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クール・ジャパンはディズニーを超えた!

菊とポケモン―グローバル化する日本の文化力―

アン・アリスン/著、実川元子/訳

2,484円(税込)

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発売日:2010/08/31

読み仮名 キクトポケモングローバルカスルニホンノブンカリョク
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 412ページ
ISBN 978-4-10-506221-7
C-CODE 0098
ジャンル 文化人類学・民俗学
定価 2,484円

今や「日本的」であることが「かっこいい」。米国ではアメリカ人が日本風アニメやマンガを作って売るご時勢だ。そんな超現象のさきがけとなったゴジラ、鉄腕アトム、パワーレンジャー、セーラームーン、たまごっちにポケットモンスター。気鋭の文化人類学者がその波瀾の航跡をたどる。『菊と刀』を凌駕する、新世紀日本論。

著者プロフィール

アン・アリスン Allison,Anne

文化人類学者。デューク大学ロバート・O・コヘイン研究室教授。現代日本の日常生活における政治経済と想像的な夢想世界との相互関係を研究。著書に、東京でホステスとして働いた経験をもとに、サラリーマンの夜の社交生活を考察した“Night-work:Sexuality,Pleasure and Corporate Masculinity in a Tokyo Hostess Club”(University of Chicago Press,1994)、マンガを通して日本の母子関係を分析した“Permitted and Prohibited Desires:Mothers,Comics,and Censorship in Japan”(University of California Press,2000)がある。上智大学で教鞭をとっていたことがあり、調査のために現在も頻繁に来日。現在は21世紀の日本と日本人の調査をもとに、不安定な状況に置かれている労働者の実態と社会不安が、未来にどのような希望(もしくは絶望)をもたらしているか、という問題に関する著書を執筆中。

実川元子 ジツカワ・モトコ

翻訳家/ノンフィクションライター。兵庫県生まれ。上智大学外国語学部仏語科卒。近訳書に『サッカーが勝ち取った自由』(C・コール&M・クローズ著 白水社)、『人はなぜSEXをするのか?』(S・モアレム著 アスペクト)、『堕落する高級ブランド』(D・トーマス著 講談社)、著書に『受けてみたフィンランドの教育』(共著 文藝春秋)、『ココ・シャネル』(理論社)などがある。

目次

序文
第1章 魔法をかけられた商品
第2章 灰燼から立ち上がるサイボーグ
――復興の時代
第3章 新世紀の日本
――親密さのなかの疎外感 新世紀の親密さ
第4章 パワーレンジャー
――国境を超えたスーパーヒーロー
第5章 セーラームーン
――少女たちの華麗なアクションファンタジー
第6章 たまごっち
――精霊となる人工装具
第7章 ポケットモンスター
――ポケモンをゲットすることと資本主義とコミュニケーションをとること
第8章 「全部ゲットしちゃおう!」
――米国(と世界)のポケモニゼーション
エピローグ
謝辞
日本語版刊行によせて
訳者あとがき
原注
参考文献

インタビュー/対談/エッセイ

波 2010年9月号より 【著者インタビュー】気鋭の文化人類学者がクール・ジャパンを斬る!

アン・アリスン

アメリカの文化的覇権が衰退し、Cool Japan(かっこいい日本)と呼ばれる我が国のアニメ、マンガ、ビデオゲームが世界の子供たちを虜にしている。グローバル市場を席巻するキャラクターたちの未来はどこへ向かうのか?


