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腐りゆく巨大企業の恐るべき現実!

腐蝕生保〔下〕

高杉良/著

1,944円(税込)

本の仕様

発売日:2006/11/15

読み仮名 フショクセイホ2
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 390ページ
ISBN 978-4-10-454703-6
C-CODE 0093
ジャンル 経済・社会小説
定価 1,944円

業界に君臨するガリバー・大日生命。絶対服従を誓った無能な副社長が社長の座を禅譲されたその瞬間から、名門企業の墜落が始まった。戦略なき役員たち。追従する本部スタッフ。トップの醜い公私混同――。過酷なノルマにのたうち自殺者すら出す支社に赴いた“一選抜”エリート・吉原の孤独な闘いの行方は……。経済小説の金字塔。

著者プロフィール

高杉良 タカスギ・リョウ

1939(昭和14)年、東京生れ。化学専門紙記者、編集長を経て、1975年「虚構の城」で作家デビュー。以来、経済界全般にわたって材を得て、綿密な取材に裏打ちされた問題作、話題作を次々に発表している。主な作品に『小説 日本興業銀行』『労働貴族』『広報室沈黙す』『燃ゆるとき』『王国の崩壊』『金融腐蝕列島』『不撓不屈』『乱気流』『挑戦 巨大外資』『反乱する管理職』『青年社長』『破戒者たち』『人事の嵐』『第四権力』『小説ヤマト運輸』『めぐみ園の夏』等がある。

目次

第七章 営業最前線(承前)
第八章 海外出張
第九章 支部長会議
第十章 風評営業
第十一章 ノルマの犠牲者
第十二章 社長直訴
第十三章 社員総代
第十四章 全社経営会議
第十五章 “拝啓秘書役殿”

インタビュー/対談/エッセイ

波 2006年12月号より 巨大生保の莫大な資産はこうして食いつぶされる!  『腐蝕生保』上・下巻刊行記念 高杉良氏 特別インタビュー  なぜ今、生保なのか  高杉 良『腐蝕生保』〔上・下〕

編集部

 業界に君臨するガリバー・大日生命を舞台に据えた経済巨編『腐蝕生保』がついに単行本として刊行されます。絶対服従を誓った無能な副社長が社長の座を禅譲された瞬間から始まった名門企業の墜落が、「一選抜」エリート・吉原周平の目を通して、余すところなくあぶり出されています。
戦略なき役員や、恐怖政治に追従するだけの本部スタッフ、トップの醜い公私混同、ノルマに責め立てられる現場の様子が克明に描かれ、週刊ダイヤモンド連載中から異常なまでに読者からの反響が大きかった経済巨編について伺いました。

   なぜ今、生保なのか

――高杉作品の中でも特に読者の関心が大きかったのはどうしてだとお考えですか。
高杉 生命保険会社は、身近でありながら、非常に分かりにくいんですね。それは株式会社として株主総会なりではっきりと決算が発表される業態とは違って、相互会社という形態をとっているからです。相互会社の意思決定機関である「総代会」は「シャンシャン総会」でしかなく、はっきりとした経営課題が示されないので、経営陣は容易にミスを隠すことが出来ます。いまは株価が上がっているので、生保もようやく一息ついていますが、一時期は保険金不払い問題などが多々起こったように、基本的な解決は先送りにされたままです。業務改善命令が一度ならず発令されたにもかかわらず、トップの交代もなく安穏としているなどということは、株主に対する責任を負っている他の業界では考えられません。その経営の不透明感は誰もが感じていることで、それをはっきりした形で知りたいという人が多かったことが週刊ダイヤモンドへの反響として現れたのではないかと思います。
――病んでいるのは銀行業界だけではないということでしょうか。
高杉 いままで銀行については「金融腐蝕列島」などで書いてきました。生保というのは、日本の金融業界にとてつもない影響力を持っています。この作品でも銀行との資本の持ち合いなど、生保と銀行の関係に踏み込んでいますが、巨大生保の資産はメガバンクをも凌ぐほどです。それほどの資産を持っている会社の実態を書くことは、日本の金融業界はもちろんのこと一般の人々への問題提起にもなっていると自負しています。
――巨大生保の暗部をあぶり出すために、相当多くの方に取材をなさったと伺いました。
高杉 「生保」というテーマはもう何年も前から暖めていたものです。取材に関しては、執筆を意識する前から始めていました。巨大生保のトップクラス、まさにボードの中枢にいる人たちともずいぶん話をしましたし、生保業界のOBや最前線にいる生保レディにも取材をしています。しかしもちろん綿密な取材はしますが、僕が書いているのはあくまで「小説」です。生保に対して厳しすぎるかな、というようなことも書きましたが、聞いた中には書けないような話もありました。連載を始めてから、「もっと酷いことがある」とか「自分の勤める会社の将来に希望がもてないのはこういう訳だ」などと、実際に日々骨身を削っている生保業界のミドルエイジからリアルな反応が戻ってくることもありました。やはり実際の現場にいる人にとっては、現実は小説よりも過酷だということでしょうね。保険業界で頑張っているミドルのなかには、本当に自分の会社とトップに絶望している人がたくさんいます。

   デキる人間はモテる?

