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ネクストブレイクはROSETSUだ!
江戸のスーパー技巧絵師のすべて。

かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪

岡田秀之/著

1,728円(税込)

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発売日:2017/07/31

読み仮名 カワイイコワイオモシロイナガサワロセツ
シリーズ名 とんぼの本
装幀 長沢芦雪《水呑虎図》部分 天明6年(1786)以前 個人蔵/カバー表、菅野健児(新潮社写真部)/撮影、櫻井久/ブックデザイン、中川あゆみ/ブックデザイン、作田祥子(櫻井事務所)/ブックデザイン、nakaban/シンボルマーク
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 127ページ
ISBN 978-4-10-602276-0
C-CODE 0371
ジャンル 芸術一般
定価 1,728円

愛らしい仔犬から不気味な山姥まで超絶技巧の写実力に、酔いにまかせた早描きも! 新出作品もたっぷりと、「奇想派」の一人として注目を集める絵師のびっくり絵画と波瀾の人生を新進の研究者がご案内します。日本美術史の泰斗、辻惟雄氏×河野元昭氏の「芦雪放談」も必読。画布に現された千変万化の「奇想」を目撃せよ!

著者プロフィール

岡田秀之 オカダ・ヒデユキ

1975年、大阪府生れ。嵯峨嵐山日本美術研究所学芸課長。関西学院大学大学院文学研究科前期課程修了後、MIHO MUSEUM学芸員を経て現職。専門は江戸絵画。MIHO MUSEUMでは2009年「若沖ワンダーランド」展、2011年「長沢芦雪 奇は新なり」展、2015年「若沖と蕪村」展などを担当。著書に『別冊太陽 与謝蕪村』『別冊太陽 若沖百図』『別冊太陽 長沢芦雪』(ともに平凡社、共著)、『若沖ワンダフルワールド』(新潮社、共著)など。

書評

品性と奇想のある画家

井浦新

 もともと旅が好きで、友人たちと国内各地を巡っているうちに、お寺や神社で目にする美術品に惹かれるようになって、気づいたら日本美術ファンになっていました。なかでも「奇想派」と呼ばれる18世紀の画家たち―― 伊藤若冲、曾我蕭白、長沢芦雪には特にハマって、展覧会や作品のある各地方に度々足を運びました。芦雪については、司会をやっているNHKの「日曜美術館」で南紀に旅の足跡を辿ったり、プライベートでも有名な《虎図・龍図襖》のある串本の無量寺を何度も訪ねました。
 芦雪の作品は、お酒を飲みながらパパッと描いたものがあるかと思えば、一方でものすごい緻密な写実描写があったり、3センチ四方の画面に五百人の羅漢を描いたかと思えば、画面からはみ出さんばかりの牛を真正面から描いたり……超絶技巧や構図の妙で人をワッと驚かせるようなところがあるのですが、それが決して「奇」に走り過ぎず、押しつけがましくない。観る人がスッと絵の中に入ってゆけるような、何か絶妙な柔らかさや品性があると思います。僕はそんな部分にも強く惹かれますね。
 それは、この本の「はじめに」にも書いてありましたが、やはり円山応挙という偉大な師匠からの影響が大きいのではないでしょうか。名著『奇想の系譜』を書いた辻惟雄先生が、本書の河野元昭先生との対談のなかで、蕭白や若冲が「天然の奇想」であるのに対して、芦雪のことを「人工の奇想」の画家であると仰っている。つまり蕭白や若冲は初めから一匹狼で孤軍奮闘、自分の個性はこれだ! と、内面から沸き起こるものをそのまま画布にぶつけていたけれど、芦雪は円山派という京都画壇の中心地にいて、偉大な師やライバルたちとの距離感を測りながら、アイデンティティを探って試行錯誤していた時期があると思います。だから、自分を冷静に見つめる目が養われ、職人としての技術とアーティストとしての奇抜な発想を絶妙なバランスで組み合わせることができるようになった。その辺りが芦雪作品の持つ品性なんかとも関係があるのだと思います。
 いつか、18世紀の絵師オールスターの映画を撮りたいという夢があるのですが、役者として挑戦したいのは蕭白の役。でも地に足を着けて芝居ができそうなのは芦雪なんです。蕭白の作品や数々の逸話から伝わる破天荒ぶりには憧れるし、演じ甲斐はありそうですが、僕自身の地ではいけない(笑)。その点芦雪は、たとえば、組織で異端とされて、独立、自身のプロダクションをつくった方とか、現代でもこういう人って身近にいそうだな、と共感しながら演じることができるかもと勝手に思っています。
 それにしても45年という短い人生でこれだけの作品を遺しているのだから、若冲みたいに長生きしたら、また別のステージにいって、新しい芦雪像を作っていたかもしれません。この本は短いながらも膨大な数の作品を描いた芦雪の代表作を、作品の傾向や人生のステージごとにギュッと凝縮して見せてくれています。冒頭のグラフの仔犬たちなんて本当にかわいいし、雀や鼠といった小動物への眼差しもあたたかい。さらに晩年のグロテスクな奇岩や山姥の絵も魅力的です。南紀へ行く前の《唐子遊図》や《水呑虎図》とか、本邦初公開の作品も結構ありましたが、やはりどれもユーモアと観る人へのサービス精神があってとても楽しい。
 芦雪作品の中で一番好きなのは、この本にも掲載されている《蘇鉄に雀図》という作品です。ササーッと横に太く引いた薄墨でソテツの木が描かれているのですが、素朴な筆致が、南紀滞在中の芦雪のリズムを表しているようで心地よい。でもぐっと近寄って見ると、ものすごい技術が見え隠れして、ゾクッとする部分もある。俺、特別な事は何にもやっていないよって感じに見せておいて、このテクニック。いかにも芦雪らしい作品だなあと思います。       (談)

(いうら・あらた 俳優)
波 2017年8月号より

目次

はじめに 芦雪の「奇想」とは? 文・岡田秀之
グラフ
芦雪ワールド 千変万化
文・作品解説 岡田秀之
かわいいものを描く
小さきものを描く
幼きものを描く
さまざまな顔を描く
妖しきものを描く
大きいものを小さく描く
切りとって描く
対比させて描く
酔って描く
一筆で描く
指で描く
その場で描く
しつこく描く
対談
辻惟雄 × 河野元昭
司会・作品解説 岡田秀之
「人工の奇想」の画家・芦雪の魅力を語り尽くす
生涯
芦雪ものがたり
文・作品解説 岡田秀之
年譜
芦雪の生涯
I 1754-1786
謎につつまれた出自から、当代一の絵師・応挙先生に入門まで
応挙入門前/応挙先生のもとで/応挙先生のワザを完全マスター/応挙から自由に
II 1786-1790
南紀でのびのび襖絵を描きまくり、芦雪らしさ爆発
無量寺/草堂寺/成就寺/円光寺/持宝寺/徳泉寺/高山寺/南紀前/南紀後
III 1790-1799
ますます「奇」の度合いは増して、晩年のスタイル極まれり
応挙門下の大競作/広島にて/大画面/禅の境地/故事の世界/動物たち/幽玄の世界
紀行
文・編集部
奇岩と禅寺 芦雪の南紀
芦雪の南紀 巡礼地図
Column ● Rosetsu's Story
文・作品解説 岡田秀之
01| 交遊録
02| 署名と印章
03| 早描きの描き間違い
04| 遺された5通の手紙
05| 芦雪の弟子たちと曾雪の手紙
06| 芦雪の最期 毒殺説への疑問

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