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20年代ジャズ・エイジの伝説的フラッパー、ゼルダ。その才能を証す初の全集!

ゼルダ・フィッツジェラルド全作品

ゼルダ・フィッツジェラルド/著、青山南/訳、篠目清美/訳

8,424円(税込)

本の仕様

発売日:2001/03/29

読み仮名 ゼルダフィッツジェラルドゼンサクヒン
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 542ページ
ISBN 978-4-10-540601-1
C-CODE 0097
ジャンル 評論・文学研究、全集・選書
定価 8,424円

シュルレアリスティックなイメージの連なり、奔放な文体、人を喰った笑い。いまなお色褪せない圧倒的魅力を放つ作品群を初集成。スコット・フィッツジェラルドの妻としてのみ語られてきたゼルダの、作家活動の全貌を明かす画期的全集。長篇『ワルツはわたしと』、短篇11、戯曲1、エッセイ12、夫への書簡を収録。

著者プロフィール

ゼルダ・フィッツジェラルド Fitzgerald,Zelda

1900年アラバマ州生まれ(~1948)。ハイスクールを卒業後、スコット・フィッツジェラルド(のちに「失われた世代」の代表的作家となる)と20年に結婚。才能の開花とともに夫は社交界の寵児となり、ゼルダ自身も南部の美女、自由奔放な才女として脚光を浴びる。一家はフランスに移住し、24年ゼルダはフランス人男性と恋に落ち、自殺未遂。以後、破滅的な生活を繰り返したのち、バレエのレッスンを再開、レッスン料稼ぎに短篇小説「娘シリーズ」を執筆する。30年スイスの病院で精神分裂症の診断を受ける。翌年帰国し、入退院を繰り返す。34年絵画の一時個展を開くが、再度入退院を繰り返す。40年夫が急死。48年入院先の火事で焼死、波乱の生涯を閉じる。

書評

波 2001年4月号より 「作家ゼルダ」の妖しい魅力  『ゼルダ・フィッツジェラルド全作品』

斎藤英治

 ゼルダといえば、スコット・フィッツジェラルドの美しい妻として、一九二○年代のフラッパーのシンボルとして、つとに知られる存在である。じじつ、時代に先んじたその鮮烈な生き方ゆえに、彼女は現代女性の一つの原型として、あるいは詩神として、数多くの作品に素材や霊感を提供してきた。ナンシー・ミルフォードの伝記『ゼルダ―愛と狂気の生涯』(新潮社)、ウィリアム・ルースの戯曲『ゼルダ・最後のフラッパー』(本の友社)、そして何よりも、夫スコットの作品の数々……。彼女はいわば二○世紀の美しくも悲しい伝説として、他人が夢や悩みを反映させる鏡でありつづけてきたのだ。

 だが、その伝説的な生き方ゆえに、ゼルダが書き手としても優れた女性であったことは、意外に忘れられがちだったのではないだろうか。ジャズ・エイジの社交界の花であり、自由奔放なフラッパーとして名をはせた彼女は、二七歳という年齢になってから突如バレリーナを目指し始める。そしてバレエの無理な練習がたたってか一九三○年に精神を病み、その後精神病院への入退院を繰り返すことになる。そのクリニックで、彼女は小説の執筆を始めたのだった。それらの作品は、たんにスコット・フィッツジェラルド研究のための資料的な価値があるだけでなく、それ自体が読まれるべき妖しい魅力を持っている。今回訳された『ゼルダ・フィッツジェラルド全作品』は、そんな彼女が残した長編小説、戯曲、十一編の短編小説、エッセイ、それに夫への手紙を集めた労作本であり、作家としてのゼルダの全貌を余すところなく伝えてくれるはじめての全集だ。

 ゼルダの作品のなかでも最も有名なのは長編『ワルツはわたしと』だろうが、この作品を読んで、夫のスコットは怒り狂ったと言われる。一つには、このどう見ても自伝的な作品に描かれた自分の姿が気に入らなかったからであり、もう一つには、彼が執筆中だった『夜はやさし』と題材の面で重なる部分があったからだとされる。しかし、彼が怒り狂ったのは、むしろ本来は詩神であるべき女性が、その分をわきまえずに小説、それもかなり優れた小説を書いてしまったことに起因するのではないかと思われる。端的に言えば、彼女の行為そのものが夫にとっては脅威に思えたのではないだろうか。

『ワルツはわたしと』は、南部育ちで、若くして成功した画家と結婚した女性の半生、特にパリでの生活を描いたものだ。一九二○年代の海外生活者の風俗が興味深い自伝的な小説だが、その中心になっているのは、ゼルダ自身が夢中になったバレエの過酷なレッスンである。それまでは、気ままな暮らしをしてきたヒロインのアラバマは、バレエ公演を見た後、まるで何かに取りつかれたように、あるいは中毒になったかのように、激しく禁欲的な練習に精を出す。中年にさしかかろうとしている女性が、若い娘たちに混じって、本気で練習に明け暮れる。この彼女の姿が、すごい。「自分をぼろぼろにすることはないじゃないか。芸術におけるアマとプロの差はとてつもなく大きいんだ。そんなこと、わかってると思ってたんだけどね」と夫に説得されても、やめようとはしない。それは、ありきたりなゼルダのイメージ――気まぐれで自由奔放なゼルダ――を見事に裏切るものであり、ゼルダが自分を驚くほど冷静に見ていたことを教えてくれる。傑作かどうかはわからないけれども、鬼気迫る作品である。そこには、「天才作家の妻」という呪縛から逃れようとする彼女の苦闘がダブって見える。

 ゼルダの会話には、ウィットがあり、とくに夫婦の会話、娘との会話は生き生きしている。警句、暗喩、直喩がつぎつぎにくりだされ、なかにはアンダーラインを引きたくなるようなものも多い。戯曲『スキャンダラブラ』やエッセイ「友人にして夫の最新作」には、醒めたユーモアがあり、彼女がドロシー・パーカーやアニタ・ルースのような才女でもあったことを教えてくれる。驚くのは、一九三四年に書かれたスコット宛ての数通の手紙だ。彼女が娘時代に書いた情熱的なラブレターは有名だけれども、この三十代に書かれた手紙はもっといい。当時、夫のスコットは、全力を傾けた長編『夜はやさし』が批評の面でも売れ行きの面でもパッとせず落ち込んでいた。その傷ついた夫への手紙は、いたわりと優しさと公正さにあふれていて、泣ける。

 ゼルダ・フィッツジェラルドの作品、とくに『ワルツはわたしと』と短編には、花や植物のイメージがふんだんにちりばめられ、それがときに深刻な作品のトーンを救っている。そこが、いかにも緑豊かな南部に生まれ育ったゼルダらしく、心がなごむ。

(さいとう・えいじ 翻訳家)

▼青山南・篠目清美訳『ゼルダ・フィッツジェラルド全作品』は、三月二十九日発売

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