――小説中にもノルマに押しつぶされて自殺者が出る場面が描かれています。
高杉 仕事に対するストイックさ、会社へのロイヤリティは日本人の特性ですね。ノルマを達成しようとするあまり、「自爆」と呼ばれる保険料を自分で肩代わりする方法を使って、とりあえずのノルマを凌ぐ。しかしいつまでも金が続くわけはありませんから、自宅を担保にしたり、サラ金に借金をするまで追いつめられてしまう。
――ノルマの犠牲者に対する大日生命の冷たさには、ぞっとします。外資系の保険会社の台頭が著しいのも頷けるということでしょうね。
高杉 今回の作品のメインテーマは、いくらミドルエイジが頑張っても、腐りきったトップが君臨している会社に未来はないということです。ノルマを押しつけるだけ押しつけておきながら、脱落した者は容赦なく切り捨て、上層部は知らん顔です。そういう体質だから、実際に現場に出る生保レディにしても、その数は激減しています。大量に採用してもあまりのノルマのきつさにどんどん辞めていってしまうのです。生き残っていけるのはすごく優秀な女性だけ。生保レディたちが営業の現場でいかに苦悩しているかも書きましたが、生半可な知識でノルマが達成できるほど保険の営業は甘くないんですね。
――吉原が不本意な異動を命じられ、支部長として気の強い生保レディたちをとりまとめていく場面には思わず胸が熱くなりました。やはりデキる人間は女性にも支持されるんでしょうか。
高杉 人間はわかりやすい生き物ですよ。仕事だけが良くできるということは基本的にあり得ない。よく遊び、よく学べじゃないけれど、仕事ができるとすれば、それは人間的な魅力があるからでしょう。そういう人間は必然的に女性にもモテる。主人公の吉原もちょっと軽くて女性ともうまく付き合ったりしますが、仕事に邁進するパワーと女性に弱い部分が融合してこそ、ひとりの人間なんじゃないでしょうか。ヒーローが何事に於いても清潔なんてリアルじゃないと僕は思っています。

   驚愕のラストシーン

――読みどころのひとつとして、同僚たちの先頭に立って経営陣と戦う吉原の悪戦苦闘ぶりが挙げられます。自分の正義を貫こうとする吉原の姿勢は、ある種の男のロマンで巨大なファン層が存在しますが、今回は熱気の量においては同じでもこれまで高杉さんがお書きになってきた小説とは少し違う結末が用意されていて驚きました。
高杉 そうですね。小説として読んだときの面白さはもちろんですが、現実をいかに捉えるかということを考えてラストシーンを書きました。吉原は非常に優秀な男で、経験も実績もある。年齢も四十代半ばで体力的にも衰えていない男が、どうしようもなく腐ったトップと対峙せざるを得なくなったとき、どうするか。ミドルエイジのサラリーマンというのはいつの時代も、上からは圧力をかけられ下から突き上げられるという悲哀を抱えて生きていかねばなりません。そのとき、自分を曲げて我慢を重ねるか、新天地を求めるのか、それは誰もが一度は考えることでしょう。吉原のした選択が彼の仕事人生において正解だったのかは、長い時間が経たなければ分かりませんが、その時点では道はそれしかなかったということです。
――確かに「会社を辞める」ことを一度も考えたことがないサラリーマンはそうそういないと思います。では、最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。
高杉 この本を読んでいただくことによって、ミドルエイジのサラリーマンの人たちが少しでも元気になってくれればいいと思います。小説として面白かったなでもいいですし、自分の会社はこんなに酷くなくてよかった、でも構いません。とにかく明日も頑張って仕事をしようと思っていただけたらと思います。この小説を読むことで、吉原の生き方のどこかに自分を投影し、仕事に対するモチベーションをあげてもらえたら、作者としてこんなに嬉しいことはありません。

(たかすぎ・りょう 作家)

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