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有元利夫 絵を描く楽しさ

有元利夫/著 、有元容子/著 、山崎省三/著

1,650円(税込)

発売日:2006/09/22

  • 書籍

〈美の女神(ミューズ)〉を求めて、ひたすら描き続けた夭折の画家の作品と生涯を回顧。

舞台をおもわせる空間に一人の女性――花びらが舞い、不思議な雲がただよい、金色の光線が射している。よく見ると人物はフーッとうかんでいる。そんな画面が見る人をとらえて離さない。何故だろう? 生誕60年を機に、画家自身の言葉、「双子のように生きた」夫人の回想、創作のヒントとなった遺愛の品々で、ふりかえる。

目次

《手品師》1975 「これは手品だ!」と思え、タイトルもそこからつけたという作品。キャンバスを揉んで絵具を剥落させたマチエールが、フレスコの古い壁画を思わせる。
第一章……………
 有元利夫による有元利夫
ひとりの舞台
手品の嘘、演技の嘘、そして真実
浮遊すること
音楽が漂う画面をめざして
バロック音楽との出会い
「覆う」ということ
古典との出会い
風化――時間との共同作業
絵の描きはじめと描きおわり
光と影と量と線
消す男
思考のかけら
配達される才能について
絵の名前――タイトルについて
いい絵、いい物
見ることと作ること
様式について

第二章……………
 思い出すこと、憶えていること
 有元利夫・有元容子
ひとりの舞台
小学生のころ
中学・高校のころ
浪人時代
芸大のころ
芸大卒業後、そして今
シンデレラ・ボーイの孤独
道具あつめ
座辺のコレクション
ひとりでいるのは苦手
双子みたいな夫婦でした

空の青、諏訪湖の花火 
 山崎省三
有元利夫 年譜
[コラム]
 小さな絵のこと
 私の卒業制作

書誌情報

読み仮名 アリモトトシオエヲカクタノシサ
シリーズ名 とんぼの本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 152ページ
ISBN 978-4-10-602148-0
C-CODE 0370
ジャンル ノンフィクション、絵画、画家・写真家・建築家
定価 1,650円

担当編集者のひとこと

有元利夫 絵を描く楽しさ

 編集者にとって同世代の作家は大切なものです。まして同年生まれとなると、得がたい存在ということになります。
 有元利夫が「ロマネスクな異色新人」として、初個展出品作の一点とともに「芸術新潮」に紹介されたのは、本書の担当編集者が同誌編集部に配属される直前でした。以来、画家はそれまでに蓄積してきたものを噴き出させるかのごとく毎年、個展を開催し、美術界の頂点へとかけ上っていくかのようでした。「シンデレラ・ボーイ」とか「画壇のスター」などと、もてはやされもしました。しかし、画家本人も、またその画風も、そういった喧騒とは無縁のものでした。描き出される人物たちの寡黙さは、画家本人に重なりあうといってもいいかもしれません。しかし熱っぽさがなかったわけではありません。本書の編集も最終段階にさしかかった頃、有元利夫という創る人は、〈美の女神(ミューズ)〉をひたすら探し求めながら、時間=時とたたかっていたのだという思いに突然とらわれました。そして「時間」ということを軸に考えると、有元作品がとても身近になってくる気がします。 多くの人が、ある転機が訪れつつあると感じた早すぎる晩年の大作《出現》は、禅林寺の《山越阿弥陀図》を想起させます。ミューズへの憧れの彼方、阿弥陀さまが迎えに来てしまった……本書の奥付は、画家が生きていれば還暦をむかえたはずの日付になっています。その作品と生涯をふりかえる一書にしたいとの願いからです。



《ささやかな時間》1980 小川美術館蔵
リコーダーを演奏するのは画家の楽しみでもあった。




《出現》1984 小川美術館蔵
神々しい人物の出現を描いた、生前最後の大作には画風がかわる兆しがみられた。

2016/04/27

著者プロフィール

有元利夫

アリモト・トシオ

1946年岡山県生まれ。4年の浪人生活をへて、1969年東京芸大美術学部デザイン科に入学。後に夫人となる日本画科の渡辺容子と知り合う。在学中の1972年に結婚。1973年卒業とともにデザイナーとして電通入社。1978年「花降る日」で第21回安井賞特別賞、1981年「室内楽」で第24回安井賞を受賞。1985年肝臓がんで死去。

有元容子

アリモト・ヨウコ

愛媛県生れ。1971年、東京芸術大学美術学部絵画科日本画卒。1972年、有元利夫と結婚。1977~1980年、「創画展」出品。1988~1989年、唐津隆太窯にて陶芸を学ぶ。1998年、河北倫明賞受賞。個展、グループ展多数。有元利夫との共著に『花降る日』(新潮社、2002)がある。現在、実践女子大学教授。

山崎省三

ヤマザキ・ショウゾウ

1928年、東京生れ。1948年、旧制水戸高等学校(理甲)卒、同年新潮社に入社。1950年、「芸術新潮」創刊とともに同編集部勤務(後に編集長)。主著に『道祖神は招く』(新潮社、1995)、『随筆集 石』(刊行社、2004)、『回想の芸術家たち「芸術新潮」と歩んだ四十年から』(冬花社、2005)、とんぼの本シリーズに『道祖神散歩』(共著、1996)がある。2006年、没。

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