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「深い穴の底でじっとしていたい」では高峰さん、なぜ旅を愛したの?

高峰秀子 旅の流儀

斎藤明美/編

1,728円(税込)

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発売日:2013/03/29

読み仮名 タカミネヒデコタビノリュウギ
シリーズ名 とんぼの本
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 126ページ
ISBN 978-4-10-602241-8
C-CODE 0395
ジャンル 演劇・舞台、映画
定価 1,728円

初めての土地ではまずマーケットへ。そしてその土地の人と同じものを食べてみる――観光嫌いで人間観察好き。準備万端だけど荷物は必要最低限。道中、人に迷惑をかけない、甘えない。高峰さん流の旅のスタイルと、こよなく愛した場所を教えます。60年前、本当の「わたし」を求めて独り暮したパリのアパルトマンも初公開!

著者プロフィール

斎藤明美 サイトウ・アケミ

1956年、高知県生まれ。津田塾大学卒業。高校教師、テレビ構成作家を経て、「週刊文春」の記者を二十年務める。1999年、初の小説「青々と」で第十回日本海文学大賞奨励賞受賞。2009年、松山善三・高峰秀子夫妻の養女となる。著書に『高峰秀子の捨てられない荷物』『最後の日本人』『家の履歴書(全3巻)』『高峰秀子の流儀』『高峰秀子との仕事1・2』など。

書評

波 2013年4月号より うつわと人の30年。

井出幸亮

「大器晩成」「器が大きい」……「うつわ」が人格や人間性の隠喩として持ち出される理由はよく知らないけれど、塗師の赤木明登とその妻・智子の二人が自宅の食器棚に並ぶ多くのうつわの中から30年間分、一年にひとつずつのうつわを選び、その思い出を語り合った『能登ごはん便り うちの食器棚』を読んでいると、「うつわと人間」がやっぱり分かちがたく結びついているのだ、という不思議な確信に満たされてしまう。まさにいつもの食卓で夫婦二人がリラックスして語り合うようなうつわについてのコメントは、それらのつくり手のほぼすべてと面識を持つ者ならではのあたたかな批評眼が感じられるもの。「かわいらしい人」「こわい兄貴」「深い人」「おしゃれ」「負けずぎらい」「なまいきでおもしろい」……そんな言葉とともにうつわの写真を眺めていると、それらがほとんど人間の貌のように見えてくるのだから面白い、いや恐ろしい。また、この30のリストは赤木家の個人史であると同時に、陶芸をとりまく世界がどのように変化してきたのかという工芸史も透けて見える。土を素材にした彫刻的な作品や、超絶技法を駆使した見せるため、飾るためのうつわが全盛だった1980年代半ばから30年。赤木が作るぬりものに代表される、シンプルで美しい「使うために手作りされた」うつわは、今や多くの人々から支持されるようになった。「うつわは人」であるならば、この間に起きた変化は何を意味するのか。
『高峰秀子 旅の流儀』は昭和の時代、夫とともに自分の暮らしを大切にして生きた一人の女優の旅のスタイルが披露される。大の旅行好きだが名所観光にはまるで無関心、宿は「寝心地のよいベッドと、清潔なシーツとタオル、洗面所にお湯が出て、エアコンディションが完全ならば、他のものはいっさい必要ない」と言い切る高峰の旅の原点は、若手女優として人気絶頂だった27歳の頃の、半年間のパリ滞在に遡る。世間から持て囃され、虚像を求められる生活を逃れて、たったひとりで過ごした日々。その経験を回想したエッセイの中で、高峰は「日本での私は、(中略)私が私でいられることは皆無だった」と書いている。「私でいる」とは自分らしさ、すなわち「身の丈」ということだろう。派手を好まず、虚飾を嫌い、生活のすべてにおいて徹底して「自分の丈」にこだわった高峰の生き方に今、注目が集まっている。そこにも、この数十年の間に起きたこの国の社会と人の「変化」の本質が潜んでいる気がしてならない。

(いで・こうすけ 編集者)

