▼Ishii Shinji いしいしんじ
我が身を振り捨てるように浜へ居残る痩せぎすの船乗りに、北極の冬が襲いかかる。男のなかにも極北の地、荒涼として方向のない、命の失われた光景が広がっている。ふたつの北極のせめぎ合い。春の訪れとともにそれらは溶けあい、男は北極のようななにかとなり、それは悲痛な姿であるが以前より広々とし風は通る。男が生きていくとしたら、そうならなくてはならなかったのだ。
▼Guardian ガーディアン
この、北極地方の風景、精神の浄化、畏怖や迷信についての無駄はないながらも豊かな記述は、雪に照りつける太陽のように激しい輝きを放っている。
▼Telegraph テレグラフ
ハーディングの文体は、主人公と同様たるみがなく緊張感にみちている。生きること、贖罪、信じることについて深い考察を巡らすこの小説は、ゴールディングの『ピンチャー・マーティン』にごく近い位置にある。
▼Independent インディペンデント
ハーディングは、善と悪ではなく、苦悩と哀悼を、そして、信じることを通じて得た意志のカがどれほど人を強くするかを考察してみせる。これは必ずしも神への信仰ではなく、内と外からの苦難に立ち向かう自らの精神力を、自然と共存する力を信じるということなのだ。なんであれ信じるということが時代遅れに思える昨今、ハーディングのこの寓話は、私たちがどこで道を踏み外してしまったのかをまざまざと思いださせてくれる。