建築を見てる。自分の専門だから少しは注意深く見てるかもしれないけど。
三谷 泊まった部屋は必ず実測してメモをとってるよね。
中村 本当は部屋に入ってすぐ、散らからないうちにやるのがいいんだけど、僕は帰り際派。夏休みの宿題は最後まで残すタイプだから。
三谷 あの実測データはどうするの?
中村 データが大事なのではなくて、その実測作業が建築家の勘を養うのに役立って来たような気がする。部屋の広さ、天井の高さ、窓と壁のバランス関係、照明の工夫など、居心地の良さを生み出すためには何が必要か、五感を総動員して感じるには実測したりスケッチするのが手っ取り早くて確実な方法なんだよ。洗面所、浴室、トイレなどは、動作寸法が大切だし快適性が問われる場所だから、特に念入りに観察する。ま、一種の職業病だね。
三谷さんはどう? 建築が専門ではないけれど、よく一緒に旅に行ってるよね。
三谷 僕の仕事は木を使って日常の器や匙をつくったりすることだから、直接的に関係してくるわけじゃない。けれど、空間を見たり、生活者としての視点からそこにある暮らしの「感じ」をみるのが楽しい。建築的なことはよくわからないけれど。
中村 でも建築を見学するのに理屈なんかいらないと思う。なんか特別なものみたいな感じにみんな思ってるけど、専門的な知識がなければ分からない建築は、結局いい建築じゃないんだよ。建築は理解するものじゃなくて、見て、触って、包み込まれて感じるものだと思う。絵画や音楽と同じで、全体で発してくるものをどう受け止めるか。知識も何もいらない。むしろ感受性が大事。
たとえばラ・ホヤにあるソーク生物学研究所。あれなんて理屈をいえばいろいろあるかもしれないけど、建物の発するオーラが強いから誰が見ても素晴らしいって思える。だから何時間いても飽きない。
三谷 僕は自分でそんなに咀嚼できず、わけもわからず、なんとなく自分にとってこれはいいなと思いながら見てるだけなんだけどね。ただ、建築をめぐる旅というのは、その時じゃなくてそれから何年かしてスーッと出てくるところがあるような気がする。そういうなかで自分のなかに残ってくるものがある。
中村 それが三谷さんの気持ちのいい暮らしにつながり、その手からシンプルで美しいかたちを作り出していく。その延長上にあるのが、十月に出る三谷さんの初めての本『木の匙』だと僕は思ってる。だからとても愉しみにしてるんだ。



三谷 『意中の建築』はもともと「芸術新潮」の連載で僕も毎月読んでいたけど、あちこち行ってるな、いいなと思ってたよ。
中村 よくないよ~。旅して見学するだけならいいけど、本業の設計の仕事と大学教師の合間を縫って旅に行って、帰ってきて原稿書いて、イラスト描いて。しかも月刊誌でしょう。何度も穴をあけそうになって、締め切りが来るたびに担当編集者も僕も胃がキリキリするようになり、ある時期から「意中の建築」じゃなくて「胃痛の建築」と呼んでたんだよ。
三谷 その甲斐あって、読む人を誘って案内してる感じがすごくする。非常にわかりやすい文章に「ここが見たい」というポイントをおさえた写真やイラストが加わるから、行ったことのある場所はもちろん、行ったことのない場所でもイメージがわく。だからこれを寝る前に読んで朝起きると、一瞬、本に出てくる建築のなかで目覚めたような気がしたことが二回もあった。
中村 ほんとに?
三谷 一つは栗林公園の掬月亭の座敷。もう一つはカステルヴェッキオ美術館。朝起きたら展示室にいたんだよ。
中村 「夢中の建築」って呼ぼうか?

(なかむら・よしふみ 建築家)
(みたに・りゅうじ 木工作家)
波 2005年10月号より

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