ホーム > 書籍詳細:暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで―

戦争の世紀から情報の世紀へ――史上最強の暗号本、待望の完全翻訳版!

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで―

サイモン・シン/著、青木薫/訳

2,808円(税込)

本の仕様

発売日:2001/07/31

読み仮名 アンゴウカイドクロゼッタストーンカラリョウシアンゴウマデ
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 510ページ
ISBN 978-4-10-539302-1
C-CODE 0098
ジャンル 政治・社会、数学、事典・年鑑・本・ことば
定価 2,808円

超機密の中で行われてきた暗号研究――ネット社会の到来で、軍事・外交情報からプライヴァシーの保護まで、暗号は世界の最先端問題となった。暗号の未来を描き、歴史の裏面を彩った暗号作成者と解読者の壮絶なドラマを掘り起こす、暗号の進化史決定版。『フェルマーの最終定理』に続く世界的ベストセラー!

著者プロフィール

サイモン・シン Singh,Simon

1964年、イングランド、サマーセット州生まれ。祖父母はインドからの移民。ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得し、ジュネーブの研究センターに勤務後、英テレビ局BBCに転職。TVドキュメンタリー『フェルマーの最終定理』(1996)で国内外の賞を多数受賞し、1997年同名書を書き下ろす。『暗号解読』『宇宙創成』『代替医療解剖』など、科学分野で世界中から高い評価を得ている。ロンドン在住。

青木薫 アオキ・カオル

1956年生まれ。翻訳家。ポピュラーサイエンスの訳書多数。サイモン・シン『フェルマーの最終定理』『暗号解読』『ビッグバン宇宙論』『宇宙創成』『数学者たちの楽園:「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』、エドワード・フレンケル『数学の大統一に挑む』、レナード・ムロディナウ『ユークリッドの窓』、アミール・D・アクゼル『無限に魅入られた天才数学者たち』など。著書に『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』がある。2007年度日本数学会出版賞受賞。

書評

波 2001年8月号より 暗号の大衆化時代  サイモン・シン 『暗号解読――ロゼッタストーンから量子暗号まで』

大谷卓史

 インターネットは内緒話には向いていない。

 電子メールやICQなどのメッセージ交換ソフトは電話とも手紙とも違うコミュニケーション・ツールとして普及しつつある。自分自身が他人の目のない場所にいて、メッセージがインターネットという「見えない空間」を通過することから、電子メールやメッセージ交換ソフトではつい内緒話もしてしまいがちだ。

 しかし、インターネットを行き来するメッセージはネットワーク管理者や凄腕のハッカーやクラッカー(悪意あるハッカー)が覗き見しようと思えば、結構簡単に内容を知ることができる。電子メールは誰もが読める葉書のようなものだし、メッセージ交換ソフトも聞き耳を立てている誰かには筒抜けだ。オンラインショップでクレジットカード番号を入力することも、隣の客が聞き耳を立てているかもしれない喫茶店で番号を口にするくらい本当は危険なのである。

 以前、テレフォンカードの偽造マシンを製造して一儲けしたという男と話したことがある。この偽造マシンはテレフォンカードの磁気情報を別の磁気カードにコピーするもので、回路図まで見せてくれた。しかし、データを暗号化して格納するICカードが普及したらもうお手上げだ、と彼は言った。現実にはICカードの偽造もひそかに行われているようだが、暗号化データの解読はコストを考えると割に合わないと彼はその理由を説明した。

 多くのオンラインショップではSSLという暗号方式で通信が暗号化されるようになっており、通信途中でクレジットカード番号が盗まれることを防いでいる。だからこそ、ぼくらはひとまず安心してクレジットカード番号を入力できる。電子メールの覗き見を防ぐ暗号化ソフトもインターネットで簡単にダウンロードできるし、メッセージ交換ソフトでも暗号化が検討されている。

 暗号はインターネットの安全と信頼を守る一つの重要な手段で、かつては国家や大企業しか縁がなかった高度な暗号技術をぼくらは手に入れている。RSAセキュリティ社の暗号方式64ビット版RC―5はパソコンで利用できるが、この暗号方式はインターネットに接続された延べ30万台以上のパソコン(この計算能力はスーパーコンピューターに匹敵する)が力をあわせて解読しても97年1月28日から現在までまだ破られていない。

 一方で、パソコンの処理性能の向上や上記のようなインターネットに接続されたパソコン同士の協力によって暗号解読はより容易になっている。256の鍵から正解の鍵一つを探さねばならない56ビット版DESは前述のしくみで一日かけずに破られている。米国政府は七○年代に暗号方式標準DESを決め、現在はその強化版であるトリプルDESを使っているが、昨年10月、次世代の暗号方式AESとしてベルギーのRijndaelの採用を決定した。

 暗号は、インターネットの本人確認手段としても使われている。公開鍵暗号という暗号方式では、自分だけがもつ秘密鍵と自分と通信したい相手全員に知らせる公開鍵の二つの鍵を暗号化と復号に使う。この秘密鍵は本人しかもっていないことを利用して、本人確認(認証)をすることが考えられている。

 電子商取引や政府への電子申請に使うために公開鍵を印鑑登録のように第三者機関に登録することが検討されている。これはPKI(公開鍵基盤)と呼ばれ、暗号鍵の管理を誰がどのように行うか、国際的な制度の調整はどうするかなどが議論されている。しかし、この議論は現在、企業と政府、技術者が中心で、ぼくら市井の人間はそこに巻き込まれるだけでよいのか疑問は大きい。

『フェルマーの最終定理』で数学史のドラマを描いたサイモン・シンの新しい翻訳『暗号解読』は、ぼくらの生活に深く根を下ろし始めた暗号が、世界史にどのように関わってきたかをわかりやすく、そして「臨場感」ある形で描き出す。エリザベス朝英国では暗号が解読されたことでメアリ・スチュアートは処刑され、第二次世界大戦の帰趨も米国と英国の暗号解読者たちの成功で決まった。本書は暗号から読む世界史であり、シンの絶妙の導きで世界史を動かした暗号を自分の手で理解し・解読しながら追体験できる。ここから本書には知的な臨場感が生まれている。インターネットで使われる暗号がどのように生み出され、どんな問題を生みつつあるかもわかりやすく解説される。そして、量子力学を応用した未来の究極の暗号についての解説も興奮させるものだ。

 パソコンとインターネットの普及は暗号の大衆化時代をもたらした。暗号の世界史は、ぼくらの生きている、この暗号の大衆化時代を理解するための示唆も与えてくれそうだ。

(おおたに・たくし フリーランス・ライター)

▼サイモン・シン著/青木薫訳『暗号解読――ロゼッタストーンから量子暗号まで』は、七月三十一日発売

判型違い(文庫)

感想を送る

新刊お知らせメール

サイモン・シン
登録する
青木薫
登録する
数学
登録する

同じジャンルの本

書籍の分類