  文化人類学とクール・ジャパン


――アリスンさんは文化人類学者で、アメリカのデューク大学の教授でいらっしゃいます。二年前には上智大学でも教鞭をとっていたそうですが、本書で日本の子供の遊びをテーマにしたのはどういうきっかけだったのですか?
アリスン 私たち家族は一九八七年から八八年にかけて東京に住んでいました。息子がふたり(当時五歳と二歳)おりまして、この本を書くきっかけになったのは、下の子が日本のマンガ、アニメ、ビデオゲームのファンだったからです。仮面ライダーやその他の変身ものにぞっこんで、それの何が彼を虜にしているのだろうと調べ始めたのです。

――戦後のポップカルチャーに着目し、海外に出ていったゴジラからポケモンにいたる代表選手的商品に共通する特徴を論じていますね。
アリスン 精神分析学理論を数年学び、フロイトが幼児の性的嗜好について使ったpolymorphous perversity(フロイト心理学では「多形倒錯」と邦訳されている。本書の日本語版では、「多様変容」の訳語をあてた)の概念に行き当たりました。本書ではこの言葉を性的なものとしてではなく、クール・ジャパンのファンタジーにおける特徴、つまり子供たちの欲望の流動性や柔軟性を論考するにふさわしいので採用しました。もうひとつの特徴を表す「テクノ-アニミズム」は私のオリジナルです。森羅万象に生命が宿るとするアニミズムはクール・ジャパンに顕著ですが、それを特別なものにしているのがテクノロジー。この両者をひとつの概念として表現するのに適した言葉です。

――日本のアニミズムは先住民族であるアイヌの生活にも根付いています。縄文人に遡るという説もあります。その特徴を有するクール・ジャパンはアメリカ文化から見ると異質ですよね?
アリスン おもしろい見方です。確かに日本にはアメリカや他の国々にはないアニミズム信奉の文化的歴史があります。私もそのことを本書で指摘しています。しかし、ひとつの場所に特定の文化的伝統が存在するからといって、歴史の流れのなかのある区切られた時空間において実際にそれが作用し、普及しているわけではない。私見ですが、「文化」は思うような形にでき、特定の時空間における行為者、出来事、関心によって積極的に形成されるものです。クール・ジャパンも、アーティスト、エディター、プロデューサー、そしてファンたち、これらの人々の力でポップカルチャーとしてのスタイルを持つことができている。「ジャパニーズ」というブランドを得ているわけです。もちろん、クール・ジャパンは日本のものです。しかし文化の流れは変わります。たとえば、いまの「アメリカ文化」を表しているのは西部劇じゃなくてヒップホップ。クール・ジャパンのファンはアメリカにも大勢いるし、ヒップホップのファンは日本にも沢山いる。つまり、場所が違うから文化が著しく異なるというのではない。その観点で言うと、昨今アニミズムもグローバル化している。クール・ジャパンのおかげです! ちなみにアニミズム的宇宙哲学はアメリカ先住民族にもあります。自然と和合していく世界観をもっている文化は他にもたくさんあるのです。こうなると、日本の文化だけが絶対的に異質だということにはなりませんよね。


  「アメリカ化」ということ


――本書で取り上げられているゴジラ、鉄腕アトム、セーラームーン、たまごっち、そしてポケモンですが、彼らがアメリカ市場に出るためには、いわゆる「アメリカ化」が行われました。これはある意味、オリジナルへの損傷と受け取る向きもあるのではないでしょうか?
アリスン 「アメリカ化」は日本製品だけではなく、他の国々の製品についても行われてきました。嘆かわしいことです。しかし、これについては二点、指摘しておきたいことがあります。ひとつに、どの国においても、外国のものを自国の文化に取り入れるときには、「現地化」という過程が入ります。たとえば、日本で広告やTシャツのデザインなどに使われる英語はすごく「日本化」されています。中華料理もアメリカ風だったり、日本風だったりしますよね。もうひとつは、アメリカは二十世紀のあいだ、ハリウッド、ディズニーなどの文化産業を以てグローバル文化圏を占領してきたので、この分野においてとりわけ傲慢になっていました。「アメリカ化」が文化覇権のひとつのかたちになっていたのです。しかし、本書にもありますが、ポケモンになると「アメリカ化」はほとんど目立たなくなっている。日本のアニメにしてもイタリアの映画にしても、外国作品をオリジナルで見たいという願望がアメリカのファンのなかで強くなっているからです。


