▼Hiramatsu Yoko 平松洋子
硬さを残していた洋梨が、なにかを振り切ったかのように瑞々しい香気を放ち始める瞬間がある。冒頭の一篇、私はさっそく芳香の兆しを受け取った。アイオワ。テヘラン。ニューヨーク。ヒロシマ……緻密な想像力によって構築された物語世界にはベトナム生まれの若い作家の実験精神が横溢し、洋梨の香りとともに展開する位相空間さながら。最終篇、東南アジア沖に漕ぎだした一艘の難民ボートは「死者の海域」へ入ってゆく。波間で遭遇するあの匂いを、飛沫を、歌声を、そして痛みを、私は決して忘れることができないだろう。
▼TLS タイムズ文芸付録
綿密な想像力を細部にいたるまで働かせて、はるかな世界と人とをありありと実感させる。才能と言うしかない。
▼San Francisco Chronicle サンフランシスコ・クロニクル
聞き慣れない作家だろうか? これから先、どれほど耳にすることになるかが楽しみだ。これほど多様な7篇を一人の作家が書いたとは信じがたいが、共通点もある。どの主人公も、逆境のなか自分では気づかない強さを見せるのだ。
▼OregonLive.com オレゴンライヴ・コム
処女作が傑作で、しかも著者が二十代という例はめずらしい。だがそういう一冊なのである。まったく設定の異なる7つの短篇は、不安や喪失というひとつの線に貫かれ、全篇に緊張がみなぎっている。みごとな文体、時空を超える鮮明なビジョン。次作への期待が高まるばかりだ。