目次

名随筆からたどる 「旅の流儀」
旅のおもかげ 斎藤明美

パリ 孤独を見つめた街へ
生涯ただ一度の“旅” 斎藤明美
ピエール・ニコル7番地、独り暮しの「わたし」の部屋
素顔の「わたし」になれた場所
高峰さんが愛したパリ・マップ
ホノルル 二人三脚かたつむり紀行
ハワイの攻防 斎藤明美
高峰流ホノルルの歩き方
高峰さんが愛したホノルル・マップ
ある日のハワイ 高峰秀子の旅日記より
幻のエッセイ
1 パリ篇
2 中国篇
3 旅のあれこれ篇

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担当編集者のひとこと

高峰秀子 旅の流儀

とんぼの本で『高峰秀子 暮しの流儀』(2012年1月刊)、『高峰秀子 夫婦の流儀』(2012年11月刊)とつくってまいりました。いよいよ今回2013年3月刊の『高峰秀子 旅の流儀』で、高峰秀子さんの生き方を豊富なヴィジュアルとともに展開するシリーズ三部作が完結いたします。

10万部のベストセラーとなった単行本『高峰秀子の流儀』をはじめ、大女優高峰さんのふだんの暮らしぶりや率直な素顔を伝えてくれる斎藤明美さんの著作、それから名エッセイストである高峰さん自身の著作『巴里ひとりある記』や『まいまいつぶろ』『私のインタヴュー』などとあわせて、読んでいただければ幸いです。どこまでも潔く、今で言う「ぶれない」稀有なひとの姿勢には、魅了されずにはいられません。

『高峰秀子 旅の流儀』の一番の見どころは、松山善三さんと斎藤明美さんがパリへの取材を敢行、高峰さんが60年前に日本を飛び出し、独りで半年間を暮らしたアパルトマンを初公開できたことです。カルチェラタンの一角にある地上七階建て(じつは高峰さんは五階建てと記述されていますが、ちょっとした勘違いをされたのかと思われます)、築110年のビルの最上階の一室が、高峰さんの「城」でした。日本びいきで美術好き、日本人留学生を受け入れてきたテヴナン夫人とそのお母さんが、“下宿人”高峰さんを「プーペ」(お人形さん)と呼んで可愛がり、つかず離れず見守ってくれた様子は、高峰さんの処女作『巴里ひとりある記』に詳しいところです。女優「高峰秀子」ではない本当の「私」を見つけようと、あえて孤独の中に自らをさらした高峰さん。その足跡を追っての一週間は、瞬く間に過ぎました。

アパルトマンの現在の所有者で取材に全面的に協力してくださったポミエ氏は、お父さんがテヴナン夫人といとこという関係。穏やかでユーモラス、日本美術や映画への知識と教養の深い方で、松山監督の来訪をとても喜んでくださいました。私たちが訪れた日も、高峰さんが「人間、ひとりぼっちじゃ生きられねえんだな」と思いながら眺めていたのと同じく、ベランダの向こうにエッフェル塔が遠く浮かんでいました。これには斎藤さんもちょっと感激していた様子です。(詳しくは、本書をどうぞ。)

取材中、ご高齢の松山先生はけっして不満も小言もおっしゃらないで、終始笑顔で私たちを支えてくださいました。松山監督が来てくださったからこそ、素敵な取材ができたのだと信じています。心より感謝申し上げます。(うーん、やはりあの高峰さんが愛した男。その表情も姿もカッコイイ。それを近くで拝見できただけでもわたくし的には「成功」でした。)

ところで。この半年間のさみしかったパリの思い出をいつか楽しかった思い出に変えるんだ、と心に誓った高峰さんは、その七年後に、最愛の夫とパリを再訪、思いを実現させました。その旅の詳細な記録を綴った手帖が最近発見され、『旅日記 ヨーロッパ二人三脚』として小社より今回同時刊行いたします。こちらもぜひ、お手に取ってみてください。ああ、『旅の流儀』に登場するホテルはこうして見つけたのか、とか、『夫婦の流儀』に載ってるレオナルド・フジタの絵はこうして描かれたものなのね、とか、『暮しの流儀』のあの骨董品はこのとき買ったものなのね、とか、合点が行くことがいっぱい発見できます。二倍どころか十倍、二十倍楽しめること請け合い! よろしくお願いいたします。

2016/04/27

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