  グローバル化の代償


――敗戦国日本に対するアメリカ側の偏見はなかったのでしょうか?
アリスン 答はイエス、そしてノーでもあります。戦後という長い期間、ご質問にあるように、アメリカは日本文化を文字通り戦勝者のレンズ越しに見ていました。しかし、それは政治家や国の指導者ではなく、文化産業市場を動かしている人たち、プロデューサーや映画脚本家、コミック本のアーティストなどでした。こういった人たちは自身がゴジラや鉄腕アトム、その他日本のテレビ番組、マンガ、アニメの大ファンで、この素晴らしい作品をなんとかしてアメリカに導入しようとしたのです。脚本を英語に翻訳し、アメリカ的なテイストを加味して検閲を通るようにすることは、日本のポップカルチャーを輸入するために支払わなければならなかった代償でもあったのです。

――その「アメリカ化」がなされた日本の作品が欧州に渡り、クール・ジャパンの礎になったということなら、「アメリカ化」が行われなかったらクール・ジャパンはありえなかったのでしょうか?
アリスン 本書で論じているのはそういうことではありません。社会学者の岩渕功一氏が著書Recentering Globalizationで書いていることを引用していますが、この分野におけるアメリカのネットワーク、資金、インフラは世界一の規模で、広範囲にわたっているということなのです。たとえばポケモンは日米ハイブリッド作品になったときから、以前にも増して広くグローバル市場に流通し始めたと日本の関係者からも聞いています。ご質問は、ポケモンは日本人の、あるいは日本の文化的財産と考えるところからくるのだと思いますが、しかしそれ以前にポケモンは営利を目的とした商品で、その権利所有者やクリエイターたちは世界中に売りたいと考えているわけです。ポケモンを考案し、形作り、製品として市場に出していったのは彼らなのです。こういう議論は、マクドナルドはアメリカ文化である、と言うのと同じです。そして、まさに多くの人々がマクドナルドはアメリカ文化だと思っています。しかし、マクドナルドは、その主たるビジネスがハンバーガーを売って利益を得る、営利本位の事業なわけです。この本には、みなさんが気づいていないクール・ジャパン現象の一面について書きました。市場で流通する「貨幣」としてのポケモンは、もはやブランドなのです。ここまできたものが、本当に、純粋な意味で「日本のもの」と言えるでしょうか。


  アメリカの文化的覇権の終焉


――「日本語版刊行によせて」のあとがきにもありますが、「米国はもはや(グローバルな想像世界における)覇者ではなく、かつてのような絶対的優位は崩れていて、私にとってそれはいいことに思える」というお考えですね。なぜそれが「いいこと」なのでしょうか?
アリスン そのほうがこの地球の文化が多様化し、グローバル規模での多文化共存を楽しむことができるようになるからです。率直に言って、これまでアメリカはハードパワーとソフトパワーの両方の面で横暴すぎました。軍事的介入であれ、文化的覇権であれ、世界の人々はアメリカのそれを嫌悪しており、振り回されたくないと思っています。ですから、日本であろうと他のどの国であろうと、ソフトパワーを行使する国について、私は慎重にならざるを得ません。ソフトパワーは、ある部分、文化的所有物を自国の利益のための道具とみなしているからです。自国の文化製品をあるレベルまで広げようとするのは好ましい。しかし、たとえば他国の歴史や過去と真摯にかかわっていこうとする、文化的な交流関係や相互理解の努力をする動きをさしおいて、ソフトパワーが行使されるのは歓迎しかねます。正直、私は、日本のソフトパワーを伝播させる手段としてのクール・ジャパンキャンペーンには賛成できません。

――娯楽産業文化における覇者が消失した世界は、どのような世界でしょう?
アリスン それはもう、活気にあふれた、素晴らしい世界だと思いますよ!

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