▼Horie Toshiyuki 堀江敏幸
イーユン・リーが描き出す人物の境遇は、基本的にみな「ひとり」である。孤独を望んだのではなく、自分ではどうしようもない大きな外の力によってそうあるほかなかった人々――。筆致はつねに正確で、湿り気がない。ところが全十篇、どの作品においてもその硬質な文体が逆の効果を挙げている。それぞれの孤独からこぼれ落ちるばらばらな音が、ばらばらなまま鳴り響いて、しかもひとつの台詞を語っているような、しっとりした演劇的幕切れを引き寄せるのだ。圧縮されているのに凝り固まらない彼女の世界には、いつまでも冷えない感情の溶岩が、どこかに、少量だけ、確実に残されているのである。
▼Elizabeth McCracken エリザベス・マクラッケン[『ジャイアンツ・ハウス』の作家]
短篇がどれほどの「大きさ」を持ちうるか。この非凡な短篇集はまさにそのことに気づかせてくれる。フラナリー・オコナーを思い起こす人もいるだろうが、リーはまったく新しいタイプの作家だ。これほどの筆力を持ちながら、作家としてはまだ歩き出したばかりだという事実に、驚嘆してほしい。
▼Amy Bloom エイミー・ブルーム[『銀の水』の作家]
イーユン・リーは真の語り部だ。すばらしい物語が、人々の人生を、川岸に並べるようにして見せてくれる。恐怖や死、政変という止めようのない大きな流れをもった河を、出自や家族、食卓や愛のすべてがふちどっている。